解雇399 ウイスキー持ち出し行為を理由とする懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、ウイスキー持ち出し行為を理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

坂口事件(東京地裁令和4年12月7日・労判ジャーナル135号62頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結し、Y社において酒類等の配送業務に従事していたXが、Xによる倉庫からの商品(ウイスキー)持出行為が窃盗に当たるとしてY社が行った解雇は違法・無効であるとして、Y社の従業員である地位を有することの確認を求め、違法・無効である解雇により就労を拒否されたとして、民法536条2項に基づき、未払賃金等の支払を求め、違法・無効である解雇によりXの名誉を毀損したことは不法行為を構成するとして、損害賠償金300万円等の支払をもとめた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇有効

【判例のポイント】

1 仮にX主張のC発言があったとしても、CはY社の代表取締役ではなく、またY社の商品を処分する権限があったとは認められないこと、X主張のC発言の内容(「お金に困るなら給料が出るまで店の酒を2~3本なら持ち出し現金にしてもよい」)及びX自身が、Cから他の者に分からないように持っていってくれと言われた旨供述していることからすると、XにY社の商品を処分する権限を与える趣旨とまでは解されないから、本件持出行為は、Y社の所有物である在庫商品を権限なく持ち出すものであり、窃盗罪(刑法235条)を構成して就業規則所定の懲戒事由があるというべきである。

2 Xは、本件持出行為はC発言を踏まえて行われたものである旨主張するが、そもそもC発言があったこと自体、疑わしいといわざるを得ず、また、Xには、本件持出行為は刑事罰(故意犯)に該当する行為である上に、反復継続して行われており、本件持出行為が発覚していなければ、今後も継続して行われていた可能性があること、Xは、本件持出行為により持ち出した本件ウイスキーについて、一部を自ら費消した旨の虚偽の説明を行っていたこと、Y社の配送業務においては、配送先から鍵を預かり、配送先が不在の時間帯に納品している店舗が多数あることからすると、Xが面談では本件持出行為を認めていること及び本件持出行為による被害額が1万8700円と多額とはいえず、これによる被害弁償が完了していることを考慮しても、本件において、Y社が懲戒解雇を選択したことは相当である。

上記判例のポイント1のような事情があったときに会社としてどのように反論をすればよいかについて1つのヒントになると思います。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。