Daily Archives: 2026年10月16日

解雇446 合意退職の成否及び退職日指定の違法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、合意退職の成否及び退職日指定の違法性に関する裁判例を見ていきましょう。

M・コレクション事件(東京地裁令和7年5月22日・労判1345号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社から解雇されたと主張して、〈1〉労基法20条が定める解雇予告手当及びこれに対する遅延損害金の支払、並びに、〈2〉労基法114条が定める上記解雇予告手当相当額の付加金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める、という事案である。なお、Y社は、XはY社を任意退職したものであると主張して上記請求を争っている。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、20万2521円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、付加金20万2521円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 労働者が退職日を定めて退職の申入れをした場合であっても、当該退職日までの期間は労働契約が存続し、労働者は同契約に基づく地位を有することに変わりはない。したがって、上記の場合において使用者が労働者の申し出た退職日より前の日を退職日と定め、これに従って労働者が退職したときは、労働者は、使用者からの一方的な意思表示によって、自己が申し出た退職日までの期間における労働契約上の地位を喪失したことになる。
そうすると、このような使用者による退職日の指定については、労働者が使用者の定めた退職日をもって退職することに同意した場合を除き、使用者による一方的な労働契約の解約として実質的な解雇に当たり、労基法の定める解雇に関する規定が適用されると解するのが相当である。
これに対し、Y社は、Y社の就業規則31条3号において、従業員が自己の都合により退職を願い出て承認された場合にその日を退職日として従業員としての身分を失う旨の規定があることを根拠に、従業員が自己都合で退職を願い出た場合でも、従業員が一方的に退職日を指定することはできず、会社が承認した日が退職日となると主張する。
しかしながら、上記規定は、従業員の自己都合退職それ自体について会社の承認を要する旨を定めたものにとどまり、会社が従業員の申し出た退職日を変更することまで認める趣旨を含むとは必ずしも解されない。なお、仮に上記規定がこのような趣旨を含むと解することができたとしても、会社による退職日の指定が実質的な解雇に当たることは上記説示のとおりであって、上記規定の存在によって解雇としての実質が失われるとは解されない。

2 これを本件についてみると、XがY社に対し5月15日付けでの退職を申し出たのに対し、Y社においてXの退職日を4月10日と定め、これに従ってXが4月10日限りで退職したことが認められる。したがって、XがY社の定めた4月10日をもって退職することに同意したと認められない限り、Y社による上記退職日の指定は実質的な解雇に当たり、Y社は労基法20条所定の解雇予告手当の支払義務を免れないこととなる。

まあ、そうでしょうね、という判断です。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。