Author Archives: 栗田 勇

競業避止義務17(関東工業事件)

おはようございます

さて、今日は、退職後の秘密保持義務、競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

関東工業事件(東京地裁平成24年3月13日・労経速2144号23頁)

【事案の概要】

X社は、主に廃プラスチックのリサイクルを業とする会社であり、仕入先から廃プラスチック等を仕入れ、これを工場で粉砕するなどした上で、海外に輸出するのを業としていた。

Bらは、X社との間で雇用契約を締結し、営業職として勤務していた。

Y社は、平成22年3月設立された会社であり、X社と同じく廃プラスチックのリサイクルを業としている。Y社の代表取締役はBである。

X社は、Bらに対し、秘密保持義務違反、競業避止義務違反等を理由として、不法行為ないし債務不履行に基づく損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

請求棄却
→秘密保持義務違反、競業避止義務違反にはあたらない。

【判例のポイント】

1 使用者は、労働者に対し、就業規則ないし個別合意等により業務上の秘密の不正利用を禁ずることができるが、このような条項には多かれ少なかれ労働者の自由な行動を制約する側面があり、しかも本来、雇用契約上の拘束を受けないはずである退職後の行動を制約することからすれば、何をもって秘密事項というかについては、本来、就業規則ないし個別合意等により明確に定められることが望ましいというべきであるし、かつ、労働者の行為(とりわけ退職後の行為)を不当に制約することのないよう、その秘密事項の内容も、過度に広汎にわたらない合理的なものであることが求められるというべきである

2 本件において、何をもって業務上の秘密とするかについて、就業規則上も本件通知上も具体的に定めた規定は見当たらないところ、不正競争防止法上の「営業秘密」については、いわゆる(1)当該情報が秘密として管理されていること(秘密管理性)、(2)事業活動に有用な技術的又は営業上の情報であること(有用性)及び(3)公然と知られていないこと(非公知性)という3つの要件が必要であるとされている(同法2条6項)。就業規則や個別合意による企業秘密の不正利用の防止が、不正競争防止法とは関係なく、あるいは、同法による規制に上乗せしてなされるものであることにかんがみると、これらにより保護されるべき秘密情報については、必ずしも不正競争防止法上の「営業秘密」と同義に解する必要はないというべきである。しかし、他方で、当該規制により、労働者の行動を萎縮させるなどその正当な行為まで不当に制約することのないようにするには、その秘密情報の内容が客観的に明確にされている必要があり、この点で、当該情報が、当該企業において明確な形で秘密として管理されていることが最低限必要というべきであるし、また、「秘密」の本来的な語義からしても、未だ公然と知られていない情報であることは不可欠な要素であると考えられる。このような点からすれば、就業規則ないし個別合意により漏洩等が禁じられる秘密事項についても、少なくとも、上記秘密管理性及び非公知性の要件は必要であると解するのが相当である

3 これを本件についてみるに、X社が業務上の秘密として主張する廃プラスチックの仕入先に関する情報については、「秘」の印が押されたりして管理されるわけでもなく、当該情報にアクセスすることができる者が限定されているわけでもなく、従業員であれば誰でも閲覧できる状態にあったことは、当事者間に争いがない。したがって、X社において、これらの情報が秘密として管理されていなかったことは明白である。また、本件訴訟におけるX社の主張をみても、当初訴状の段階では単に「顧客情報」と主張していたのに対し、その後「客先ごとの取引の種類、仕入量、価格といった営業上の重要な情報」(第1準備書面)、「具体的な値決めについてのノウハウ、取引先の存在、取引先がどのような品を欲しがるか、取引の可能となる価格」(第2準備書面)とその内容は必ずしも一定せず、このような主張内容が変転すること自体、X社においても、これらの情報の範囲を客観的に明らかな形で定義できていないことを示すものであって、これらが秘密として管理されていないことを示すということができる。
このように、X社主張にかかる情報は、秘密管理性の要件を充たさないものであるから、これが就業規則及び本件機密保持契約で保護されるべき秘密情報に当たると解する余地はないというべきである。

4 X社は、Bらが、X社を退職した後直ちにY社を設立ないし入社しているもので、就業規則59条2項に反する旨主張する。
このような就業規則や労使間の個別合意により、雇用契約関係終了後の労働者の職業選択の自由を制約できるかについては疑義もあるところであるが、労働者は、使用者の有する営業機密を使用してその業務を遂行したり、業務遂行の過程で営業機密を知ることもあるから、そのような場合には一定の範囲、期間内において退職後の労働者の競業を禁止することが正当化される場合もあり得る。しかし、他方で、労働者の立場からすれば、本来、退職後の職業選択に関し制約を受けるべき理由がないにもかかわらず、
使用者の利益確保のためにこれを制約されることを意味するものであるから、上記のような就業規則の競業避止条項や合意による競業避止特約が有効と認められるためには、使用者が確保しようとする利益に照らして、競業禁止の内容が必要最小限度に止まっており、かつ、十分な代償措置が施されることが必要であると解される。そして、そのような条件を満たさない場合には、上記条項ないし制約は、労働者の権利を一方的かつ不当に制約するもので公序良俗に反するとして、民法90条により無効となると解される

5 本件においては、Bらは、X社での業務遂行過程において、業務上の秘密を使用する立場にあったわけではないから、そもそも競業を禁ずべき前提条件を欠くものであるし、X社は、Bらに対し、何らの代償措置も講じていないのであるから、上記競業避止条項ないし特約は、民法90条により無効と認めざるを得ない。
したがって、Bらの競業避止義務違反をいうX社の主張については理由がない。

非常に参考になる裁判例ですね。

この分野は、原告側の会社は結構ハードルが高いので、注意が必要です。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介111 仕事のアマ 仕事のプロ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 男子サッカー、残念でしたね 3位決定戦、がんばってほしいですね。
写真 12-08-06 11 40 32
←先日、鷹匠の「水塩土菜」にお昼ごはんを食べに行きました。

いい値段をとります。

今日は、午前中は、事務所で打合せです。

午後は、東京で会議です

今日も一日がんばります!!

blogram投票ボタン にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ←ぽち。

さて、今日は本の紹介です。
仕事のアマ 仕事のプロ──頭ひとつ抜け出す人の思考法(祥伝社新書227)
仕事のアマ 仕事のプロ──頭ひとつ抜け出す人の思考法(祥伝社新書227)

「仕事のアマ」と「仕事のプロ」を対比させて、どのように考えるのがプロなのかということが書かれています。

著者によれば、一般的な会社の社員構成は、

5%の社員:仕事のプロ。会社を背負っている社員。

40%の社員:仕事のアマ。「5%社員」の予備軍。

55%の社員:その他の社員。ぶら下がり社員。

過半数が「ぶら下がり社員」なんですか・・・?

そういうもんですかね・・・。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実際は、いま売れている商品がある時こそ、次世代を担う新商品の開発をしたり、いまとは違った販売戦略を検討したりするなど、成長を続けていくための努力を熱心に行なうべきなのですが、それを怠ってしまう。どうしても目の前の成功に経営陣も社員も浮かれてしまいがちです。
・・・ですから経営者は、会社がうまくいっている時ほど、注意しなくてはならないわけです。社内に危機感が失われている黄色信号を見逃してはいけません。それが顕著に現れるのが、社員の時間に対する意識です。始業時間、会議の集合時間、レポートの提出期限、こういったものがルーズになってくると危ない。すぐにでも社内の引き締め、意識のテコ入れを始めるタイミングです。
」(192頁)

うまくいっているときほど注意しなければいけないという感覚は、独立して自分で事務所を構えるようになってから、よくわかるようになりました。

うまくいっているときは、その状態を変えたくないという思いに駆られるのですが、その時点から、すべてが守りに入ってしまうのです。

成功しようと失敗しようと、すべてを吸収して、向上し続けることが、生きている意義だと考えています。

成功も失敗もなく、チャレンジし続けることが大切なんだと思います。

解雇77(日本航空運航乗務員解雇事件)

おはようございます。

さて、今日は、会社更生手続中の航空会社の運航乗務員に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本航空運航乗務員解雇事件(東京地裁平成24年3月29日・労経速2144号3頁)

【事案の概要】

Y社は、その子会社、関連会社とともに、航空運送事業及びこれに関連する事業を営む企業グループを形成し、国際旅客事業、国内旅客事業等の航空運送事業を展開する会社である。

Y社は、平成22年1月、会社更生手続開始の申立をした。

管財人は、更生手続開始決定後終結前に、Y社の就業規則所定の解雇事由(「企業整備等のため、やむをえず人員を整理するとき」)に該当するとして、Y社の運航乗務員である機長、副操縦士を整理解雇した。

【裁判所の判断】

整理解雇は有効

【判例のポイント】

1 会社更生法上、労働契約は双方未履行双務契約として、管財人が解除又は履行を選択し得る(同法61条1項)が、管財人は、労働契約上の使用者としての地位を承継している以上、管財人の上記解除権は、解雇と性格づけられるところ、権利濫用法理(労働契約法16条)は、管財人が行った本件解雇についても当然に適用され、本件解雇は使用者の経営上ないし経済上の理由によって行われた解雇なのであるから、上記の解雇権濫用法理の適用に当たっては、人員削減の必要性の有無及び程度、解雇回避努力の有無及び程度、解雇対象者の選定の合理性の有無及び程度、解雇手続の相当性等の当該整理解雇が信義則上許されない事情の有無及び程度という形で類型化された4つの要素を総合考慮して、解雇権濫用の有無を判断するのが相当であり、このことは当該更生手続が、いわゆる事前調整型(プレパッケージ型)の企業再建スキームとして利用されたものであるか否かにより結論を異にする根拠はないのであり、本件更生手続が機構の支援と会社更生手続を併用して事業廃止を回避した事前調整型企業再建スキームであることは結論を左右するものではない

2 Xは、平成22年12月時点で、Y社は更生計画を大きく上回る営業利益を計上している等から本件解雇は回避することは経営上十分可能であったと主張するが、本件解雇は更生計画の遂行(会社更生法209条1項)として行ったものであり、更生計画を上回る収益が発生したとしても、このような収益の発生を理由として、更生計画の内容となる人員削減の一部を行わないことはできない

3 Y社は、本件解雇に先立ち、平成20年10月に賃金の5%減額を行い、平成22年4月~同年12月の間に基準内賃金及び代表的な手当の各5%減額等を行い、これによりJALIの運航乗務員の平成22年度の賃金水準は平成17年度の75%の水準まで低下したこと、平成22年3月~8月の間、2度にわたり特別早期退職を募集して約374名の運航乗務員が応募したこと、同年9月~同年12月9日の間に、4度にわたり希望退職を募集して、稼働ベースで279名の運航乗務員が応募したこと、同月10日~同月27日の間に、希望退職を募集して、稼働ベースで12名の運航乗務員が募集したことから、Y社は本件解雇に先立ち、一定の解雇回避努力を行ったことが認められる

4 Y社は、平成22年9月29日~同年12月24日の間、運航乗務員を組合員とする日本航空乗員組合及び日本航空機長組合との間で、それぞれ13回の団体交渉・説明を行ったこと、本件解雇の対象者に対しても、所定退職金の他に、平均約350万円の特別退職金と所定解雇予告手当の趣旨も含む賃金5か月分の一時金を支給して、その不利益を緩和する措置を採ったことを併せ考慮すると、本件解雇の過程において、整理解雇が信義則上許されないとする事情は認められない

先日、紹介した日本航空(整理解雇)事件と同じ結論です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介110 武器としての交渉思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます また一週間が始まりました。今週も一週間がんばっていきましょう!

今日で、34歳になりました さらにパワーアップしていきたいと思います。
写真 12-07-30 19 20 07
←先日、久しぶりに、「昭和ホルモン」に行きました

ここに行くと必ず唐揚げではなく「ガラ揚げ」を注文してしまいます。

てんこ盛りで出てきますが、あまり食べるところはありません(笑)

今日は、午前中、島田の裁判所で交通事故の民事調停が入っています

午後は、静岡で離婚調停です。

今日も一日がんばります!!

blogram投票ボタン にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ←ぽち。

さて、今日は本の紹介です。
武器としての交渉思考 (星海社新書)
武器としての交渉思考 (星海社新書)

以前、紹介をした「武器としての決断思考」の著者の本です。

「武器として」シリーズ第2弾ですね。

交渉において頭に入れておくべき考え方がまとまっており、参考になります。

日頃、私たち弁護士が、交渉時に、意識的、無意識的に行っていることが体系化されており、興味深かったです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『初めにロマンありき』 『ソロバンなくしてロマンの実現なし』
これは、大きな仕事を成し遂げたいと思うならば、常に念頭に置いておくべき事柄です。世の中には『良いことを言っているのにあまり世の中に影響を与えていない』『理念は立派だけれど、やっていることは大したことがない』という会社組織やNPOがたくさんあります。そういうダメ会社やダメNPOのほとんどは、このロマンとソロバンが両立していません。・・・世の中を大きく変えたいと思うならば、きちんとソロバンの計算をしながら、大きなロマンをずっと持ち続ける、その両方が必要となるわけです。
」(71~73頁)

若いうちは、「ロマン」ばかりが先行してしまいがちですよね。

だけど、「ソロバン」の計算をしておかなければ、長続きはしません。

「ロマン」を持つことは、実はそれほど難しいことではありません。

「ロマン」で飯を食うことが難しいのです。

ここを考えることこそが、「ロマン」を実現する大きな鍵になるのです。

配転・出向・転籍15(静岡県立病院機構事件)

おはようございます。

さて、今日は、病院の新生児科科長に対する配転命令に関する裁判例を見てみましょう。

静岡県立病院機構事件(静岡地裁平成24年1月13日・労経速2136号11頁)

【事案の概要】

Y社は、一般医療機関では診断・治療の困難な小児患者を静岡県内全域より紹介予約制で受け入れる高度専門病院である。

Xは、平成4年からY社新生児科において勤務し、その後、新生児科科長として、NICUを初めとする新生児科のベッドをコントロールしてきた。

静岡県知事は、平成21年3月、Xに対し、静岡県立総合病院臨床医療部女性・小児センター新生児科主任医長への配転を内示し、Y社は、これを受け、Xに対し、同職への配転命令を発した。

Xは、本件配転命令以後、めまい等の症状で自宅静養し、反応性うつ状態と診断された。

Xは、その後、総合病院において勤務しないまま、Y社を退職する届けを提出した。

【裁判所の判断】

配転命令は有効

【判例のポイント】

1 使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されないことはいうまでもないところ、当該転勤命令につき業務上の必要が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該配転命令は権利の濫用になるものではないというべきである。

2 ・・・これらの点に照らすと、Xは、こども病院が地域の病院で対応できない患者をその紹介により扱う高度専門病院でありながら、地域の病院と信頼関係を築くことができず、また、患者の受入数において、順天堂病院や聖隷浜松病院と比較して十分でない面があり、Xのベッドコントロールが適切で高度専門病院としての機能を十分に果たしていたか疑問があるとともに、こども病院内においても他科や新生児科の看護師らと十分な意思疎通を図れていないことがうかがえるのであるから、Xを新生児科科長から配転する業務上の必要性があったものと認めるのが相当である。そして、Xの配転先である総合病院における分娩数は年間400件ないし500件を超えるもので、産科医師も4人ないし6人というのであるから、Xが主任医長としてその能力を発揮できる職場であり、本件配転命令が他の不当な動機・目的でされたとは認めがたい。また、本件配転命令によりXは転居が必要となるものではないし、本件配転命令の前後でXの労働条件に特段の差異はないのであるから、本件配転命令が労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものということはできない。
したがって、本件配転命令が権利の濫用であり、違法であるということはできない。そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件配転命令に係る損害賠償請求は理由がない

3 なお、Xは、Dが本件配転命令について事前に全く説明しておらず、適正な手段を経ていないと主張するが、本件は配転命令について個別にXの同意を得なければならないものでないことは前記のとおりであるし、Dは本件配転命令前に新生児科科長としてのXの問題点について度々注意を与えていたのであるから、Xの上記主張は採用することができない。

地元静岡の裁判例です。

裁判所は、Xが本件配転により被る不利益は、通常甘受すべき程度を著しく超えるものではないと評価しています。

また、これまでの経緯から、不当な動機目的も認められないとしています。

どのような点を考慮して、配転命令の有効性を判断しているか、を研究すると、何が重要なのかがだんだんわかってきます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。

本の紹介109 入社10年目の羅針盤(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
写真 12-07-29 18 47 22
←先週の日曜日、センチュリーホテルで、「社団法人日本クラブメンター協会」のキックオフミーティングが開催されました。

パワー溢れるメンバーが集まっており、これからが楽しみです。

みんなで盛り上げていきたいと思います。

今日は、午前中は、沼津の裁判所で裁判です

午後は、静岡の裁判所で裁判、家事審判、弁護士会で法律相談が入っています。

夜は、不動産管理会社で相続のセミナーを行います

テーマは、「不動産会社の営業マンが知っておくべき不動産をめぐる相続の法務(基礎編)」です。

相続全般ではなく、不動産にフォーカスした相続に関する法律問題について、双方向で勉強していきます。

今日も一日がんばります!!

blogram投票ボタン にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ←ぽち。

さて、今日は本の紹介です。
入社10年目の羅針盤
入社10年目の羅針盤

ライフネット生命保険副社長の岩瀬さんの本です。

入社10年目というと、だいたい30代前半ですよね。

その年代の方を対象として書かれているようです。

非常に良い本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

なぜ、ハーバードではベンチャーがよしとされるのでしょうか。
アップルコンピュータの創業者としてカリスマ的な支持を得ていたスティーブ・ジョブズ。彼がこんな言葉を残しています。
“Why join the navy if you can be a pirate?”
これはまさに、『ベンチャーやろうぜ』というメッセージそのものなのだと思います。
一生懸命勉強をして、いい大学を出た人たちが目指す就職先は、大企業や国家公務員などといったところです。しかしジョブズからすれば、それはもったいないというのです。そういった就職先というのは、安定はしていますが組織の中にはレールが敷かれ、そこでやれることはだいたい決まっています。つまりそれは、軍隊にいるのと変わらないということ。大海原を航海するのには、海軍なんかよりも海賊のほうが楽しい。ジョブズはそう言いたかったのではないでしょうか。
」(205~206頁)

ジョブズのこの言葉、おしゃれですね。

僕には、この言葉、

「安定を求めるなんて、ダサいぜ。ベンチャーで、暴れようぜ。世の中変えようぜ!」

みたいな感じに読めます。

今までにない切り口で新しいビジネスを立ち上げることこそが、生きている証という感じです。

常に新しい壁を超えるためにもがきながらチャレンジしていくことこそが、「仕事をする」という意味だと思っています。

それこそが、自己実現なんだと思います。

解雇76(クレディ・スイス証券(休職命令)事件)

おはようございます。

さて、今日は、休職命令・休職延長命令の有効性と解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

クレディ・スイス証券(休職命令)事件(東京地裁平成24年1月23日・労判1047号74頁)

【事案の概要】

Y社は、総合的に証券・投資銀行業務を展開している会社である。

Xは、大学卒業後、複数の証券会社勤務を経て、平成16年、Y社に入社した。

Y社は、平成21年当時、通常の営業活動に基づく経営資源の投入コストを前提とした場合、コア・アカウント(重要顧客)のY社に対する評価が5位以内であれば、損益分岐ラインを十分に超える売上手数料を稼ぐことができ、収益を維持することができるものと考えていたため、Y社は、全コア・アカウントのY社に対する評価を5位以内にすることを、株式営業部の営業担当の必達の目標として設定し、全営業担当者に対し周知した。

同年5月、株式本部長Aは、平成21年度第1四半期のXが担当する4つのコア・アカウントのうちの2つのランキングが6位であったことから、Xに対して、役職に求められる成果が発揮できない場合に、改善すべき点を示した警告書を交付し、人事部を交えてそのパフォーマンスの改善を定期的に進捗確認し、必要に応じて指導を行うための業務改善命令を発令することとし、これを伝えるためにXと面談のうえ、人事部のBヴァイスプレジデントを通じて、Xに対して警告文を手渡した。

また、A本部長は、Xに対し、業務改善プロセス下で改善に至らず同じ結果に至のであれば、退職して別の道を進むという選択肢もあるのではないかと告げ、同席していたBヴァイスプレジデントが、Xに対し、一般的な退職手続について説明した。

これに納得しなかったXは、Y社内に入るためのアクセスカードを返却したうえで帰宅した。

Xは、弁護士を通じて、Y社に対し、復職を求めた後、交渉がなされたが、合意に至らず、Y社はXに対し、平成22年6月、解雇する旨を通知した。

解雇理由は、Y社の就業規則所定の「従業員の労働能力が著しく低下し、又は勤務成績が不良で改善の見込みなく就業に適さないと会社が認めたとき」に準ずるやむを得ない事由であった。

【裁判所の判断】

休職命令・休職延長命令は無効

解雇は無効

Y社に対して慰謝料100万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 本件休職命令が、その期間、原則として無給扱いとなり、勤続年数に通算されないという不利益が労働者側にあることに照らすと、Y社の就業規則の規定は、Y社に対し、無制限の自由裁量による休職命令権を付与したものと解することはできず、合理性が認められないような場合には、当該命令は無効である

2 本件業務改善プロセス期間における一連のY社の対応がパワーハラスメントに当たるとのXの見解が一方的で事実無根であると評価することはできず、Xの同見解に基づく留保付きの職場復帰命令に従う旨の意思表示は、職場復帰命令が、就業規則の合理的な規定に基づく命令である限りという留保であって、パワーハラスメントに関する見解の相違問題とは切り離して、職場復帰問題を解決しようとするX側の姿勢をみて取ることができるので、このようなX側の態度をもって、実質的な職場復帰命令の拒否に該当するものと評価することはできないことから、本件休職命令・本件休職延長命令は無効である

3 Xは、本件警告書の交付時点で平成21年代2四半期の評価期間が50日程度残っていた他の顧客については、評価が上昇し、5位必達の目標を達成することができていることに照らすと、4社のうち1社の同四半期におけるY社に対する評価が低いことをもって本件解雇の理由とすることは、改善可能性に関する将来的予測を的確に考慮した解雇理由であるということができず、合理性を欠く

4 賞与請求権は、使用者が労働者に対する賞与額を決定して初めて具体的な権利として発生するものと解するのが相当であり、本件の賞与に関する定めは、極めて一般的抽象的な規定にとどまるものであるといわざるを得ず、個別具体的な算定方法、支給額、支給条件が明確に定められ、これらが労働契約の内容(Y社の債務)になっているものとは認められず、また、前記の賞与の定め方や、これまでのXに対する支給額の変動の激しさに照らすと、X主張のような賞与に対する期待が法的に保護されたものと認めることはできない。

5 Xのメールアドレスを抹消したことや、Xが長期休職するとの通知を顧客にしたこと、Xを解雇したとの告知を他の従業員にしたことについては、特に、Xが、本件業務改善プロセスに基づき2回目の面談から程なくして代理人を選任し、Y社と復職交渉をするに至っていることに照らすと、もう少し穏便な対応策やアナウンスの仕方があったと思われるのであり、その限りにおいて、違法性を有することから、Xは、上記認定の限りにおいて、精神的苦痛を被ったとして、慰謝料として100万円が相当である。 

休職命令の合理性の判断は、とても難しいです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介108 ラクして成果が上がる理系的仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書)
ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書)

少し前の本ですが、とてもいい本です。

京大大学院の火山学の教授が書いた本です。

火山とは全く関係のない「仕事術」の本ですが、薄っぺらい仕事術とは一線を画す内容となっています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世の中の仕事の8割は、すでに存在する良質な内容を組みなおして、新しいレポートを作成することで通用する。たいていの新知見は、先人の蓄積の上に成り立っている。」(168頁)

最初からオリジナルな仕事をめざすのは危険でさえある。むしろコピーペーストに徹して、クリエイティブな作業を倦むことなく積み重ねることに集中したほうがよいのだ。部分部分で自分なりの新しいまとめを提示できるようになれば、それで十分である。・・・クリエイティブな仕事とは、極端なことをいえば、引用文献の多さに比例するといってもよいかもしれない。」(173~174頁)

これは、常に頭の中に入れておくべきことです。

仕事をする上でも、同じことが言えるのではないでしょうか。

私も、事務所のスタッフに対して、同じようなことをよく言います。

まず、「何を模倣するか」という点です。

模倣の対象が適切かどうかという観点です。

これがおかしいと、どれだけ忠実に模倣しても、結果としては、よくわからないことになってしまいます。

次に、「どのように模倣するか」という点です。

模倣の正確さの問題です。

中途半端に模倣すると、結果も中途半端になってしまいます。

「クリエイティブな仕事とは、極端なことをいえば、引用文献の多さに比例する」という切り口は、おもしろいですね。

確かに組み合わせの数が多ければ多いほど、クリエイティブに見えますよね。

質の問題を量の問題として捉えるという発想の転換ができるかどうかが鍵だと思います。

不当労働行為45(東急バス事件)

おはようございます。

さて、今日は、増務割当差別に対する不当労働行為の成否と救済方法に関する裁判例を見てみましょう。

東急バス事件(東京地裁平成24年1月27日・労判1047号27頁)

【事案の概要】

X組合およびその組合員13名は、Y社が残業扱いとなる乗務(増務)の割当てに当たって、平成17年3月以降の期間につき、他の従業員との間で差別があり、労組法7条所定の不利益取扱いおよび支配介入に当たるとして、労働委員会に対し救済命令の申立てを行った。

これを受けて、都労委は、Y社に対し救済命令を発した。

Y社は、これを不服として、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

中労委は、一部内容を変更した上で、救済命令を発した。

Y社は、本件中労委命令取消しを求めた提訴した。

【裁判所の判断】

増務割当差別は不当労働行為にあたる

【判例のポイント】

1 本件中労委命令は、組合員らに対する差別的取扱いの禁止を命じた本件初審命令を維持したが、初審命令後も同様の差別的取扱いが継続していること等にかんがみれば、改めて差別的取扱いの禁止を命じる高度の必要性が認められるから、かかる救済方法を定めること自体に裁量の逸脱・濫用があると認めることはできない。

2 Y社は、本件中労委命令における差別取扱いの禁止命令は、極めて抽象的かつ不明確な命令であり、救済命令としての特定を欠くものであって、このような救済命令を発することは違法であると主張する。
しかし、先になされた不当労働行為が単なる一回性のものでなく、将来再び繰り返されるおそれが多分にあると認められる場合においては、不当労働行為制度の目的に照らし、その予想される将来の不当労働行為が、過去の不当労働行為と同種若しくは類似のものである限り、労働委員会はあらかじめこれを禁止する不作為命令を発することを妨げないと解するのが相当である(最高裁昭和37年10月9日判決、最高裁昭和47年12月26日判決)。本件においては、Y社が同種の不当労働行為を継続しており、今後も同じ増務割当差別が繰り返されるおそれが多分にあると認められるから、かかる不作為命令を発することは何ら妨げられないというべきである。

3 その不作為命令の特定性の程度については、それが罰則で強制されるものである以上、ある程度具体的に示されるべきであるが、これをあまり厳格に要求することは、将来の不当労働行為の予防という観点に照らし合目的的とはいえないことから、この点については、労働委員会に相当の裁量があるものというべきである。本件においては、X組合員らを他の乗務員と増務割当てに関して差別して取り扱ってはならないことは、通常人においても理解可能な内容であるといえるし、Y社において、勤務交番表その他の増務割当時における取扱いの合理性を確保し、各組合の増務時間数の相当程度の均衡が保たれているかを適宜確認して必要な調整を行えば、同主文の履行は可能であることからすれば、本件差別禁止条項における不作為命令の特定の程度は相当であり、この点で、本件中労委命令が、労働委員会に与えられた裁量を逸脱・濫用していると認めることはできない。

4 不当労働行為審査手続は、処分権主義を採用する民事訴訟手続とは異なり、職権再審査制度もおかれていること(労働委員会規則52条)、さらに不当労働行為審査手続の審査の対象は、不当労働行為の存否であって、申立ての趣旨は、その救済方法の指定という意味を有することも考えると、再審査申立人の再審査申立ての趣旨に完全に拘束されるという意味での、厳格な処分権主義が採用されたと解することは相当でない

不当労働行為に関する一般論について参考になる点がたくさんあります。

内容としては、本件増事割当差別が不当労働行為にあたることは明らかです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介107 「交渉上手」は生き上手(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今日で1週間も終わりですね。
写真 12-07-22 18 38 16
←先日、「焼肉食堂(卸)静岡食肉センター」に行ってきました。

活気があって、雰囲気のいいお店でした。 ホルモンが充実しているお店です。

今日は、午前中は、裁判が1件入っています。

午後は、浜松で裁判です その後、浜松で夜まで会議です。

明日は、ペガサートで特定社労士の先生方を対象としたセミナーです

お題は、「弁護士の視点+社労士の視点で考える労務トラブル実践的対処法」です。

ケーススタディで、実践的な対処法をみなさんと一緒に探っていきたいと思います。

今日も一日がんばります!!

blogram投票ボタン にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ←ぽち。

さて、今日は本の紹介です。
「交渉上手」は生き上手 (講談社プラスアルファ新書)
「交渉上手」は生き上手 (講談社プラスアルファ新書)

弁護士の久保利先生の本です。

いわゆる交渉術についての本ではありません。

タイトルのとおり、「交渉とは人生そのもの」ということを前提に、テクニックにとどまらない内容となっています。

2年程前に出版された本ですが、もう一度読んでみました。とてもいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・美空ひばりの名曲『柔』の一節、《勝つと思うな 思えば負けよ》が頭をよぎる。勝とう勝とうとするから、負ける。勝つことばかりに固執するからだ。逆に、本当にほしいと思ったら、ほしい素振りをするなということ。そういう意味で言うと、どうでもいいやと捨ててかかっている人が、いちばん強いということである。『金も名誉も生命さえもいらぬ』という人に勝つ方法を私は知らない。誰も知らないだろう。」(59頁)

勝つことばかりに固執すると、勝てなくなるという感覚はよくわかります。

何かに固執すると、柔軟性が失われてしまいます。

固執するというのは、言い方を変えると、「こだわる」というような感じでしょうかね。

「こだわる」「こだわりがある」というのは、一般的には、良い意味で使います。

しかし、あまりにも何かにこだわると、それは、「こだわり」ではなく、「かたくな」になってしまうように思うのは僕だけでしょうか。

「かたくな」は、漢字で「頑な」と書きます。

「頑固」の「頑」という字を使います。

この言葉、柔軟であることの対極にあるものではないでしょうか。

特定の主義や思想等に固執すると、頑固なまでに考え方を変えることができなくなってしまいます。

そうすると、もう思考の身動きみたいなものがとれなくなってしまう。

生きていくうえで、過度なこだわりは捨てたほうがいいんじゃないかな、と思っています。