Daily Archives: 2011年2月17日

配転・出向・転籍2(大阪府板金工業組合事件)

おはようございます。

今日は、降格と配転に関する裁判例について見てみましょう。

大阪府板金工業組合事件(大阪地裁平成22年5月21日・労判1015号48頁)

【事案の概要】

Y社の主たる事業は、情報収集・交換による経営方針の確立のための活動、職業能力開発促進法に基づく大阪府板金高等職業訓練校の運営等の指導教育情報事業、建設雇用改善事業の実施、全国板金業国民健康保険組合の運営等の福利厚生事業、資材の共同購入による経費節減等の共同購買事業、共同受注事業である。

Xは、Y社の正社員である。

Xは、Y社に対し、(1)違法に賞与、賃金を減額されたとして、賞与請求権ないし賃金請求権に基づく支給額との差額の支払、(2)Xが、Y社の事務局長代理の地位から経理就任に降格されたことが無効であることを理由とする事務局長代理の地位確認及び降格された地位に係る手当との差額の支払い、(3)Xに対する配転命令が違法であることを理由とする地位確認、(4)Y社のXに対する不利益取扱いが女性従業員に対する差別的取扱いであることを理由とする不法行為に基づく損害賠償をそれぞれ求めた。

【裁判所の判断】

賞与請求は棄却

本件降格は無効

配転命令は有効

女性従業員に対する差別的取扱いとは認められない。

【判例のポイント】

1 賃金規程に「賞与は、組合の業績および業界の動向、職員の業務遂行能力、勤務成績等を考慮し、原則として毎年7月と12月に措定の金額を支払うものとする」、「経済状況等によりやむを得ない場合、賞与を支給しない場合がある」との規定があり、これらに沿った賞与の算定が行われていた場合に、入社時に賞与の算定方法についての説明・合意があったというXの主張を退けて、個別具体的な賞与の算定方法、支給額、支給条件が労働契約の内容になっているとは認められないと判断した

2 事務局長代理から経理主任への降格を行う人事権は、労働契約上、使用者の権限として当然に予定されているものであり、その権限行使については使用者に広範な裁量権がありこのような人事権行使に裁量権の逸脱または濫用があるか否かを判断するに当たっては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度、能力、適性の欠如等の労働者側の帰責性の有無およびその程度等諸般の事情を総合考慮するのが相当である

3 Xが事務局長代理としての能力を備えており、その適性を欠いていたとは認めがたいこと、Xが休暇を取得することによって事務局長代理としての職責を十分に果たすことができなかったとも認めがたく、本件降格後、Y社では事務局長代理の地位に就いた者はいないことにかんがみると、本件降格は人事権を濫用したものであるというのが相当である

4 経理部から資材部への異動を命じる配転命令および資材部から経理部への異動を命じる配転命令は、業務上の必要性がないのに行われた場合、それが他の不当な動機ないし目的をもって行われた場合、または、Xに対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合など特段の事情がある場合には、権利の濫用として許されない。

5 資材部所属の職員が病気入院したことを契機としてY社事務局の担当職務を変更する必要性が生じたことから、職務の必要性はあり、配転命令がXを退職に追い込もうと嫌がらせ目的で行われたとまでは認められないことから、不当な目的はなく、配転命令は濫用に当たらない

6 Y社のXに対する不利益取扱いが既婚女性従業員への差別であるとの主張について、本件配転命令には業務上の必要性があったと認められ、他方、不当な動機目的があったとは認められないこと、Y社事務局には、Xの他にも女性従業員が在籍しているが、特にこれらの者から同様の苦情等が出ているとはうかがわれないことなどからすると、Y社のXに対する不利益取扱いが既婚女性従業員への差別であるとまでは認められない。

やはり、配転は、使用者の裁量が相当広いですね。

そうそう簡単には無効とはなりません。

上記判例のポイント2の判断基準を参考にして準備をするべきです。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。