Daily Archives: 2011年2月24日

派遣労働1(テー・ピー・エスサービス事件)

おはようございます。

さて、今日は、人材派遣会社の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

テー・ピー・エスサービス事件(名古屋地裁平成20年7月16日・労判965号85頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータ-運営の業務代行請負及びデータ作成の代行と請負、労働者派遣事業等を業とする会社である。

Xは、Y社に雇用され、A社の工場で勤務していた。

Y社は、Xに適する業務が確保できず、その見通しも暗いとの理由で、自宅休業とし、その後は雇用契約を終了せざるを得ないとして、Xを解雇した。

Xは、Y社に対し、本件解雇は違法であるとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

Y社に対し、約217万円の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 Xが相当長期間にわたり本件業務に従事することは、その当初から予定されていたこと、Xの仕事ぶりは真面目で、これにつき苦情があったり、Xに対し注意や指導がされたことはなかったこと、Xが本件業務に引き続き従事することは、Y社の希望する契約形態であれば可能であったこと、しかるに、Y社は、XがY社の希望する契約形態によることを拒否し、愛知労働局に行政指導を申し入れた直後に、何ら交渉を持たないままXに対し本件業務の打ち切りを通告したこと、また、同労働局から本件指導を受けた直後、同労働局に対し、Xを常用雇用者として翌日以降も雇用を継続することで是正した旨報告しながら、Xに対しては、待機期間中の賃金は6割支給とするとし、また、解雇予告手当を支払うので退職するように促したこと、Xに適する業務が確保できないとして、自宅休業とした後は雇用契約を終了させる旨通告したこと、以上の事実が認められる。

2 このような事実からすると、Y社は、Xが本件組合とともに、偽装請負を解消し、適法な労働者派遣を行うよう要求し、愛知労働局にその旨の行政指導を求めたことを嫌悪して、Xに対し、本件業務から排除するだけでなく、Y社からも排除するべく解雇という不利益な処分を行ったものと推認することができる。

3 本件解雇は、違法な目的に基づいて(労働基準法104条2項及び労働組合法7条1号にも違反する。)、故意に、本来解雇する理由のないXに解雇という不利益を与えたものであるから、Xに対する不法行為となる。

4 本件業務は、実態は労働者派遣であるにもかかわらず、労働者派遣法の規制を免れようとするいわゆる偽装請負である点でも、また、Xに対する指揮命令をする者とXを雇用するY社との間に多数の業者が介在する違法な多重派遣の形態である点でも違法であること、本件解雇は、このような違法状態を改善するため、法律上の権利として保護された労働組合活動や監督機関への申告を行った者を企業から排除するという強度の反社会的な行為であること、X自身が本件解雇につき法的決着をつけた上で働きたいという個人的な意向を有していたことによる面があるもの、Xは、本件解雇後、平成20年4月当時まで抵触に就いていないこと、その他、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、本件解雇によりXが被った精神的苦痛を慰謝するには200万円が相当である。

5 常用型の派遣労働者の場合、使用者は、派遣先の業務が打ち切られても雇用を継続する義務があり、特に、本件のY社は、本件業務の受注形態が違法なものであることを知りながら、Xをこれに従事させたのであるから、その違法な状態を正さなければならなくなった場合を想定してXの雇用確保の措置を講じておくべきである。そして、本件業務は突然打ち切られたわけではなく、4か月余も前からその違法性を指摘され、是正を求められていたのであるから、雇用確保の措置を講じる余裕は充分にあったというべきである。したがって、Y社が本件業務にかかる契約を継続できなかった結果としてXを休業させざるを得なかったとはいえず、Y社の受領拒絶により労務提供ができなかったに過ぎない。
よって、その余の点を判断するまでもなく、Xの賃金請求は理由がある。

上記判例のポイント4は注意が必要です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。