Daily Archives: 2014年6月4日

同一労働同一賃金1(N社事件)

おはようございます。

さて、今日は、パートタイム労働法8条違反が不法行為を構成するとされた裁判例を見てみましょう。

N社事件(大分地裁平成25年12月10日・労経速2202号3頁)

【事案の概要】

本件は、使用者であるY社との間で期間の定めのある労働契約を反復して更新していた労働者であるXが、Y社が契約期間満了前の更新の申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、Y社は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされたと主張して(労働契約法19条)、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、更新拒絶期間中の月額賃金、更新拒絶期間中の賞与、更新拒絶による慰謝料を請求するとともに、Y社がXに対して短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)8条1項に違反する差別的取扱いをしていると主張して、同項に基づき、正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、Y社の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、同項に違反する差別的取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求している事案である。なお、Xは、正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求の理由として、準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束がY社との間で成立したことも主張しており、また、パートタイム労働法8条1項の要件を充足する場合には、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した労働契約法20条も充足すると主張する。

【裁判所の判断】

1 更新拒絶は無効→賃金支払

2 慰謝料として50万円を支払え

【判例のポイント】

1 ・・・Y社が更新拒絶の理由として挙げる「本件訴訟において様々な点において事実と異なる主張をしていること」、「裁判と無関係の第三者であるY社の従業員を多数裁判に巻き込んでいること」は、いずれも事実として認めることができない。Y社におけるXの職務は、石油製品という危険物の輸送であるが、職務の遂行についてXに過誤があったことは認められず、本件訴訟におけるX及びY社の主張立証の内容、訴訟活動の態様に照らして、X・Y社間で本件訴訟が係属していることにより、Y社におけるXその他の従業員による職務遂行の安全が害されるとは認められない。
また、Xが交通事故のニュースを見て、Y社大分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得ないような発言をしたとの点についても、Xの話は、安全性に対する認識の欠如を示すもの又はY社との信頼関係を破壊するものであったとは認められず、更新拒絶を裏付ける客観的に合理的な理由の存在を裏付けるものであるとは認められない。
したがって、Y社がXによる有期労働契約の更新の申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。

2 ・・・以上によれば、正社員と準社員であるXの間で、賞与額が大幅に異なる点、週休日の日数が異なる点、退職金の支給の有無が異なる点は、通常の労働者と同視すべき短時間労働者について、短時間労働者であることを理由として賃金の決定その他の処遇について差別的取扱いをしたものとして、パートタイム労働法8条1項に違反するものと認められる。

3 Xは、パートタイム労働法8条1項に基づいて、XがY社の正規労働者と同一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を請求する。
しかし、上記の確認の対象である権利義務の内容は明らかではない上、パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり、同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解されるから、上記の地位確認の請求はいずれも理由がないものと解される。

4 パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ、Xは、Y社に対し、その損害賠償を請求することができる。

本裁判例では、パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは、ただちに不法行為を構成すると判断しているように読めますが、同法は、公法的性格を有するものであり、同法違反がただちに不法行為を構成するかは解釈の余地があります。

フランチャイズ契約について独禁法が適用される場合等でも同じことが言えますね。

また、パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いがあったとしても、それだけで、正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認までは認められないとの判断は参考になります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。