Daily Archives: 2014年6月30日

不当労働行為89(ニチアス羽鳥工場事件)

おはようございます。 今週も一週間、がんばっていきましょう!!

さて、今日は、元従業員のアスベストによる健康被害に対する補償制度等を議題とする団交と誠実交渉義務に関する命令を見ていきましょう。

ニチアス羽鳥工場事件(神奈川県労委平成26年1月8日・労判1086号95頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、Y社の羽鳥工場において就労中にアスベストにばく露したAおよびBの加入を受け、Y社に対し、アスベスト健康被害に対する補償制度等を議題とする団交を申し入れたところ、Y社が、団交には応じるものの、交渉の対象をA及びBの各個人の問題に限るとの対応に終始したことは、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとして救済申立てをした事案である。

【労働委員会の判断】

Y社の不誠実交渉は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 一般に会社には、組合の申し入れた義務的団交事項を議題とする団体交渉に誠実に応じる義務があり、組合の要求に対する回答や事故の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどして、組合の理解や納得を得られるよう誠意をもって団体交渉に当たることが求められる

2 これを本件についてみると、Y社は、本件団体交渉の申入れ直後から、A及びB個人の問題に関する限度で団体交渉に応じるとの基本的な姿勢を示し、本件団体交渉を通じてその姿勢を変えていない。しかし、かかる姿勢は、義務的団交事項をA及びBに係る権利主張としての補償要求に限定する会社の考え方を前提にしているが、本件要求事項の大部分が義務的団交事項に当たる以上、本件要求事項について説明や資料の提示をしないというY社の対応は、正当な理由がない限り、不誠実であるというべきである

3 ・・・時の経過とともにアスベスト疾病の悪化した元従業員が存在することをY社はホームページで認めており、このようなアスベスト健康被害の実態を十分に把握していたことからすれば、Y社は両名の症状が悪化した場合の対応について組合の理解や納得を得るよう十分な説明を尽くさなければならないというべきである。

4 以上のとおり、Y社は組合の理解や納得を得るために誠意をもって本件団体交渉に当たったものとは認められないから、その対応は不誠実な団体交渉に当たる。

義務的団交事項にもかかわらず、合理的な理由なく団交に応じないとこのような結論になります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。