賃金85(シー・エー・ピー事件)

おはようございます。

今日は、元従業員らによる未払賃金請求と反訴損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

シー・エー・ピー事件(東京地裁平成26年1月31日・労判1100号92頁)

【事案の概要】

第1事件
本件は、XらがY社に対し、労働契約に基づき、平成23年分から24年6月分の未払賃金およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。

第2事件
Y社が、X1が、偽造書類を用いて、Y社に対する賃金請求権を請求債権としてY社の売掛金債権に対する仮差押決定を詐取したとして、不法行為に基づき、損害350万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

第1事件につき、Xらの請求を一部認容(合計約150万円)

第2事件につき、Y社の請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、Xらと賃金減額の合意をした旨の主張をし、これに沿う証拠もある。
しかしながら、賃金の減額という重大な内容の合意が成立していたのであれば、その旨を書面化するなどして明らかにしておくことが当然であるというべきであるが、そのような書面は一切存在しないし、そのような書面を作成しなかった理由について、Y社代表者は何ら合理的な説明をしないのであるから、Y社とXらの間で賃金の減額につき何らかの合意があったとは認められない
また、そもそも前記主張及び証拠によっても、Xらの各賃金のどの部分をどの程度減額するという合意であったのかについて具体的に説明したとは認められない。そして、仮に、Aにおいて抽象的にXらの賃金の減額をする旨を説明し、Xらがこれに承諾したとしても、これにより法的に拘束力のある合意が成立したとはいえない。
よって、Y社とXらの間に賃金減額の合意があったとは認められず、この点に関するY社の主張は理由がない。

2 仮差押命令申立てが相手方に対する違法な行為といえるのは、当該申立手続において債権者が主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、債権者が、そのことを知りながら、又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて申立てをしたなど、申立てが仮差押制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。
これを本件について見るに、本件仮差押命令に係る請求債権は、本件訴えにおいてX1の請求に係る債権のうち元本部分と同一のものであるところ、賃金減額の合意は認められないのであるから、X1がY社に対して前記債権を有しているというべきである。
そうすると、本件仮差押命令申立手続において債権者が主張した権利が事実的、法律的根拠を欠くものとはいえない。

賃金減額の合意があったか否かについて、裁判所がどのように判断するのかがよくわかりますね。

応用できる点ですので、是非、参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。