不当労働行為100(X労働者組合事件)

おはようございます。

今日は、組合の街宣活動等に対する差止め請求等に関する裁判例を見てみましょう。

X労働者組合事件(東京地裁平成26年9月16日・労経速2226号22頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Yらの街宣活動等の行為により、Xの名誉・信用が毀損され、平穏に事業活動を営む権利が侵害された旨主張し、Yらに対し、これら行為の差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、連帯して230万円の損害賠償及び知念損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

街宣活動等の差止めを認容

慰謝料として100万円を支払え

【判例のポイント】

1 本件街宣活動等の態様、特に、配布されたビラにおいて「非常勤ヘルパーに対する不当な排除を許さない!!」、「だまし打ち的な職場からの排除」などと、演説において「会社の、甲の説によれば、雇止めだと言っているが、こちらから見れば、一方的な排除であり、解雇だというふうに評価している。」などとして、読み手ないし聞き手に対し、XがしたBに対する雇止めが不当だとの前訴判決の判断に反する印象を与えるものであること、その回数が、X事務所におけるものだけでも27回に及ぶこと、Xが本件雇用関係の不存在等について前訴を提起して公権的解決を求め、前訴判決確定後も平成23年にYらに対してYらのXに対する活動を止めるよう申し入れるなど、XがYらとの任意の交渉を拒絶する意思が明確であること等からすれば、本件街宣活動等は、Xの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動を営む権利を侵害するものといえる
以上の事実に加え、X理事らの自宅におけるものも十数回に及ぶこと、Y組合代表者が、今後もX及びXら理事に対して従前と同様の行動をとる余地がある旨述べていることなどからすると、Yらが今後も従前と同様ないし類似の方法で街宣活動等を行う蓋然性は高いといわざるを得ず、Xの名誉・信用を守り、平穏に事業活動を確保するためには、Yらの当該街宣活動等を差し止める必要性があるというべきである

2 本件街宣活動等のうち、X事務所におけるものは、Xの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動をする権利を侵害する違法な行為というべきであって、不法行為を構成するが、他方、本件街宣活動等のうち、X理事宅におけるものは、直ちにXの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動をする権利が侵害されたものとは認められない。
そして、本件街宣活動等のうちX事務所におけるものの回数・期間、ビラの内容等の態様、本件証拠により認められる諸般の事情を併せ斟酌すれば、Xが本件街宣活動等により被った損害は100万円であると認定するのが相当である。
この点につき、Yらは、Yらへの本件訴状送達時より3年以上前の行為については消滅時効期間が経過している旨主張する。しかし、Yらの行為は、その目的の同一性、態様の類似性等からすれば、Bの雇用問題に関する一連の継続した行為と評価するのが相当であるから、消滅時効期間は経過していないと認められる。

街宣活動等の差し止めが認められた事案です。

どのようなことを主張立証すればよいのかについて参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。