セクハラ・パワハラ8(国立大学茨城大学(ハラスメント・名誉毀損)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、ハラスメント訴訟提起等を非難する学長所見などに対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

国立大学茨城大学(ハラスメント・名誉毀損)事件(水戸地裁平成26年4月11日・労判1102号64頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、D学部教授であったXらが同学部の学部長Eから受けたハラスメント言動に関する苦情申立てに対するY社の処理が不適切であったとしてY社に対し損害賠償請求訴訟を提起したことを非難する内容の文書並びに上記言動を原因とするXらのEに対する損害賠償請求訴訟におけるXらによる私的録音及び同録音記録の使用を非難する内容の文書を、それぞれ、Y社教職員全員にメールで一斉配信し、かつ、Y社管理の教職員専用電子掲示板に上記各文書を掲載したことにより、Xらの名誉が毀損されるとともにY社教職員らのXらに対する新たなハラスメントを招くなどXらの職場環境が悪化したなどとして、XらがY社に対し、709条(仮に民法上の不法行為責任が認められない場合には国家賠償法1条1項)に基づき名誉毀損による慰謝料各120万円の支払及び民法415条に基づき職場環境整備義務違反による慰謝料各150万円の支払並びに各慰謝料に対する遅延損害金の支払を求めるとともに、民法723条(仮に民法上の不法行為責任が認められない場合には国家賠償法1条1項)に基づき上記各文書の上記電子掲示板からの削除を求める事案である。

【裁判所の判断】

慰謝料合計200万円を支払え

Y社に登録された教職員のパーソナルコンピューターからのみ閲覧可能な教職員専用の「全学電子掲示板」の中の「学長室だより」から「2教授が茨城大学を訴えた訴訟問題に関する「学長所見」」及び「大学における公式会議での私的録音記録の利用について」と題する書面を削除せよ

【判例のポイント】

1 一般に、文書による特定の表現の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断すべきであるところ(最高裁昭和31年7月30日判決)、一般の読者は、通常、文書に記載されている記事のうち、名誉毀損の成否が問題となっている記載部分のみを取り出して読むわけではなく、当該記事の全体及び前後の文脈から当該記載部分の意味内容を認識ないし理解し、これに評価を加えたり感想を抱いたりするものであると考えられるから、ある記事が他人の社会的評価を低下させるものであるか否かを判断するに当たっては、名誉毀損の成否が問題とされている記載部分の内容のみから判断するのは相当ではなく、当該記載部分の記事全体における位置付けや、表現の方法ないし態様、前後の文脈等を総合して判断するのが相当である。

2 また、問題とされている表現が、事実を摘示するものであるか、意見ないし論評の表明であるかによって、名誉毀損に係る不法行為責任の成否に関する要件が異なるため、当該表現がいずれの範ちゅうに属するかを判別することが必要となるが、当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当であり、上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属すると解するのが相当である(最高裁平成9年9月9日判決、最高裁平成16年7月15日判決)。

3 Xらは、本件掲示板から教職員宛学長所見及び本件文書を削除することを求めているところ、上記の各事情に加え、Xらは既にY社を退職しているものの、現在までXらとY社との間における前訴は継続していること、教職員宛学長所見及び本件文書は4年ないし5年以上も公表され続けていること、Y社が本件掲示板の中から教職員宛学長所見及び本件文書の削除をすることは容易であることからすると、Xらの名誉を回復する措置として、Y社に対し教職員宛学長所見及び本件文書の削除を命じるのは相当である

労働事件というよりは、名誉毀損事案ですかね。

裁判所の考え方を知るにはとてもいい裁判例だと思います。

参考にしてください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。