Daily Archives: 2015年7月24日

解雇180(アメックス(休職期間満了)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、就業規則の変更に伴う復職拒否・退職扱いの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

アメックス(休職期間満了)事件(東京地裁平成26年11月26日・労判1112号47頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約(労働契約)を締結した後、業務外傷病(うつ状態)により傷病休暇及び療養休職を取得したXが、療養休職期間満了時に休職事由が消滅したから、X・Y社間の雇用契約がY社の就業規則により終了するものではないなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づき、休職期間満了日(雇用契約終了日)の翌日である平成24年12月21日以降の賃金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

賃金+遅延損害金の支払いを命じる

【判例のポイント】

1 Y社は、労働契約法10条により、本件就業規則24条3項がXを拘束する旨主張する。
しかし、本件就業規則24条3項は、従来規定されていない「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを、療養休職した業務外傷病者の復職の条件として追加するものであって、労働条件の不利益変更に当たることは明らかであるY社において、従前から上記復職条件が業務外傷病者の復職条件として労使間の共通認識となっていたことや、本件変更前から本件内規の本件判定基準9項目により、上記の復職条件を満たすか否かを判断する運用をしていたことを認めるに足りる証拠はない
そして、業務外傷病のうち特に精神疾患は、一般に再発の危険性が高く、完治も容易なものではないことからすれば、「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件とする本件変更は、業務外傷病者の復職を著しく困難にするものであって、その不利益の程度は大きいものである一方で、本件変更の必要性及びその内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらないことからすれば、本件変更が合理的なものということはできない
したがって、本件変更は、労働契約法10条の要件を満たしているということはできず、本件就業規則24条3項がXを拘束する旨のY社の主張を採用することはできない。

2 業務外傷病により休職した労働者について、休職事由が消滅した(治癒した)というためには、原則として、休職期間満了時に、休職前の職務について労務の提供が十分にできる程度に回復することを要し、このことは、業務外傷病により休職した労働者が主張・立証すべきものと解される。

3 休職制度が、一般的に業務外の傷病により債務の本旨に従った労務の提供ができない労働者に対し、使用者が労働契約関係は存続させながら、労務への従事を禁止又は免除することにより、休職期間満了までの間、解雇を猶予するという性格を有していることからすれば、使用者が休職制度を設けるか否かやその制度設計については、基本的に使用者の合理的な裁量に委ねられているものであるとしても、厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」から、本件内規中に掲げた本件判定基準9項目を全て満たした場合にのみ復職を可能であるとする運用を導くことは困難である。
また、本件内規は、平成23年7月頃、Y社人事部において、業務外傷病により傷病休暇及び療養休職を取得した従業員の復職判断のための内部資料として作成されたものにすぎず、従業員には開示されていないから、上記の運用が本件雇用契約の内容として、Xの復職可否の判断を無条件に拘束するものではない

4 そして、本件情報提供書は「軽度日中の眠気が出現する以外は気分、意欲とも改善している」、「当初は時間外勤務は避ける必要がある。又、質量ともに負担の軽い業務からスタートして徐々にステップアップすることが望ましい。」との所見の趣旨はD医師が述べるとおりであり、Y社としては、本件診断書及び本件情報提供書の内容について矛盾点や不自然な点があると考えるならば、本件療養休職間満了前のXの復職可否の判断の際にD医師に照会し、Xの承諾を得て、同医師が作成した診療録の提供を受けて、Y社の指定医の診断も踏まえて、本件診断書及び本件情報提供書の内容を吟味することが可能であったということができる
Y社は、そのような措置を一切とることなく、何らの医学的知見を用いることなくして、D医師の診断を排斥し、本件判定基準9項目のうち、・・・を満たしていないと判断しているところ、そのようなY社の判断は、Xの復職を著しく困難にする不合理なものであり、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものというべきである

非常に重要な裁判例です。

休職期間に関連する問題は、会社としても対応がとても難しいですね。

「正解」がよくわからない中で、できる限りの対応をするという姿勢が求められます。

顧問弁護士や顧問社労士とともに対応していくことが強く求められます。