Monthly Archives: 6月 2017

本の紹介683 世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法

帯に書かれていますが、近い将来必ず訪れるAI時代を乗り切るためには何をすべきかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

こんな時代には、『自分の仕事がなくなる』ことを恐れるのではなく、むしろ『どうしたら自分の仕事をITに置き換えられるか』『どうすればもっと自動化・省力化できるか』を考えてほしいのです。自動車の『自動運転』が典型的ですが、人がやっていた仕事を機械で置き換えた人が勝つ状況になっています。・・・同じことはみなさん一人ひとりの仕事でも実現できます。積極的に自分の仕事をITに置き換えていけば、そこであなたは仕事を奪われる側ではなく、その業界の次の形を創造する側に立てるかもしれません。」(9~10頁)

 

今後、AIによって今人間がやっている仕事はなくなっていきます。

自分が今やっている仕事が機械に代替可能かを考えると、たいていのものは可能なのでしょうね。

そう遠くない将来、自分がやってきた仕事がなくなることが予想される今、みなさんはどんな準備をしますか?

安心してください。9割の人は何の準備もしませんから。

多くの人は、なるようにしかならないと思っていますから。

今のうちから準備をした者勝ちです。

賃金134 固定残業制度に関する最高裁の考え方(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金規定の有効性と未払賃金等請求に関する最高裁判決を見てみましょう。

国際自動車事件(最高裁平成29年2月28日・労判1152号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、タクシー乗務員として勤務していたXらが、歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する金額を控除する旨を定めるY社の賃金規則上の定めが無効であり、Y社は、控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払義務を負うと主張して,Y社に対し,未払賃金等の支払を求める事案である。

なお、原審は、本件規定のうち、歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に相当する額を控除する部分は無効であり、対象額Aから割増金に相当する額を控除することなく歩合給を計算すべきであるとした上で、Xらの未払賃金の請求を一部認容すべきものとした。

【裁判所の判断】

原判決中Y社敗訴部分を破棄する。

前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。

【判例のポイント】

1 労働基準法37条は、時間外、休日及び深夜の割増賃金の支払義務を定めているところ、割増賃金の算定方法は、同条並びに政令及び厚生労働省令に具体的に定められている。もっとも、同条は、労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、使用者に対し、労働契約における割増賃金の定めを労働基準法37条等に定められた算定方法と同一のものとし、これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない。
そして、使用者が、労働者に対し、時間外労働等の対価として労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには、労働契約における賃金の定めにつき、それが通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討した上で、そのような判別をすることができる場合に、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきであり(最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決最高裁24年3月8日第一小法廷判決参照)、上記割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。

2 他方において、労働基準法37条は、労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしていないことに鑑みると、労働契約において売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできないというべきである。

応用可能性が高い判断です。

もっとも、この最高裁判決に基づいて従来の賃金体系を変更する場合には、多くの場合、労働条件の不利益変更にあたりますのでそう簡単にはできません。 

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介682 好調を続ける企業の経営者はいま、何を考えているのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
好調を続ける企業の経営者は いま、何を考えているのか?

タイトル通りの内容です。

好調を続ける8社の経営者にインタビューをしています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

2025年にはすべての企業がソフトウェアの会社になると思っています。・・・私は、第4次産業革命以降は、あらゆる企業がそのような形態になると思っています。・・・我々は、ソフトウェアの会社が農業や医療サービスを提供していく、そんな会社になりたいんです。あらゆる分野でソフトウェアの会社・・・正確にいうと、ソフトウェア的な考え方をする会社が、第4次産業革命以降の企業の姿だと思います。」(215~216頁)

2025年まであと8年ですね。

8年後にこのブログの記事を読み返したときに、どう感じるのでしょうかね。

私たち弁護士業界のあり方も大きく形を変えているのでしょうね。

8年後、AI弁護士がどこまで勢力を拡大しているのか楽しみです。

解雇234 解雇から2年以上経過後に申し立てた仮処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元マネージャーの能力不足を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

コンチネンタル・オートモーティブ(解雇・仮処分)事件(東京高裁平成28年7月7日・労判1151号60頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社がXに対して行った解雇が無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めるとともに、1か月当たり73万2452円の月例給与の支払を求める事案である。

原審はXの申立てを却下し、Xが即時抗告した。

【裁判所の判断】

抗告棄却

【判例のポイント】

1 Xは、不動産事業収入について、所得金額は36万6335円であって、家計に入ってくる収入は1か月3万0530円であると主張するが、不動産事業に係る経費には減価償却費などがあり、一概に所得金額が手取りの収入金額であるとはいえないところ、Xはその内訳について明らかにしていないことに照らし、Xの主張は採用しない
また、平成28年3月時点で、X世帯の預貯金額は269万円程度となっていると主張するが、本件解雇からは既に2年以上が経過しているのであって、Xとしては、これまでの間、本案訴訟を提起することは十分可能な状態であったことに照らすと、Xの主張する事情を考慮しても、仮の地位を定める仮処分命令における保全の必要性の有無についての前記判断を左右するものではない

解雇されてから2年以上経過しても地位確認の本訴を提起していないことを保全の必要性を否定する理由として挙げています。

解雇されてすぐに本訴を提起していたいたら、かなり前に判決なり和解で終結していたでしょ、という感じです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介681 財布はいますぐ捨てなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
財布はいますぐ捨てなさい

「えー、なんで財布をいますぐ捨てないといけないのー?」系のタイトルですね。

限りある時間をいかに有効かつ効率よく使うか、ということにフォーカスする本です。

「人生に無駄なことはない」の真逆で、「人生は無駄なことだらけ」だと思っている私としては、著者の考え方に賛成です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結局、家事代行をはじめ、この本に書いてあるようなことを実践していけるのは、自分がどうなりたいかが明確な人だけです。・・・『いずれこうなったらいいな』という程度では、人は変わりません。また、目標のためにお金を惜しまずに使わないと、変わらないんです。本当に時間が大切なんです。同じ長さの時間なら、稼ぐことや好きなことに没頭したほうが、確実に収入は上がる。」(196~197頁)

「時間をお金で買う」という感覚ですよね。

お金はなくなればまた稼げばいいですが、時間はなくなるともう戻ってきません。

無駄なことにできるだけ時間をかけたくない、成功するために必要なことにだけ極力時間を使いたいと考える人に共通する考え方ではないでしょうか。

家事代行はその一例ですね。

何をやるかではなく、何をやらないかの方がよほど大切だということです。

賃金133 累積無事故表彰制度に基づく副賞50万円の支払請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、累積無事故表彰制度に基づく副賞等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

川崎陸送事件(東京地裁平成28年12月26日・労判ジャーナル61号9頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、Y社の賞罰規程における累積無事故表彰制度に基づき、副賞50万円等の支払を求め、Y社の従業員であるBが、Y社に対し、上記制度に基づき、副賞35万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件賞罰規程には、累積無事故表彰者の表彰について、表彰状と副賞をもって行うことが規定されるとともに、累積無事故期間の計算方法、累積無事故記録更新中の者が事故を発生させた場合の年数読替えによる救済措置、副賞の金額、表彰の決定手続、表彰の時期(副賞の支払時期)などについて、詳細かつ明確な規定がされており、副賞の支給条件が明確であり、具体的な支給額の確定も可能であるから、表彰の決定手続において業務部長ないし役員会における審議を要するとしても、労働の対償たる賃金又はこれに準ずる労働条件に当たるものと解されること等から、本件表彰制度の廃止は、就業規則の変更による労働条件の不利益変更に当たり、労働契約法9条、10条が適用される。

2 本件表彰制度は、就業規則に定められた労働条件に当たるから、取締役会で事実上廃止することはできず、また、東京都環境局が実施する「貨物輸送評価制度」においてY社が失格となったのだとしても、これが専らY社の従業員の責めに帰すべき事由によるものか否かは判然としない上、これと本件表彰制度を廃止することに特段の関連性は認め難く、これをもって労働条件の変更の必要性を認めることは困難であり、さらに、Y社は本件表彰制度の廃止を一方的に決定していること、労働者の受ける不利益の程度も小さくないことなどの諸事情に照らして、本件表彰制度の廃止に係る本件賞罰規程の変更が合理的なものであると認めることはできないから、従業員らに対しては、本件表彰制度の廃止に係る本件賞罰規程の変更の効力が及ばず、従前の規程が適用されるから、Y社は、従業員らに対し、本件表彰制度に基づく副賞の支払義務を負う。

上記判例のポイント1のように具体的に支給条件が規定されているものについては、「裁量」ということで逃げることができません。

賞与についても規定のしかた如何によっては同様の争いが生じますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介680 伝えることから始めよう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
伝えることから始めよう

ジャパネットたかたの髙田前社長の本です。

日本に著者のことを知らない人はいるのでしょうか・・・くらい有名ですよね。

この本では、これまでのお仕事において、「伝える」ためにどのような工夫をしてきたのかがたくさんの例に基づいて説明されています。

業界を問わずすべての職業に役立つ本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・同じことばかりやっていては飽きられてしまうとわかっていても、一度上手くいくと、どうしてもそこから抜け出せないのが人の習性です。成功体験に魔物が潜んでいることがあるんですよ。それには特に気をつけなければいけません。私は意識的に、そうならないように気を付けてきました。・・・同じことを繰り返していてはいけない、ということを自覚することは大切ですよ。日々、反省して、次に何をすべきかを考えることが、いかに大切なことか、それに気づくことができた人が、長く活躍できると思うのです。」(192~193頁)

ユニクロの柳井社長も「成功は一日で捨て去れ」と言っています。

うまくいくとその方法ばかりを続けてしまう。

でも、それだけいつか必ず飽きられてしまうのです。

だからいつも「同じことを繰り返してはいけない」と自覚することが求められるわけですね。

うまくいっているうちは、周りの人は何も言ってくれませんので。

自分で自覚しておくことが大切なのはそういう理由からです。

解雇233 原審では試用期間中の解雇は無効、控訴審では有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総務関係担当者として資質を欠き、試用期間中の解雇が有効とされた事例を見てみましょう。

X社事件(東京高裁平成28年8月3日・労経速2305号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に対し、①本件解雇の有効性を否定して、労働契約上の地位を有することの確認、同地位を前提とした労働契約に基づく平成27年11月度までの給与及び遅延損害金の支払を求め、併せて、②Y社がXに担当職務を説明しなかったこと、健康保険被保険者証を交付しなかったこと及び本件解雇が不法行為に該当するとして、損害賠償等の支払を求める事案である。

原審は、Xの請求のうち、XがY社に対し労働契約上の地位を有することの確認請求及び未払給与等の支払請求を認容し、損害賠償請求を棄却した。これに対し、Xが控訴するとともに、当審において、上記のとおり追加請求をし、Y社が附帯控訴した。

【裁判所の判断】

Xの本件控訴を棄却する。

Xの当審における追加請求をいずれも棄却する。

Y社の本件附帯控訴に基づき原判決中Y社敗訴部分を取り消す。

同部分のXの請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社がXを雇用したのは、Y社における業況の拡大に対応した社内体制構築の一環としてであり、Xが社会保険労務士としての資格を有し、経歴からも複数の企業で総務(労務を含む。)及び経理の業務をこなした経験を有することを考慮し、労務管理や経理業務を含む総務関係の業務を担当させる目的であり、人事、財務、労務関係の秘密や機微に触れる情報についての管理や配慮ができる人材であることが前提とされていたものと認められる。

2 ところで、企業にとって決算書などの重要な経理処理に誤りがあるという事態はその存立にも影響を及ぼしかねない重大事であり、仮に担当者において経理処理上の誤りを発見した場合においても、まず、自己の認識について誤解がないかどうか、専門家を含む経理関係者に確認して慎重な検証を行い、自らの認識に誤りがないと確信した場合には、経営陣を含む限定されたメンバーで対処方針を検討するという手順を踏むことが期待される。
しかるに、Xは、自らの経験のみに基づき、異なる会計処理の許容性についての検討をすることもなく、Xにおける従来の売掛金等の計上に誤りがあると即断し、上記のような手順を一切踏むことなく、全社員の事務連絡等の情報共有の場に過ぎず、また、Fの来訪日程を告げることの関係においても、必要性がないにもかかわらず、突然、決算書に誤りがあるとの発言を行ったものであり、組織的配慮を欠いた自己アピール以外の何物でもない。さらに、上記発言後のXの行動及び原審本人尋問の結果によれば、Xにおいて自らの上記発言が不相当なものであることについての自覚は乏しいものと認められる。

3 以上によれば、Xのこのような行動は、Y社がXに対して期待していた労務管理や権利業務を含む総務関係の業務を担当する従業員として資質を欠くと判断されてもやむを得ないものであり、かつ、Y社としては、Xを採用するに当たり事前に承知することができない情報であり、仮に事前に承知していたら、採用することはない労働者の資質に関わる情報というべきである。
そうすると、本件解雇には、Y社において解約権を行使する客観的な合理的な理由が存在し、社会的に相当であると認められる。

本件は本人訴訟です。

Xが控訴しなければ地位確認は勝訴で確定していた事案です。

なんか最近、判例読んでいると過度な労働者保護路線を少し変更しています?

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介679 成功する人は偶然を味方にする(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

帯には「『努力と才能は報われる』という幻想」と書かれています(笑)

これらにプラスして運も大切だよね、という内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

わたしは運・不運が個人の資質の違いにつながると訴えたいわけではない。近年の研究で明らかになった、偶然のできごとや環境的要因が-個人の資質や欠点とはまったく無関係のものが-人生を左右するという事実をみんなにも知ってほしいのだ。」(32頁)

偶然のできごとや環境的要因が人生を左右することは多くの人が認識しています。

どれだけ安全運転をしていても、後ろから追突されるときには追突されるのです。

これを不運と言わずにどう説明すればいいのでしょうか。

私は、「人生で起こることはもともと起こると決まっていた」という考え方をします。

寿命もそうです。

できるだけ現実をありのまま受け入れるようにしています。

今できることを一生懸命やって、あとは運命に任せると。

こんな感じでいいんじゃないかな、と思っています。

賃金132 医療機関において診療情報の改ざんを理由とする退職金不支給の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、改ざん行為を理由とする未払退職金について支払いを求めた事例を見てみましょう。

医療法人貴医会事件(大阪地裁平成28年12月9日・労判ジャーナル61号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営する病院で医療事務に従事した元従業員Xが、Y社に対し、自己都合退職したとして退職金を請求したところ、診療情報を改ざんしたことを理由に支給されなかったことから、退職金等の支払を求めるとともに、Y社代表者らから違法な退職勧奨を受けたなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本来の退職金支給額の2分の1の支払を命じた

損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、18個に及ぶ本件改ざん行為を行い、Xの本件改ざん行為は、不正な保険請求の危険を生じさせ、その結果、Y社の医療機関としての信用を失墜させる危険のある悪質な行為であり、少なくとも本件就業規則所定の懲戒事由に該当するといわなければならないが、実際に本件改ざんの不正な診療情報に基づき保険請求がなされたものの、速やかに同請求を取り下げたことにより、Y社の信用失墜に至らずに済んだことが認められるところ、Xの本件改ざん行為は、懲戒解雇事由に該当する悪質な行為であり、Xが19年余にわたり本件病院に勤務して積み上げてきた功労を減殺するものといえるものの、Y社の信用失墜には至らなかったことを考慮すると、Xの功労を全部抹消するほどに重大な事由であるとまではいえず、本件改ざん行為の性質、態様及び結果その他本件に顕れた一切の事情にかんがみると、Y社は、Xに対し、本来の退職金の支給額の2分の1を支給すべきであった。

結果としてたまたま信用失墜に至らなかっただけです。

Y社としては腑に落ちない結果かもしれませんが、裁判所はこのように考えます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。