Daily Archives: 2026年7月22日

セクハラ・パワハラ99 ハラスメントを理由とする懲戒処分および降格処分の有効性を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ハラスメントを理由とする懲戒処分および降格処分の有効性を認めた事案を見ていきましょう。

一般財団法人航空保安協会事件(東京地裁令和7年6月11日・労経速2601号26頁)

【事案の概要】

Y社は、航空保安施設の維持管理、空港における消防警備等の事業を行う一般財団法人であり、XはY社の職員である。Y社は、Xが、部下職員に対し、他の職員の面前で失敗を責め続け、人格や尊厳を否定するような発言を繰り返す等の行為をしたことを理由として、Xに対し、令和5年6月12日付けで「同月16日付で主任を解く」とする人事降格処分と、15日付けで停職15日間の懲戒処分を行った。
本件は、Xが、Y社に対し、上記行為をXが行った事実はなく、本件各処分はY社の人事権及び懲戒権の濫用に当たり、無効であるとして、本件各処分の無効の確認を求めるとともに、本件各処分が不法行為に当たるとして、慰謝料665万円、停職及び降格により減額された給与及び賞与等58万9885円、通院費用等3万2440円、弁護士相談費用等21万1650円の合計748万3975円のうち748万円の損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 前回懲戒処分から3年も経たないのにAに対して本件対象行為を行っている。XのAに対するパワハラ行為は、部下職員に対する指導の範囲を超えた感情的言動かつ人格攻撃というべき相当に悪質なものであり、Dに対する前回懲戒処分の懲戒事由であるパワハラ行為と同様の態様であったこと、DとAは、いずれもXからパワハラ行為を受けたことが要因の一つとなって退職に至ったことが認められる。
空港の安全に関わる重要な業務を担うY社において、その職務の特殊性や常に危険および緊張を伴う現場であること等から人材不足が常態化しており、貴重な人材を失う事態を極力避けなければならないという状況にある中で、2度にわたりXのパワハラ行為を要因として職員が退職に至ったことは、看過することができない重大な事態であったといえる。
本件懲戒処分は、前回懲戒処分より2段階重く、また解雇の次に重い処分である一方で、3月以内の期間とされる中で15日間の停職処分と定めたものであるところ、本件懲戒処分に係るXの行為の性質および態様その他上記の諸事情を踏まえると、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労働契約法15条)には当たらないというべきである。

2 使用者は、労働者との間の労働契約に基づき、その業務上の必要に応じて人事権の行使としてその裁量により労働者の担当する業務を決定することができ、これには職位や役職を引き下げることも含まれると解される。もっとも、人事権の行使としての降格も無制限に認められるものではなく、当該降格が社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると認められる場合には、当該降格は無効となるというべきであり、かかる判断に当たっては、使用者側における業務上、組織上の必要性の有無および程度、労働者の能力または適性の欠如の有無および程度、労働者の受ける不利益の性質および程度等の諸事情を総合考慮することが相当である。
Xは、令和元年12月に前回懲戒処分を受けたにもかかわらず、再び部下職員に対してパワハラ行為をし、結果として職員が退職するに至ったものであるところ、Y社がXをこれ以上指導的立場に置くことはできないと判断したことには合理的理由があり、やむを得ない措置であったというべきである。そうすると、本件降格処分は、これにより本俸の1割に当たる役職手当が支給されなくなるなど相応の給与上の不利益を伴うものであったことを考慮しても、社会通念上著しく相当性を欠くものということはできないから、人事権の濫用に当たらず、有効である。また、不法行為にも当たらない。

具体的な発言内容としては、「お前この仕事向いてないな」「お前センスないな。どこ見てんだよ。成長してねーな」「辞めちまえ」等があります。

上司のみなさん、気を付けましょう。

ハラスメントの予防については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。