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今日は、普通解雇された社員の就労意思の喪失を認めた事案について見ていきましょう。
双龍産業事件(東京地裁令和7年9月11日・労経速2608号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、①令和3年8月31日付けの普通解雇が無効であると主張し、
〈1〉雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認(前記第1の請求1項)を求めるとともに、
〈2〉本件解雇後の令和3年9月から本判決確定の日までの毎月20日限り月額29万1500円の未払賃金請求として、令和3年9月から令和5年10月までの26か月分の賃金とこれらに対する各支払期日の翌日から同月20日までの民法所定年3分の割合による確定遅延損害金との合計781万5845円及びうち上記26か月分の賃金合計757万9000円に対する同月21日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(前記第1の請求2項)、並びに令和5年11月から本判決確定の日までの各月分の賃金29万1500円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(前記第1の請求3項)を、
〈3〉本件解雇後の令和3年12月から本判決確定までの毎年7月10日及び12月10日限り60万円の未払賞与請求として、令和3年12月から令和5年7月までの4回分の賞与とこれらに対する各支払期日の翌日から同月10日までの民法所定年3分の割合による確定遅延損害金との合計245万6908円(別表2(略)参照)及びうち上記4回分の賞与合計240万円に対する同月11日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(前記第1の請求4項)、並びに令和5年12月から本判決確定の日までの各回分の賞与60万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(前記第1の請求5項)を求め、
また、②被告の原告に対する違法な退職勧奨、休業命令の発令、団体交渉中の解雇通知書の送付等が不法行為を構成すると主張し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料及び弁護士費用のうち550万円及びこれに対する最後の不法行為の後の訴状送達日の翌日である令和5年11月10日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払(前記第1の請求6項)を求める事案である。
【裁判所の判断】
1 Y社は、Xに対し、209万7530円及びうち198万8030円に対する令和5年10月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 Y社は、Xに対し、33万円及びこれに対する令和5年11月10日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
【判例のポイント】
1 Xは、遅くとも令和4年3月時点では新たな就職先で稼働しており、本件救済申立ての審理継続中の同月23日にY社から職場復帰検討書が提出されたところ、これに対して何らの応答を示すこともないまま、その直後の同年4月11日には本件救済申立てを取り下げたことが認められる。そして、上記検討書でY社が提案したXの職場復帰の内容は、1年間の契約社員として社内業務に限るなど従前のXの労働条件を不利益に変更する内容であったと認められるところ、Xにおいて、Y社への就労意思が存続していたのであれば、本件救済申立てに係る手続において、本件解雇以前の労働条件での即時の職場復帰を求めてしかるべきものであったといえる。
しかしながら、Xが上記のような対応をしないままに本件救済申立てを取り下げたというのは、他の就労先での就労を開始した中で、Xの職場復帰に否定的な被告の姿勢が明らかになったことで、XがY社での就労意思を喪失させるに至ったことによるものとみるのが相当である。
現に、Xは、本件救済申立ての取下げ後、本件訴訟まで、自ら又はその代理人であったL弁護士等を通じてY社に対して何らの連絡もないまま本件訴訟まで1年半以上の期間を経過させたものであって、この期間について、Xは、L弁護士との間で本件訴訟に向けた打合せを行っていたなどと述べるが、L弁護士は本件救済申立て当時からXの代理人であったのであり、Xに復職意思があったのであれば直ちに訴訟を提起したはずであるし、訴訟提起を困難とする事情があったとも認められない。これらからすれば、Xは、本件救済申立ての取下げの日の翌日である令和4年4月12日にはY社への就労意思を喪失したものと認めるのが相当である(なお、Y社は、新たな就職先で稼働した時点で就労意思を喪失したとも主張するが、同時点で就労意思が喪失されていたとまで認めるに足りる証拠はなく、上記説示のとおり、本件救済申立ての取下げという明確な行動に現れた時点をもって、就労意思の喪失を認めるのが相当である。)。
2 Y社は、Xに対して解雇予告手当として支払った29万0040円をもって、本件解雇後の令和3年9月分の未払賃金に充当する旨主張する。
しかしながら、解雇予告手当は、解雇30日前の解雇予告を行わない代わりに支払うことを要する金員であり(労基法20条1項)、賃金とはその性質を異にするものであるから、使用者の一方的な意思表示によって、事後的に解雇予告手当相当額を賃金債務の弁済に充当することはできないというべきである。また、Xにおいて、解雇予告手当は受領したが賃金に充当するものではないとの認識が示されていることに照らしても、解雇予告手当が当事者間の合意に基づき賃金に充当されるべきものとみることもできない。
上記判例のポイント1は特別な事情があったことから、裁判所が就労意思の喪失を認定しました。
新たな就職先で稼働したからといって当然に就労意思の喪失が認定されるわけではないので、注意しましょう。
日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。