おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。
今日は、休職期間満了による自然退職を認めなかった事案を見ていきましょう。
ファーストリテイリング事件(東京地裁令和7年9月12日・労経速2608号29頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と期間の定めのない労働契約を締結したXが、次の各請求をする事案である。
(1)休職期間満了による自然退職は効力を生じていないと主張して、労働契約上の地位を有することの確認
(2)Y社による懲戒処分としての譴責処分が無効であると主張して、同処分の無効確認
(3)Y社による懲戒処分としての降格処分等が無効であると主張して、降格処分前の地位を有することの確認並びに降格等により減少した賃金154万4995円及び賞与220万9331円+遅延損害金の支払
(4)上司によるパワーハラスメントを受けたなどと主張して、不法行為又は債務不履行(職場環境配慮義務違反)に基づく損害賠償として、2769万1396円+遅延損害金の支払
【裁判所の判断】
1 XがY社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、22万円及びこれに対する令和6年2月5日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
【判例のポイント】
1 本件就業規則上の根拠について
Xは、令和3年8月2日から同年11月1日まで長期欠勤となり、同月2日より休職となり、その後一時の復職等を経たが、令和5年3月27日から休職となり、同年4月9日をもってXの休職期間が通算で1年間となったことが認められる。
そして、本件連絡文書は、「復職を命じざるを得ません」との表現を用いているものの、令和6年2月8日からの就業場所及び就業内容を具体的に告知しているとおり、同日からの復職を命じたものと解するのが相当である。そして、本件介護休業規程が介護休業開始日の2週間前までに申出書の提出を要求していることからすれば、本件連絡文書が介護休業の取得を制限する誤った見解を伝えるものであるとしても、上記復職命令自体は有効と解される。
2 労基法19条1項の「業務上」の疾病であるか
Xは、Xが心因反応及びうつ状態を発症し出社不能となったのは、Y社の不法行為及び職場環境配慮義務違反が原因であり、原告はいまだ心因反応、うつ状態から治癒していないのであるから、Xの自然退職は、労働者が業務上負傷した場合の解雇を禁止する労基法19条1項に反する旨主張する。
しかしながら、Xが主張するY社の不法行為及び職場環境配慮義務違反は、本件連絡文書の送付を除き認めることができない。そして、Xは本件連絡文書の送付を受ける以前から心因反応(うつ状態)を発症していたものであるから、本件連絡文書の送付によってXが新たに心因反応及びうつ状態を発症したと認めることは困難である。
よって、令和6年2月27日の時点でXが「業務上」の疾病にかかっていたと認めることはできない。なお、これらに鑑みれば、Xの令和3年8月2日から同年11月1日までの長期欠勤は、業務外の欠勤であり、その後の休職は私傷病による休職と認められる。
(3)介護休業との関係について
その上でY社は、Xが、令和6年2月8日からの有効な復職命令を受けたにもかかわらず、同日以降に欠勤し、特別休暇4日間の取得を考慮しても、同月27日に本件就業規則13条5項の「復職して1年以内に傷病により連続して10日以上または断続的に20日欠勤したとき」に至り、同日に自然退職となったと主張する。
しかしながら、本件就業規則13条5項は「休職を命ずることができる」旨定めているが、Y社が同月27日に休職命令を発令したことを認めるに足りる証拠はない。
また、令和6年1月の時点では、本件就業規則13条5項によりY社が休職命令を発令した場合Xは直ちに自然退職となるが、他方で介護休業期間中は欠勤とはならず休職命令が発令されないという状況であり、本件の経緯によれば、X及びY社のいずれもこの状況を認識していたと認められる。その上でY社は、令和6年1月22日のXとの面談で介護休業の延長申請がされる可能性を認識した後に、本件連絡文書を送付して介護休業の延長は認められないとの誤った見解を告知し、その後Xは介護休業の延長申請をしないまま欠勤し、Y社は同年3月19日に至って休職期間満了及び退職通知書を送付したものである。
このような経緯に鑑みれば、Y社が本件就業規則13条5項に基づく休職命令の発令が可能となったことについては、これに先立つ本件連絡文書の送付により介護休業の取得を制限する誤った見解をXに告知したことが大きく影響しているというべきである。そして、この時点での休職命令の発令は、直ちにXを自然退職に至らしめるという重大な影響を与える行為であることにも鑑みれば、Y社が休職期間満了及び退職通知書の送付までの間に休職命令を発令したとしても、この休職命令の発令は、休職命令権を濫用するものであり許されないと解するのが相当である(労契法3条5項)。
以上によれば、令和6年2月8日以降に休職命令が発令されXが休職したと認めることはできないから、本件就業規則14条2号に基づく休職期間の満了に伴う自然退職の効力が生じたとは認められない。
上記(3)は注意が必要です。
手続きについては、慎重に検討するようにしましょう。
使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。