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今日は、店長兼バーデンダーの従業員に対する普通解雇を無効とし、不法行為を構成するとした事案を見ていきましょう。
ワンダーストリーム事件(東京地裁令和7年8月8日・労経速2607号18頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Y社に対し、令和5年7月13日付け解雇が無効であり、また、不法行為を構成すると主張して、(1)労働契約上の権利を有する地位の確認、(2)民法536条2項に基づき、同月分以降の賃金45万円+遅延損害金の支払、(3)不法行為に基づき、慰謝料及び弁護士費用相当損害金の合計110万円+遅延損害金の支払、(4)労働契約に基づき、同年6月13日からの自宅待機命令に対応する期間のうち同月7月1日から同月12日までの賃金18万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、法定の労働時間を超えて就労したと主張して、(5)令和4年4月1日から令和5年6月13日までの割増賃金+遅延損害金の支払、(6)(5)と同額の労基法114条本文に基づく付加金+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。
【裁判所の判断】
1 Xが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、令和5年7月13日から本判決確定の日まで、毎月10日限り、45万円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、44万円+遅延損害金を支払え。
4 Y社は、Xに対し、292万5895円+遅延損害金を支払え。
5 Y社は、Xに対し、付加金292万5895円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Xは、従業員の面前で、令和4年10月21日には、酒に酔ったY社代表者から「今日でクビでいいよ。」などと叱責され、同年12月15日には、閉店時間である午前5時頃から約1時間程度にわたり、酒に酔ったY社代表者から、店長としての能力が不足しているとして「店長辞めよっか。」、「お前店長は無理だよ。」、「ばかなの?」、「器が無い。」などと怒気を込めて叱責され、また、売上げが十分でないとして「お前言い訳ばっかり、なんかお前女々しいな、末っ子かおめぇ。」、「男らしくない」、「人生舐めてんぞ。」、「ガキ」、「カッコ悪いぞ男として。だっせぇよお前。めちゃくちゃだせぇわ。口先ばっかりだよ。」などと怒気を込めて叱責され、さらには、「一回おれとおめぇで喧嘩するか?」との発言と共に胸倉を掴まれるなどし、挙げ句、令和5年6月13日には、何ら客観的に合理的な理由なく本件解雇をされるに至った。本件解雇は、著しく相当性を欠くもので、Xに対する不法行為を構成するといわざるを得ない。
そして、Xが本件解雇をされるまでに、Y社代表者から、酒に酔って叱責するという態様で、令和4年12月15日には未明に長時間にわたって、明らかに業務上の必要性を欠く、人格を否定し、また、侮蔑的な言葉を浴びせかけられるなどし、さらには、「一回おれとおめぇで喧嘩するか?」との言葉とともに胸倉をつかまれるなどの有形力の行使を受けていることからすれば、本件解雇が無効であって、これを前提とした賃金の支払を受けることを踏まえても、それによっては賄いきれないほどの精神的損害が発生したというべきであり、それを慰藉する費用としては、40万円が相当であるというべきである。
2 確かに、Xは、アルバイトのシフト管理や求人、採用、フードメニューの考案等について権限を有していた。もっとも、X自身やアルバイトに対する人事考課については、Y社代表者が担うというものであった。
また、Xは、午後5時から午後5時30分には本件店舗に出勤し、ディナー営業が開始する時間に合わせて勤務しなければならず、本件店舗唯一のバーテンダーとして接客に従事し、来店客が退店し、閉店するまで応対しなければならなかった。
このようなXの勤務態様に照らせば、Xの業務内容は相当程度現業的業務によって占められ、また、勤務時間についても裁量があったと評価することはできない。現に、Xは、午後6時頃に出勤した際に、Y社代表者から「今日でクビでいいよ。」などと叱責されている。
さらに、その待遇は、毎月の支給額が合計45万円とそれ自体多額であるとまではいうことができないものであり、本件解雇後にされた本件店舗に係る求人情報によれば、店長候補・マネージャーの毎月の支給額よりも低額となっており、管理監督者として相応の待遇であったとまではいい難い。また、令和5年5月には、Xは、バーテンダーに降格され、Xを監視監督する者として支配人の立場としてEが本件店舗に勤務するようになったが、これによってXの月毎の給与支給額に変化はなく、この点においても、管理監督者としての権限に対応する何らか待遇を受けていたということができない。
これらの事情からすれば、Xが労基法41条2号の管理監督者に該当するということはできず、これに該当するとするY社の主張は採用できない。
解雇が無効であることは多言を要しません。
結果、多額のバックペイが発生し、加えて慰謝料も認められています。
管理監督者性が否定されましたが既定路線です。
日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。