継続雇用制度11(宇宙航空研究開発機構事件)

おはようございます。

さて、今日は、継続雇用制度に関する興味深い裁判例を見てみましょう。

宇宙航空研究開発機構事件(東京地裁平成19年8月8日・労判952号90頁)

【事案の概要】

Yは、宇宙航空分野における研究開発の事業を営む独立行政法人である。

Yには、定年退職者等を招聘職員として再雇用する制度がある。

Xは、Yの従業員として「宇宙オープンシステムの研究開発」に従事してきた。

Xは、平成17年2月、満60歳に達し、同年3月31日をもって定年退職した。

Yは、同年2月28日、Xに対し、再雇用の要件である「従前の勤務成績が良好な者」を満たさないことを理由に、定年退職後の再雇用をしない旨通告した。

Xは、「Yにおいて、定年退職後、特別の結核事由のない限り、本人が希望すれば従前と同一の条件を持って再雇用するという労働慣行があるにもかかわらず、再雇用されなかったのは不当である」として、地位確認等を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却。

【判例のポイント】

1 Yにおいては、再雇用を拒否している実績があること、本件再雇用制度の趣旨、独立行政法人であるYの置かれている立場から、希望者全員を従前と同一の条件で再雇用する意思を予め一般的に表示しているとは考え難い。

2 ただし、Xは、当然に再雇用されるものと思い込んでいて、再就職活動をしないまま定年退職の直前を迎え、わずか1か月前に再雇用しない旨の通告を受けたものあって、定年退職後の再就職に差し支えたことが窺えるから、高年齢者雇用安定法等の趣旨に鑑みれば、もっと事前に予告する等の配慮が望まれる

再雇用の要件を満たさないことが明らかになった時点で、できるだけ早めに従業員に伝える方が、再就職活動はしやすくなります。

結論に影響はありませんが、もう少し配慮が必要であったという判断です。

ちなみに、裁判所が、Xのことを以下のように評価しています。

Xは、本件証拠調べの経緯からも明らかなとおり、やや人の話を聴かず、その結果思い込みの強い傾向が窺え、これがYにおける研究内容に関する自己主張の強さ、固さにも表れているところと解される。この点が是正されない限り、招聘職員として再雇用したとしても、Yが期待する業務推進は期待できないのであるから、Yにおいて、人事考課結果を踏まえ、Xを招聘職員として再雇用しない旨判断したことはやむを得ない判断であったものと思料する。

本人尋問でのXの様子が垣間見えます。

Xの代理人としては、まさかこのような評価をされるとは思っていなかったのではないでしょうか・・・。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。