Monthly Archives: 5月 2014

本の紹介320 お金持ちの教科書(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←先日、久しぶりに事務所の隣にあるやきとり屋さん「日乃出」に行ってきました。

このお店もいつ行っても満席です。

この場所であれだけの集客力は本当にすごいことです。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、離婚訴訟が2件、破産の免責審尋が1件入っています。

午後は、来週から始まる裁判員裁判の打合せと裁判の打合せです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
お金持ちの教科書

帯には「お金持ちになりたくない人は読まないでください。」と書かれています(笑)

「お金を儲ける」ということに後ろ向きな感覚を持つ人が多い日本では、何の恥じらいもなく「僕はお金持ちになりたいんだー!」と言うのは気が引けます。

本音を言ってはいけない文化ですので、奥ゆかしさを保ちつつ、ひっそりとこの本を読むことにしました(笑)

ブログに書いている時点で奥ゆかしさもへったくれもありませんが。

冗談はさておき、お金持ちのみなさんの思考方法や決断力の高さは、大変勉強になりますし、刺激を受けます。

おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・彼の判断基準は常に『人』である。『新しいことは自分も含めて知識がないので、あれこれ考えても意味がありません。何かを人から持ちかけられたときには、その中身ではなく、その人だけを見ます。とにかく会って、じっくり話をして、その人がどんな人物か見極めるのです。極論をいうと、話の中身はほとんど考えません。』 同じく地方で事業を営むある経営者の判断基準はもっとすごい。『私は相手の声だけで判断します。声にハリがあり、元気にしゃべる人の話はじっくり聞きます。ボソボソ言う人は最初から相手にしません』」(105頁)

「話の内容」ではなく、「話している人」を見て判断する。

このような判断基準、大変参考になりますね。

どれだけおいしい話が来ても、その話をする人のことを信頼できなければ、その話には乗らないほうがいい。

この本に書いてある判断基準の一つとして、「声」があります。

「声にハリがあり、元気にしゃべる人」か「ボソボソ言う人」か。 ただそれだけで判断されてしまうこともあるわけです。

この判断が正しいかどうかはおいておくとして、少なくとも、元気がない人よりも元気がある人と一緒に仕事をしたいですよね。

いつも元気がなく、覇気が感じられない人では、パワーを吸い取られてしまう気がしませんか。

逆に、いつもパワーがみなぎっている人と仕事をしていると、こちらまで元気になる気がしませんか。

類は友を呼ぶ、引き寄せの法則からすれば、パワーはパワーのあるところに引き寄せられることになるので、今、自分にできることは、とにかく元気に生活するということなんだと思います。

解雇138(学校法人A学院ほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、女性教員へのわいせつ行為等を理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人A学院ほか事件(大阪地裁平成25年11月8日・労判1085号36頁)

【事案の概要】

本件は、同僚の女性教員であるAに対して車中で暴行を加え、わいせつ行為を行ったとして、Y社から懲戒解雇されたXが、Y社に対し、当該懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに懲戒解雇後の平成23年4月1日から毎月21日限り48万7500円の未払賃金及び遅延損害金を求めるとともに、懲戒解雇が不法行為に当たるとして損害賠償金550万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、更に、Aに対し、同人がY社に対して虚偽の被害申告を行ったことにより精神的損害を被ったとして、損害賠償金330万円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効→賃金支払

AはXに対し、88万円を支払え

【判例のポイント】

1 Aは、一見すると交際があったかのような関係になっていたのは、期限付き専任講師であるXは、正社員であり先輩であるXとの間で男女間のトラブルが発生した場合、弱い立場であるAがトラブルメーカーとして学校から排除されるのではないかとの恐れがあったため、穏便に済ませたいと考えていたが、Xは、Aの立場を考慮することなく、執拗にメールや電話で会うことを迫ったためである旨主張しているが、AがXに対して好意を抱いており、むしろ、Xに対してAとの交際を明言するよう求めていたことは、メールの内容から認められること、Aは平成22年7月に同僚のH教諭や教育委員会にXから暴行を受けたことを相談しているが、その時点でも正社員と期限付き専任講師という関係は変わりないことから、Aの主張は採用することができない。

2 以上によれば、Aの供述は、核心部分である暴行の態様について供述が一貫しておらず、また、同人の述べる暴行の態様は、平成21年9月23日以降のAの言動とも整合しないので、全面的に信用することはできない。もっとも、Xが非公式の事情聴取において「暴力にあたるような平手打ちをしたことはないです」などと述べていたことからするとXがAに対して平手打ちをしたとの事実を認めることができ、また、質問の流れからするとXは本件ドライブの日に平手打ちをしたことを認めたとも解されるが、平手打ちをしたことはあるかとの質問自体は日時を限定して尋ねておらず、質問者自身、直後に他の日のこととして答えた可能性を否定することはできず、XがAに対して平手打ちをした日が同日であることを認めるに足りる証拠はない

3 そうすると、XがAに対して平手打ちをしたとの事実を認めること及びXが平成21年9月22日に自動車内で胸を触るなどの行為を行ったとの事実を認めることはできるが、Xが同日に自動車内で暴行を加えたとの事実を認めるに足りる証拠はないから、本件懲戒解雇は、解雇事由を認めるに足りる証拠はなく、その余の点について判断するまでもなく、無効である。

4 Aによる虚偽の申告は、Xの雇用主であるY社に対するものであり、また、Xが無理矢理肉体関係を強要したことを内容とするものであるから、Xの名誉を著しく毀損するとともに、Xが職を失う危険を生じさせるものであって、悪質であるというほかなく、また、懲戒手続自体は非公開ではあるが、現在まで同様の主張を維持していることにより、Xの名誉に与えた悪影響も軽視できない。・・・これらの事情等を総合考慮すると、慰謝料は80万円、弁護士費用は8万円と認めるのが相当である

虚偽申告により、懲戒解雇に追い込まれたとしても、裁判所が認定する慰謝料の金額はこの程度です。

不貞行為による慰謝料よりはるかに低額です。

また、このような事案(セクハラ・パワハラ事案)の場合、被害者とされる従業員から被害の申告があった場合、会社としては、対応しないわけにはいきませんから、調査をすることになります。

その際、決して、当事者の一方のみの事情聴取から判断するのではなく、両当事者から事情聴取をする必要があります。 会社は中立公平な立場から客観的に懲戒事由の有無を判断すべきです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介319 才能を磨く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、久しぶりに鷹匠にある「22(VENTI DUE)」に行ってきました。

写真は、定番の「マルゲリータ」です。

言うまでもありませんが、生地がもちもちで、最高です。

仕事が終わった後のピザにビール、至福の時です。

いつ行っても混んでいるわけです。 すばらしい!

今日は、午前中は、交通事故の裁判が1件と顧問先会社でのセミナーが入っています。

今日のテーマは、「第7回 総務部が知っておきたいビジネス法務の基礎」です。

今回は、太陽光ビジネスと近隣トラブルについて、いつもどおり、ケーススタディを行います。

午後は、建築紛争に関する裁判が1件、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
才能を磨く ~自分の素質の生かし方、殺し方~

著者は、再生回数2000万回超というTED史上最多記録の持ち主です。

TEDでのプレゼンテーションのテーマは「学校教育は創造性を殺してしまっている」です。

原書のタイトルは、「Finding Your Element-How to Discover Your Talents and Passions and Transform Your Life-」です。

キーワードは、「Element」という言葉です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

幸福度に影響を与えるものの40パーセントは、あなたの『選択』と『物事の捉え方』と『感じ方』にかかっている。すなわち、あなた自身の『態度』にかかっている。幸福への鍵は、あなたの遺伝的な要因を変えることではなく(それは不可能だ)、あるいは環境を変えることではなく(できるにせよ、できないにせよ)、日々の『意識的な振る舞い』にこそあるのだ。・・・リカール曰く、『なかには生まれついて他者より幸福な人間もいるが、その幸福は依然としてもろく不完全なものだと私は理解するに至った。そして永続的な幸福の達成は一つの技術だと気づいた。それには心を鍛え、人間的質を向上させること、たとえば内面の平和や充足感や利他的な愛を育てるための持続的な努力が必要なのだ』。」(154~155頁)

詰まるところ、私たちは、幸せをなるために生きているのではないでしょうか。

人それぞれ「幸せ」のかたちが異なるだけであり、「幸せになる」というゴールは同じなんだと思います。

幸せは探すものではなく、感じるものであるというのが、私の考えです。

幸せを感じられないとすれば、その原因は、遺伝的なものでしょうか? 環境のせいでしょうか?

著者は、永続的な幸福の達成は、一つの技術だと行っています。

技術と言われると、遺伝も環境も関係なく、自分の努力によって、いくらでも磨くことができるものに見えてきませんか?

どんな状況に置かれたとしても、その状況をどう捉えるか、解釈は自分の裁量に委ねられているわけです。

困難な試練すら自分のレベルアップの機会と解釈すれば、それはチャンスに変わります。

これが幸せを感じる方法だと確信しています。

愚痴っぽい方は、是非、このように考える習慣を身につけてみて下さい。 心の安定を感じることができると思いますよ!

賃金75(医療法人光優会事件)

おはようございます。

さて、今日は、看護師らによる未払賃金等請求と反訴損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人光優会事件(奈良地裁平成25年10月17日・労判1084号24頁)

【事案の概要】

本件第1事件は、診療所を経営するY社に雇用されて正看護師として勤務していたX1と、同じく事務員として勤務していたX2が、Y社に対し、①Y社に解雇されるまでの未払賃金と立替金の支払、②解雇予告手当の支払い、③違法な業務(医師によらない診療録の作成や処方箋の発行など)を行うクリニックで勤務させられたことや些細な事柄で怒鳴りつけられるというパワハラを受け、精神的苦痛を受けたなどとして慰謝料の支払い、③解雇予告手当金と同額の付加金の支払命令を求めた事案である。

第2事件は、Y社が、X1に対し、X1がY社の業務命令に従わず職務放棄したことにより、Y社が計画していた訪問看護サービスの実施が不可能になり損害を被ったなどと主張して、債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求または使用者の被用者に対する求償権行使として損害金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、X1・X2への未払賃料、解雇予告手当、付加金を支払え

Y社は、X1・X2に対し、慰謝料として各50万円の支払え

Y社の請求は棄却

【判例のポイント】

1 ・・・そもそも解雇処分後に給与減額処分はなし得ないところであるし、また、違法のおそれのある業務命令を拒否したことが違法な業務命令拒否であるとも、解雇処分後の離職を職務放棄であるとみることもできないのであって、X1に懲戒処分事由があるとも認められないから、Y社の主張は理由がない。

2 Y社は、経営危機を理由に、職員の平成24年9月分、10月分給与を減額することとし、X2の同年9月分給与も20%減額とすることを決定した旨主張する。しかし、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないところ、本件全証拠によるも、X2が給与の減額に同意したことを認められないし、また、当該労働条件の不利益変更が合理的なものであることを認めるに足りず、ほかにこれを認めるに足りる証拠はないのであって、Y社の上記主張は理由がない。

3 Xは、看護師として、クリニックAで行われていた上記のとおりの違法な業務に関与するおそれのある職場環境に置かれていたと認められるのであり、また、設立要件を満たしていないおそれがある訪問看護ステーションの設立及び違法な聞き取り診療を指示されるおそれのある訪問看護の実施を命じられ、かつ違法な業務命令を拒否したところ不当な解雇を受けたものと認められる
以上を総合考慮すれば、Y社の上記違法行為によりX1が受けた精神的苦痛を慰謝するものとして、X1には慰謝料50万円を認めるのが相当である。

4 X1は、Y社により解雇されたものであり、Y社の正当な業務命令を拒否して職務を放棄したものとは認められない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、Y社のX1に対する債務不履行又は不法行為を理由とする損害賠償請求は理由がない。

解雇処分後に賃金の減額ができないことは当然です。雇用関係が消滅しているのですから。

また、解雇事案で、賃金の支払のほかに慰謝料が認められるケースは、それほど多くありません。

今回のケースは、解雇が無効であるということのほかに、違法な業務に従事させられたという特殊な事情があったため、慰謝料が認められています。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介318 世界のエリートの「失敗力」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!
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←週末の早朝は、海までのジョギングから始まります。

この時期の朝は、ちょうどいい気温で、とても気持ちがいいですね。

継続は力なり。

今日は、午前中は、裁判の打合せが1件入っています。

午後は、婚費調停が1件、新規事業の打合せが1件、ラジオの打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
世界のエリートの「失敗力」 (PHPビジネス新書)

この本を読むと、最前線で働いている人たちの多くは、何らかの大きな挫折を経験し、そこから必ず何かを学んでいることがよくわかります。

失敗を積極的に評価するという環境がいかに大切であるかもよくわかります。

日本が、今よりも、失敗に対して寛容な社会になることを願いばかりです。

挑戦に失敗はつきものですから、もっと果敢に挑戦できる社会であったほしいと思います。

もっとも、社会や環境を理由に挑戦しない(できない)人は、社会や環境が失敗に寛容になっても、結局、挑戦しないんですけどね。

挑戦する人は、どんな社会だろうと、どんどん挑戦していますので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

スタンフォードのミッションは、『人々の生活を変え、組織を変え、世界を変える人材を育成すること』。・・・そのミッションを象徴するかのように、スタンフォードのホームページには、「Comfort Zone」(コンフォートゾーン)という言葉が多く出てくる。・・・コンフォートゾーンとは、自分が楽だと感じる領域のこと。例えば、生まれてからずっと同じ町に住んで、同じ友人とだけつきあっている人。例えば、上司から言われるままに、同じ仕事をし続けている人。こういう人たちはコンフォートゾーンの中にいる人。しかし、それでは、組織に変革をもたらせない。そこから飛び出す勇気を持つ人がスタンフォードでは評価されるのだ。」(50~51頁)

決してスタンフォード大学に限りません。

この日本の社会においても、あえてコンフォートゾーンを飛び出す勇気を持っている人を高く評価すると思います。

少なくとも私は、このような一歩踏み出す勇気を持った人を心から尊敬しますし、応援したくなります。

安定的な「楽」を求めるのではなく、刺激的な「楽しさ」を求める人のほうが、人間的な魅力を感じます。

自分がこれまで経験したことのない領域に踏み込んでみる。

考えただけでもわくわくしますね。

私も、次の領域に入れるようにがんばろうと思います。

不当労働行為88(パナソニックプラズマディスプレイほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←栗坊グッズシリーズの最新作ができました。

乳白色のクリアファイルです。緑色、透明に続き、第3弾です。

現在、他のシリーズも制作中です。

さて、今日は、組合員の施設内における文書の配布方法変更等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

パナソニックプラズマディスプレイほか1社事件(中労委平成25年12月18日・労判1084号92頁)

【事案の概要】

X組合はY社に対し、A組合員にリペア作業を命じたことが人権侵害である等と主張した。

これに対し、Y社は、Aの問題は司法の場で解決したい等と主張した。

また、X組合は、Y社の親会社であるZ社に対しても、A組合員に対する人権侵害行為等を議題とする団交を申し入れたが、X社は団交には応じなかった。

【労働委員会の判断】

団交拒否は不当労働行為に当たらない

親会社は労組法上の使用者に当たらない

【命令のポイント】

1 Y社としては、A組合員に対する人権侵害行為の問題については話し合いが既に行き詰まっているので、組合の団交申入れに直ちに応じることはできないとしつつ、新たに話し合う必要性が認められれば応じる可能性は必ずしも否定しないとの態度を取ったものといえる。当時、継続的に団交が開催されていたわけではなく、約1年2か月間にわたり団交が途切れた後に、前回団交で話し合いが実質的に行き詰まっていた議題について再び行われた団交申入れであったことからすればY社が、団交応諾の可否を決めるに当たり、組合に交渉再開の必要性につき説明を求めたのは首肯しうる対応であったと考えられる。
以上からすれば、先行事件の団交申入れまでの間に、上記の議題に関する本件団交申入れに、Y社が応じなかったのもやむを得ないところであり、これを正当な理由なく本件団交申入れを拒否したものであったということはできない。

2 Z社は、Y社の親会社であることから、資本関係、人的関係及び取引関係に基づき、会社に対し、一定の影響力を有していたと推認される。しかしながら、Y社には、プラズマディスプレイの製造等、独自の事業活動を行っていた企業としての実体があり、A組合員が雇用契約を締結したのもY社であったことからすれば、A組合員の賃金、労働時間、休日等の就労の諸条件について管理していたのはY社であったと考えられる。
また、本件団体交渉の対象事項との関係についても、A組合員に対し、他の社員とは異なる場所において一人でリペア作業に従事するよう指示したり、雇止めにすることを告知したのはY社であり、パナソニックがこの決定に関与していたことをうかがわせる事実はない
以上のとおり、Z社は、Y社に対し、親会社として一定の支配力は有していたものの、組合が各主張するところを検討しても、Z社が、A組合員の基本的な労働条件等につき雇用主と同視できるほどに現実的かつ具体的な支配力があったことを推認することはできない

団交拒否にあたらない理由に客観的合理性が見出せれば、本件のように不当労働行為に該当しません。

また、本件は親会社に対しても団体交渉を求めているケースですが、「雇用主と同視できるほどに現実的かつ具体的な支配力があった」という要件をクリアしなければなりませんので、ハードルは高いです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介317 ワン・シング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
ワン・シング 一点集中がもたらす驚きの効果

サブタイトルは、「一点集中がもたらす驚きの効果」です。

二兎を追う者は一兎をも得ずということをいろんな例をあげながら説いています。

成功したければ、一点に的を絞れ!ということです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・そして成功の最も重要な条件、素晴らしい秘訣がここにあります。-エネルギー、思考、そして資本を従事しているビジネスに集中させるのです。ある仕事を始めたらそれをとことんやり抜き、そこでトップに立ち、あらゆる改善を取り入れ、最高の機械を備え、その機械については誰よりも熟知するのです。
失敗するのは資本をばらまいてきた、つまりはとことん突き詰めて考えることを放棄した企業です。彼らはあれやこれや、あちらこちら、いたるところに投資してしまう。『多角経営』というと聞こえはいいが、どれ一つとして精通できない。これでは失敗することは目に見えています。ビジネスで成功したければ一つに賭けて、そこにすべてのエネルギーを注ぎ、細心の注意を払うべきです。」(108頁)

「今は、多角経営の時代だ」と仰る経営者の方もいれば、この本の内容と同じことを仰る経営者もいます。

実際には、どちらの選択をした経営者も、うまく行っている方もいればそうでない方もいる。

だから、どちらが正しいということはなかなか言い切れない。結局は、やり方の問題である、というのが現時点での個人的な意見です。

ただ、この本に書かれていることは、非常に説得力があり、素直に理解できる内容でした。

実のところ、人間、あれもこれも手を出す方が、1つことだけをやり続けるよりも楽なのだというのが私の考えです。

好奇心に任せて、いろんな分野に手を出すというのは、それ自体、楽しいことですし、会社を拡大しているような感覚を覚えやすいのではないでしょうか。

それに対して、1つの事業を脇目も振らずやり続けるというのは、相当な覚悟が必要ではないでしょうか。

「いろんなおいしい話が舞い込んでくるが、今やっているこの事業をやり切る」と決める。

そんな覚悟を持った経営者にお会いすると、本当に感動します。

労働者性10(東陽ガス事件)

おはようございます。 

さて、今日は、LPガスボンベ配送・保安点検業務従事者の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

東陽ガス事件(東京地裁平成25年10月24日・労判1084号5頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対して、(1)主位的請求として、雇用契約に基づく賃金(月例22万円)が未払であるとして、その支払いを求め、(2)予備的請求として、①Y社がXらの賃金から差し引いた貸付金部分についてかかる差引きを行うことは労働基準法27条に反するなどとして不当利得金の返還を求めるとともに、Y社を退職したXらの未収金債務について労基法27条に反する無効なものであるなどとして債務の不存在確認を求め、②Y社がXらとY社間の契約の性質を曖昧にしたままXらの労基法上の保護を形骸化してきたなどとして、不法行為に基づいて損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

主位的請求は棄却

予備的請求については、一部認容(不当利得金の返還、債務不存在を認容)

【判例のポイント】

1 Xらは、いずれもY社との間で「雇用契約書」を作成して本件契約を締結していることに加えて、Y社は、配送員を募集する際、配送員が社員として雇用される旨の表示を行っていること、Xらには、毎月「給与明細書」が交付され、本件契約の対価からは、社会保険料や税金が源泉徴収されており、本件契約が「雇用契約」であることを前提とした扱いがなされてきたといえる。・・・らとの契約関係が雇用契約であるとして、貨物自動車運送事業法の特定貨物自動車運送事業者として同法の許可を得て、事業を継続する利益を得てきたY社が、本件において、Xらとの契約が「雇用契約」でないと主張することは、背理であるといわざるを得ない。

2 労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者であり(労働契約法2条1項、労基法9条)、労働者性の有無は使用従属性の有無によって判断される。使用従属性の判断にあたっては、①指揮監督下の労働といえるか否かについて、仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無、代替性の有無等に照らして判断され、②報酬の労務対償性について、報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価といえる場合には、使用従属性を補強するものとされ、①、②の観点のみでは判断できない場合に、③事業者性の有無(機械・器具の負担関係、報酬の額、損害に対する責任等)、専属性の程度等が勘案される

3 Y社は、Xらに対し、業務用携帯端末でLPガスボンベの配送先と配送本数を配信し、配送費売上げの中から、車両代、燃料代、車両修理費等の車両経費及び月額3万9000円の管理費を差し引き、これが22万円を超えるときはその超過額を「歩合給」として上乗せして支払う一方、22万円に達しないときは、その不足額については、翌月以降の配送費売上げから差し引いている
そもそも、労基法27条は、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と規定し、同条に違反した場合は、罰則規定が設けられている(労基法120条1項1号)。
労基法27条の趣旨は、出来高払など仕事の量に賃金を対応させる労働形態は、仕事の単位量に対する賃金率を不当に低く定めることにより労働者を過酷な重労働に追いやったり、一定量の仕事がなされなければ仕事の全部を未完成とみなして全く賃金を払わないなどの弊害があることを踏まえ、賃金を労働時間ではなく完遂した仕事の量や成果によって支払う出来高払等の雇用契約について、労働時間を単位として算定した賃金の一定額を、使用者に最低保障給として定めさせるものである。そして、労基法27条では「労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」とされていることから、同条で使用者が定めるべき保障給とは、時間給である。

4 ・・・したがって、車両経費など本来使用者が負担すべき費用を労働者であるXらの負担とした上で、月額3万9000円の管理費をさらに負担させ、Xらの配送費売上げが22万円及び当月経費の合計額に満たない場合はその差額を労働者であるXらの負担として債務に計上することは、労基法27条の趣旨に反するものであって、本件契約もこの限度では公序良俗に反するものとして無効といわなければならない。

労基法上の労働者性に関するオーソドックスな裁判例です。

また、それとは別に、労基法27条の適用が争点となっている珍しい事案です。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介316 「権力」を握る人の法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 あっという間に一週間が過ぎていきますね。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←先日、上石町の「五月庵」にお昼ごはんを食べに行ってきました。

部活帰りではありません(笑)

ごはんとみそ汁を注文し、あとは自分で食べたいおかずをケースから自由に取ると、こうなってしまいます。 おいしゅうございました。

今日は、午前中は、新規相談が3件入っています。

午後は、新規相談が1件、修習生の事務所訪問が入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

著者は、スタンフォード大学ビジネススクール教授です。

まず、切り口が非常に興味深いです。

「権力」と聞くと、それだけで反発心を抱く方もいると思いますが、読み物としてはとてもおもしろい本です。

出世街道に乗るためにはどうしたらいいか、権力を印象づけるふるまいと話し方など、ちょっと興味をそそられませんか(笑)?

ビジネススクールの教授が真面目に、どうやったら「権力」を握ることができるのか、をたくさんの例を交えながら、説明しています。

非常に参考になる、いい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

社会心理学者のディーン・キース・サイモントは、さまざまな分野で天才と呼ばれる人々が成し遂げた業績を四半世紀にわたって調べた結果、大事なのは『準備期間に労力を注ぎ込むこと』だという結論に達した。『個人の業績の差は結局のところ、知識とスキルの習得に直接費やした時間数でおおむね説明がつく。(中略)研究者の中には、生まれながらの才能や天分という概念は幻想だと主張する人さえいる』。天才が幻想かどうかはともかく、長時間がんばり続けるエネルギーがあれば、目標に人より早く近づけることはまちがいない。」(71頁)

「そりゃ、そうだ」という感想です(笑)

でも、四半世紀にわたって調査した結果、出した結論が「長時間がんばり続けることが、成功への近道だ!」と言われると、それはそれで説得力が出ますね。

多くの人は、お金儲けでもダイエットでも、なんでも楽して目標を達成したいと考えがちです。

そんなに働きたくない、けど、お金はほしい。

そんなに運動はしたくない、けど、痩せたい。

気持ちはよくわかります(笑)

でも、やっぱり、努力が必要なんですって。

結局、いつもブログに書いているように、努力自体をいかに楽しむか、その方法を知っている人は、目標を達成するプロセスを楽しめる人なので、何をやってもたいていうまくいってしまうのではないでしょうか。

「努力を楽しもう!」

解雇137(イーハート事件)

おはようございます。 

さて、今日は、パチスロ店アソシエイトの解雇の有効性と反訴損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

イーハート事件(東京地裁平成25年4月24日・労判1084号84頁)

【事案の概要】

Y社は、Xに対し、Xが平成22年6月頃、本件店舗の高設定台の情報を顧客に漏えいしたことを理由に、同年7月16日付で懲戒解雇した。

Xは、本件情報漏洩をしておらず、本件懲戒解雇が無効であると主張し地位確認等を求め、合わせて時間外手当の支払いを求めて本訴を提起し、他方、Y社は、Xが本件情報漏洩をしたことを前提に、これによってY社が損害を被ったと主張し、不法行為に基づく損害賠償を求めて反訴を提起した事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

Y社に対し、慰謝料100万円、未払残業代約150万円及び同額の付加金の支払いを命じた

反訴請求はいずれも棄却

【判例のポイント】

1 Xの聴取は、本社地下会議室で、C及びD2名によって行われた。同月4日は、午後7時頃から午後11時頃まで、翌5日は午前11時頃から午後7時ころまで行われ、Xは、翌5日の午後、本件上申書等を作成するに至った。C及びDのXに対する調査は、C自身、約90%、100%、Xが本件情報漏洩を行ったと考えていたと証言しており、他の可能性や、共犯の可能性について、十分吟味した調査であったとは認められない
Xは、上記2日間の長時間にわたる、またXが本件情報漏洩を行ったものであるとの前提にたった聴取の中で、本件上申書等の作成に至ったものとうかがわれる
そして、Y社は、同日より後、Xに対する更なる聴取や本件上申書等の裏付け調査等を行うことなく、同月16日、本件懲戒解雇の意思表示をした。 

2 本件上申書等は、裏付けがないことや、記載内容、作成経緯等に照らし、信用することができない。そして、Y社は、本件上申書等の作成以外に、X及び外の従業員に対する更なる聴取調査等の調査を尽くしておらず、本件全証拠によっても、Xが本件情報漏洩を行ったと認めるに足りない。Y社は、本件情報漏洩以外にも懲戒事由に該当する事実を主張しているが、これらの事実を前提としても、これらの行為の性質、態様等に照らし、懲戒解雇とすることは重きに失するといわざるを得ず、結局、本件懲戒解雇は無効というべきである。

3 Y社の本件懲戒解雇に対する調査は、本件上申書等を作成させた以外に、Xに対する更なる調査を行うことなく、十分な裏付けも行っていないというもので、かかる調査状況に鑑みれば、本件懲戒解雇は不法行為の違法性を帯びるというべきである。Xは、本件懲戒解雇によって突然に職を奪われ、その後の安定した生活の途を絶たれ、多大な精神的苦痛も被ったものと認められる。以上を総合考慮すると、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料100万円を認めることが相当である。

懲戒解雇に限らず、例えば、セクハラ・パワハラ等でもそうですが、一方当事者が事実を否認する場合は、特に慎重に調査をする必要があります。

「こいつがやったに違いない!」という決め付けは、取り除かなければなりません。

先入観を持たず、公平な立場から調査をし、「裏付け」をとる必要があることがよくわかりますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。