解雇145(社会保険労務士法人パートナーズほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、能力不足を理由とする試用期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

社会保険労務士法人パートナーズほか事件(福岡地裁平成25年9月19日・労判1086号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していたXが、試用期間途中のY社による平成24年4月3日付け解雇は無効であるなどとして、Y社に対しては、本件解雇からY社の解散(平成24年9月1日)までの間の平成24年5月分から同年8月分の給与を請求するとともに、Y社解散後に実質的に同法人を引き継いだZに対し、雇用契約上の地位の確認及び平成24年5月分から本判決確定の日までの給与を請求し、また、Y社らに対し、本件解雇が不法行為に当たるとして連帯して慰謝料及び弁護士費用の合計140万円の支払を求めたものである。

本件においては、Zは、本件解雇(留保解約権行使)の有効性のみを争い、XとY社との関係で、本件解雇が無効となった場合に、ZがY社と同様の労働契約関係及び給与債務(Y社解散前の分の連帯債務)を負うことについては争いがない

【裁判所の判断】

解雇は無効

Y社らは、連帯して、平成24年5月から同年8月までの給与を支払え

Zは、平成24年9月から本判決確定の日まで、給与を支払え

その余の請求は放棄

【判例のポイント】

1 ・・・これらの事情からすると、Zは、XをY社に採用する時点で、Xは社労士として実績のない初心者であり、無償の手伝いでも良いから経験を積みたいと申し出ている者であって、Y社を出て行くDと同レベルでないことを十分認識していたと認めるのが相当である。

2 Y社の職員であったHは陳述書において、Xは社労士試験レベルの基礎知識も欠落しているのではないと感じた等と述べており、Xの能力が明らかに劣っているかのように記載する。しかしながら、Hについては、Y社が証人尋問を申請していたが尋問期日に出頭せず、後に申請が撤回された経緯があり、すでに述べた内容を超えては採用しがたい

3 以上によれば、本件解雇は、Y社における試用期間の趣旨目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されるものとはいえず、無効であり、地位の確認及び給与の請求部分には理由がある。

4 もっとも、慰謝料及び弁護士費用の請求については、社労士の業務が法律上の資格に基づくものであって一定の能力が要求されること、Y社の規模、Xが本件申請手続前に事前確認を怠っていること、Xについてはコミュニケーション不足の面が窺われること、Z自身の本件解雇に関する認識を考慮すると、本件解雇が不法行為を構成するとは言いがたく、理由がない。

Y社とZの同一性が争点になると思いきや、そこは争っていないようです。

全体的に解雇の正当性の立証が不十分であるようです。

試用期間中であるとはいえ、留保解約権も解雇ですから、そう簡単にはできません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。