労働者性18(アド装飾事件)

おはようございます。

今日は、外注事業者の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

アド装飾事件(東京地裁平成28年3月31日・労判ジャーナル55号37頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の外注事業者の立場でインテリアコーディネーターとして稼働したXが、Y社に対し、①Xが労働契約上及び労働基準法が適用される労働者であり、X・Y社間の契約関係が労働契約である旨主張して、地位確認を求め、②時間外労働等をした旨主張して、賃金請求権に基づき当該賃金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

労働者性を肯定

未払賃金等支払請求(90万3523円)を一部認容

付加金として50万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 Xは、Y社から依頼される仕事を専属的に行う中で、Y社により、各営業日における勤務場所、出張先等を事前に指定され、Y社から社用のメールアドレスを付与されるなど、会社の業務の遂行上、不可欠な存在として事業組織に組み込まれ、時間的、場所的拘束がある態様を受ける中で、一般的な指揮監督を受けて業務を行っており、事実上、Y社からの仕事の依頼を拒否することができない立場にあったと認められ、さらに、Xの報酬は、事務所勤務日及び販売会勤務日を問わず、日当で支払われており、これらの事実関係を前提とすると、Xは、Y社との関係で、使用者の指揮監督下において労務の提供をする者で、労務に対する対償を支払われる者であるとの要件を充足し、労働契約法及び労働基準法が適用される労働者であったと評価するのが相当である。

2 平成24年6月17日から同年12月13日までの間のメール等の証拠がない労働日におけるXの始業時刻を午前9時30分、終業時刻を午後8時と認めるのが相当であり、平成23年5月1日から平成24年6月16日までの間のメール等の証拠がない労働日については、Xの始業時刻は午前9時30分と認定し、終業時刻は、Y社従業員の所定終業時刻である午後5時30分と認めるのが相当であり、午後8時以降に、Y社から付与されたメールアドレスを用いて、メールを送信した労働日は、当該送信時刻に10分を加えた時刻を終業時刻と認めるのが相当であり、Suicaカード利用履歴がある労働日は、外出先の最寄り駅の入場時刻から当該外出先からの所要時間を引いた時刻を終業時刻と認めるのが相当である。

労働時間に算定方法については、担当裁判官によりどこまで緩やかに解するかが異なるところですが、

今回の裁判官は、上記判例のポイント2のように緩やかに判断してくれています。

使用者側が労働時間を管理する義務を負っており、十分な管理がなされていない場合には、労働者側の立証責任を緩やかに解するという判断です。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。