おはようございます。
今日は、安全教育を徹底していた等の理由により、会社に安全配慮義務違反が認められないとした裁判例を見てみましょう。
アイシン機工事件(名古屋高裁平成27年11月13日・労経速2289号3頁)
【事案の概要】
本件は、A社に派遣作業員として雇用され、Y社の工場に派遣されていたXが、同工場での作業中に右環指切断の傷害を負ったとして、A社及びY社に対し、不法行為に基づく損害賠償として、879万6077円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
原審が、XのA社に対する請求を棄却し、Y社に対する請求につき、136万円+遅延損害金の限度で認容し、その余を棄却したところ、X及びY社が控訴した。
【裁判所の判断】
Xの控訴を棄却する
Y社の控訴により、Y社敗訴部分を取り消す。
→Xの請求を棄却する
【判例のポイント】
1 Y社においては、派遣社員の受入れ時に、ポルトガル語を併記した本件テキストを用いて安全教育を実施しており、異常が生じた際には、機械を止め、上司を呼び、上司を待つことを指導するほか、動いているものや動こうとするものには手を出してはならないことなどを「安全三訓」として強調し、その後、これらの点に関する理解度を測るテストを実施し、作業ラインに配属された後も、毎日の作業開始時に「安全三訓」を唱和させて、これを徹底していたことが認められる。
2 本件事故後の調査の過程で、「ポルトガル語を話せる監督者がいないため、身振り手振りの伝達では、100%思いが伝わっていない」ことが問題とされたことが認められるものの、安全三訓の内容は平易なものであり、受入れ時の安全教育において、ポルトガル語でも周知され、安全教育内容の理解度テストにおいても、Xが理解していたことに照らすと、上記の問題提起は、意思疎通の充実によって、日常的に生ずる種々の問題点の解消を図るべきことを提示したにとどまり、Xに安全教育の内容が伝わっていないことを問題視したものとは解されない。
そうすると、Y社が、機械操作時に機械内部に手を入れないよう指示指導する義務や、チョコ停が生じた場合に上司を呼ぶよう指示指導する義務を怠ったとはいえない。
裁判所が日頃の安全教育を評価した結果ですね。
他社においても非常に参考になる裁判例です。
日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。