Daily Archives: 2016年11月14日

賃金118(愛永事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、違約金として一方的に控除された減額賃金分支払等請求に関する裁判例を見てみましょう。

愛永事件(横浜地裁平成28年7月15日・労判ジャーナル55号7頁)

【事案の概要】

本件は、平成25年8月から平成26年3月末日までY社に雇用され、軽貨物運送の運転手として勤務し、Y者の元運転手であり同年4月1日からAの名称で軽貨物運送事業を行う個人事業主でありY社から軽貨物運送業務を請け負っていたBに同日から雇用され、同年9月まで雇用されていた元従業員Xが、Y社及びBに対し、それぞれ未払賃金等の支払並びに慰謝料の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し6万円を支払え

慰謝料として10万円を認容

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの賃金から業務中の誤配送等に対する違約金を控除して支払っているところ、賃金は、原則としてその全額を支払わなければならず(労働基準法24条1項)、本件では、法令に別段の定めがあるとも、過半数労働組合(それがない場合は過半数代表者)との書面による協定があるとも認められず、例外的に一部控除が認められる場合にもあたらないから、使用者であるY社が、労働者であるXの債務不履行ないし不法行為に基づく損賠賠償請求権を自働債権、Xの賃金債権を受働債権として一方的に相殺することは許されず、また、一方的な相殺ではなく、元従業員の同意を得てした相殺であることを認めるに足る証拠もなく、Y社がXの賃金から違約金を控除して支払うことは許されないから、Y社にはXに対し6万円の賃金の未払があると認められる。

2 Y社の代表取締役であるZ及びBの個人事業者であるCはXに対し、車両事故の損害額のうち30万円を一括払いするように命令し、Xが「それでは生活ができないので分割払いにしてください」と懇願したにもかかわらず、一切耳を傾けず、「一括払いでなければ駄目だ。親、友人から金を借りてきてでも支払え」とさらに強く迫り、さらに、Xの債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権、Xの賃金債権を受働債権として一方的に相殺しているから、Xはこれにより精神的苦痛を被ったと認められ、・・・慰謝料の額は10万円を認めるのが相当である。

上記判例のポイント1で賃金全額払いの原則について再確認しましょう。

それにしても労働事件における慰謝料の金額の低さが目立ちますね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。