Daily Archives: 2016年11月25日

賃金120(岩手県市町村総合事務組合事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、酒気帯び運転等を理由とする退職手当支給制限処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

岩手県市町村総合事務組合事件(盛岡地裁平成28年6月10日・労判ジャーナル55号28頁)

【事案の概要】

本件は、岩手県奥州市の元職員Xが、Y社が酒気帯び運転等を理由に行った一般の退職手当等の全部を支給しない旨の退職手当支給制限処分は、裁量権の濫用により違法であるなどと主張して、本件処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件非違行為(前日にグラス3杯(役450cc)の焼酎をロックで飲み、飲酒を終了してから13時間30分以上経過した時点で運転を開始した行為)は、休日に元職員が一人で自家用車を使用したものであり、職務と関連するものではなく、これによって交通事故を起こした経緯はなく、Xは、本件非違行為について、直ちに奥州市総務課長に報告し、奥州市長に顛末書や退職願を提出するなどして、一貫して謝罪と反省の態度を示しており、本件非違行為後、自宅謹慎を経て本件懲戒免職処分により退職するまでの経緯において、奥州市の指示等に従わず職場に混乱を生じさせたなどの事情は窺えず、また、Xは、奥州市の職員として、長年にわたり、市政に、その勤務期間に相応する貢献をしてきたということができること等から、本件非違行為は、元職員の過去の功績が全て否定されるほど重大なものとはいえず、退職手当の賃金の後払い的な性格や生活保障的な性格を考慮してもなお、退職手当を受ける権利の全部を否定するに値するものであったとまでは認められないから、本件処分は、違法なものとして、取消しを免れない。

非違行為の程度が重くないことは上記事情からは明らかです。

退職金の不支給もしくは大幅な減額をする場合には、顧問弁護士に判断の妥当性について意見を求めるのが賢明です。