不動産会社の顧問弁護士は、弁護士法人栗田勇法律事務所にお任せください!取り扱っている案件数が違います!!

不動産に関する紛争予防から紛争処理まであらゆる不動産トラブルに対応いたします。

弁護士法人栗田勇法律事務所の特徴の1つとして、企業法務のほかに、不動産関係の案件を多く取り扱っている点があげられます。

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そのため、毎日のように、賃貸借契約書のリーガルチェック、未払家賃の回収交渉、建物明渡請求訴訟といった賃貸案件、境界や近隣トラブルの対応、建築紛争、不動産売買におけるトラブル等、あらゆる不動産トラブルに対応するため、自然と取扱案件は多くなります。

不動産に関するトラブルでお悩みの方は、是非、弁護士法人栗田勇法律事務所にご相談ください。

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弁護士法人栗田勇法律事務所の顧問契約の内容や特徴については、「顧問弁護士」のページをご覧ください。

不動産管理をやられていますと、日常的にさまざまなトラブルが発生しますよね。

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東京地裁令和元年6月11日判決から読み解く!買主都合による決済期限の延長と融資解除特約の効力
民法改正による不動産売買契約の実務上の変更点と注意点
令和元年11月20日東京地裁判決から読み解く!建築基準法違反と媒介業者の調査説明義務
令和元年11月26日東京地裁判決から読み解く!サブリース契約における借地借家法28条適用の可否と実務上の留意点
東京地裁平成29年7月20日判決から読み解く!隣室騒音に対する貸主の管理責任と実務上の留意点
令和時代のマンション管理と顧問弁護士活用法
貸家の老朽化に伴う立退き・建替えの上手な対処法

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周知のとおり、適切にマンション管理を行うためには、民法、区分所有法、管理規約のほかに裁判例についても十分に理解しておく必要があることに加え、区分所有の性質上、利害関係者が複数存在することから、極めて高度の専門性・バランス感覚が要求されます。

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所有者の所在の把握が難しい土地(所有者不明土地)の対応にお困りの皆様及び土地家屋調査士の先生方へ

不動産売買(特に共有不動産の買受け等)や筆界確認業務(特に筆界の確認のための立会い)において所有者不明土地(*1,2)への対応にお困りの際は弁護士法人栗田勇法律事務所にご相談ください。

(*1)国土交通省の所有者不明土地問題に関する最近の取組みについてはこちらをご覧ください
(*2)「所有不明土地」とは、広義には登記簿からは所有者の氏名や所在が直ちに判明しない土地を指すことがあるが、法における所有者不明土地は、相当な努力が払われたと認められる方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地とされています。
 なお、「相当な努力が払われたと認められる」探索の方法については、土地の所有者を確知するために必要な方法(土地所有確知必要情報)を取得するため、①土地の登記事項証明書の交付の請求、②土地所有者確知必要情報を保有すると思料される者に対する土地所有者確知必要情報の提供の請求、③土地の所有者と思料される者が記録されている書類を備えると思料される市町村の長又は登記所の登記官に対する土地所有者確知必要情報の提供の請求、④土地の所有者と思料される者に対する所有者を特定するための書面の送付等をとることを指します。
 この点、「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン~所有者不明土地探索・利活用ガイドライン~(第3版)」が参考になります。

ご承知のとおり、所在不明者等の探索には多大な労力と時間を要します

そこで、弁護士法人栗田勇法律事務所が、所在不明者等の探索・調査を行うとともに、その結果次第で、不在者財産管理人や相続財産管理人の選任申立てまで行います。

【補足】「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」に基づく登記官に対する所有者探索に必要な調査権限の付与(令和元年12月22日施行)について

「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」により、登記官に所有者の探索に必要な調査権限が付与されるとともに(各種台帳情報の提供の求め等)、所有者等探索委員制度(必要な知識・経験を有する者から任命される委員に、必要な調査を行わせ、登記官の調査を補充する制度)が創設されました。

しかしながら、「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律第3条第1項に基づく所有者等の探索の対象地域の選定基準について」(通達)によれば、優先度判定の基準は、

①地震等の自然災害等により大きな被害を受けたため、早急に復旧・復興作業等を行う必要がある地域であること
②今後、地震等の自然災害等により大きな被害を受ける可能性が高く、早急に防災・減災対策等を講じる必要がある地域であること
③地方公共団体においてまちづくりや森林の整備などの土地利用や土地の調査に関する計画を策定している地域であること
④地域コミュニティが衰退し、地域の実情を知る者が乏しくなるため、早期に所有者等の探索を行う必要がある地域であること

とされており、①から④の順に優先度が高いものとして対象地域を選定するとされており、これらの地域に該当しない場合には、当面、当該制度による所有者の探索は期待できません

不在者財産管理制度の概要

不在者財産管理制度は、家庭裁判所の一般的監督の下で行方不明者の財産を管理する制度です。不在者財産管理人は、利害関係人(*3)や検察官の申立て(*4)に基づき家庭裁判所(*5)により選任され、家庭裁判所の監督の下で不在者の財産の管理及び保存を行います。

(*3)利害関係人とは、不在者の財産管理について、法律上の利害関係を有する者をいいます。具体的には、不在者とともに共同相続人にあたる者、不在者の債権者・債務者、不在者が担保提供している場合の担保権者、境界確定を求める隣地所有者のほか、公共事業等のために土地を取得しようとする国・地方公共団体等が該当するものと解釈されています。
(*4)「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」により、所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度が創設されました(平成30年11月15日施行)。
(*5)不在者の従来の住所地又は居所地が不明のときは、財産の所在地の家庭裁判所又は東京家庭裁判所が管轄裁判所となります。

不在者財産管理人選任申立ての必要書類は以下のとおりです。
①不在者財産管理人選任申立書
②不在者の戸籍謄本(全部事項証明書・不在者の戸籍附票)
③財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
④不在の事実を証する資料(不在者の捜索願受理証明書、返戻された不在者宛ての手紙、親族等の陳述書、現地調査の報告書等)
⑤不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金口座の通帳、有価証券の残高証明書、保険証書、車両の車検証等)
⑥申立人の利害関係を証する資料(共同相続人であれば戸籍謄本、債権者、債務者等であれば金銭消費貸借契約書写し等)

この制度で対象となる行方不明者は、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)とされ、例えば長期の家出人や音信不通となった者で、親戚、友人等に照会して行方を捜したものの、その所在が判明しない者などが挙げられます。

不在者は、必ずしも生死不明であることを要しませんが、生死不明であっても死亡が証明されるか失踪宣告の審判が確定するまでは、不在者に当たると解釈されています。

なお、所有者が不在者であっても、親権者などの法定代理人や不在者が置いた財産管理人がいる場合には不在者財産管理制度は利用できません。

不在者財産管理人選任の申立てには、収入印紙(800円分)と連絡用の郵便切手に係る費用が必要です。

また、不在者財産管理人の報酬を含む管理費用は不在者の財産から支払われますが、財産から支払うことを期待することができない場合には家庭裁判所に予納金を納付する必要があります。

相続財産管理制度の概要

相続財産管理人制度は、土地所有者等が既に死亡し、その者に相続人のあることが明らかでない場合に、家庭裁判所が利害関係人(*1)や検察官の申立て(*2)により相続財産管理人を選任し、家庭裁判所の一般的監督の下で、相続財産管理人をして、相続財産を管理・清算させるとともに、出現する可能性のある相続人を捜索し、最終的には国庫に帰属させる制度です。

(*1)利害関係人とは、相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者をいいます。具体的には、特別縁故者、相続債権者・相続債務者、担保権者、事務管理者、受遺者、時効取得者、共有持分権利者、国・地方公共団体などが該当するものと解釈されています。
(*2)「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」により、所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度が創設されました(平成30年11月15日施行)。

この制度を適用することができるのは「相続人のあることが明らかでないとき」、すなわち相続人の存否が不明な場合であり、戸籍上相続人が一人でも存在する場合は該当しません。

また、相続人が行方不明、生死不明の場合にもこの制度は適用されず、その場合には、前記の不在者財産管理制度又は失踪宣告の活用を検討することになります。

なお、相続人全員が相続放棄をした結果、相続する者がいなくなった場合は、相続財産管理制度が適用されます。

相続財産管理人選任の申立てには、収入印紙(800円分)と連絡用の郵便切手に係る費用が必要です。

また、相続財産管理人の報酬を含む管理費用は相続財産から支払われますが、財産から支払うことを期待することができない場合には、家庭裁判所に予納金を納付する必要があります。

財産管理に関する新制度

令和3年4月21日(*1)、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化を図るため、改正民法の成立及び相続土地国庫帰属法の制定が行われ、相続登記や住所変更登記の申請の義務化・手続きの簡素化・合理化、相続土地の国庫帰属に関する仕組みの整備、財産管理制度・共有制度・相続制度・相隣関係制度規定の見直し等が行われました。
(*1)当該内容については、同月28日に公布されました。施行日については「公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされています。

現行法では不在財産管理制度では、土地だけではなく、不在者の財産全般を管理する必要があるのに対し、改正民法では、土地の所有者が不特定又は所在不明である場合に、個々の土地の管理に特化した新たな財産管理制度として、所有者不明土地管理制度が創設されました(*2)。
(*2)建物所有者が不特定又は所在不明である場合も、土地と同様に問題になることから、別途、所有者不明建物管理制度が創設されています。

所有者不明土地管理人は、不在者財産管理人同様、土地の保存行為等を行う基本的な権限のほか、裁判所(*3)の許可を得れば売却等の処分も可能です。また、所有者が土地上に有する動産についても、管理人が管理することになります。
(*3)管轄裁判所は土地の所有地を管轄する地方裁判所です。

共有地の共有者の一部が不明になっている場合には、その共有持分について管理人が選任され、複数の共有者が不明である場合には、不明共有持分の全体について管理人が選任されることになります。

これに加え、所有者による土地の管理が不適当であることによって、他人の権利・利益が侵害される又は侵害されるおそれがある場合に、管理人の専任を可能とする管理不全土地管理制度が創設されました(*4)。

なお、この制度は、土地所有者の所在が判明している場合も適用対象であるため、前記所有者不明土地管理制度に比べて所有者の利益により配慮した規律(*5)になっています。
(*4)管理不全建物についても、土地と同様に問題になることから、別途、管理不全建物管理制度が創設されています。
(*5)管理人について権限の専属規定はなく、土地の処分が必要であると考えられる場合でも、所有者の同意がなければ裁判所が許可することもできません。また、手続内に、土地所有者に対する陳述聴取の手続や裁判所の許可が必要な行為についての許可の裁判に対する即時抗告規定等が盛り込まれています。

所在等不明共有者の持分の取得・譲渡に関する新制度

令和3年4月21日(*1)、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化を図るため、改正民法の成立及び相続土地国庫帰属法の制定が行われ、相続登記や住所変更登記の申請の義務化・手続きの簡素化・合理化、相続土地の国庫帰属に関する仕組みの整備、財産管理制度・共有制度・相続制度・相隣関係制度規定の見直し等が行われました。
(*1)当該内容については、同月28日に公布されました。施行日については「公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされています。

改正民法は、共有不動産について所在等不明共有者(改正民法262条の2第1項括弧書・262条の3第1項括弧書)がいるときについて、次の2つの制度を設けています。

すなわち、裁判所は、共有者の請求により、
①その共有者に対し、所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができるとする制度(*2)
②その共有者に対し、所在等不明共有者以外の共有者の全員が持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる
とする制度があります。
(*2)所在等不明共有者の持分を含め、全体について共有者分割訴訟によって適切な分割を実現することを希望する共有者がいるときは、当該手続内で適切に分割を実現するべきであるため、①の裁判を求める請求がされた場合において、その持分にかかる不動産について共有物分割訴訟が提起され、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が持分取得の裁判をすることについて異議の届出をしたときは、裁判所は、その裁判をすることができないものとされています(改正民法262条の2第2項)。

所在等不明共有者は、持分取得共有者に対して、時価相当額の支払を請求できます(改正民法262条の2第4項)。裁判所は、基本的に、所在等不明共有者の持分の時価に相当する額を供託すべき額として定め、供託をさせることになります。

なお、請求をした共有者以外の共有者を特定することができない場合は、共有者の総数を特定できないので、土地全体の額を供託額としたり、各共有者の持分は相等しいものと推定されることを前提に、少なくとも、共有者は請求をした共有者と不特定共有者の2人がおり、特定共有者の持分は2分の1であるとして金額を算定することもあり得るとされています。

記名共有地に関する対応策

「記名共有地」とは、登記簿の「共同人名票」が作成されず、表題部の所有者欄に「A外〇名」と氏名と共有者の人数しか記載されていない土地をいいます。

記名共有地の場合、「外〇名」の共有者の調査方法としては、現地を確認するとともに、次の手順で情報を収集します(「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン~所有者不明土地探索・利活用ガイドライン~(第3版)」97頁参照)。

①共同人名票が入手できる場合には、共同人名票(*1)を確認し、共有者を探索します。また、登記記録、閉鎖登記簿、旧土地台帳の調査を行い、最初の名義人から現名義人までの名義人の登記原因を確認します。
(*1)共有者の内訳を記載したもの。ただし、編纂されていない場合もある。登記簿謄本の交付請求をすることにより、取得することができる。
②表題部所有者や共同人名票に記録された共有者の氏名や住所を基に土地所有者の特定を行います。また、記名共有者については、共有者自身、自己の財産という認識がなく、このため当該共有者が死亡後も相続登記の手続などが行われないまま、名義が残っている場合も多いです。このような場合には、当該共有者の相続人の調査を行う必要が高いと考えられます。
③②と並行して相続人、関係者、自治会長等に聞き取りを行い、所有の実態を把握します。
④③の結果、総有(*2)の可能性が高い場合は、市町村役場での聞き取り、市町村が保有する地縁団体台帳、墓地であれば墓地開設当時の使用者名簿、市町村史の確認等により、更に情報を収集します。
(*2)狭義の共有に対し、総有は、持分権を持たない共同所有形態とされ、持分の処分や分割請求ができないとされている。

調査の結果、共有者が判明しなかった場合は、民事訴訟を検討します。

民事訴訟手続を利用する場合には、平成10年3月20日法務省民三第552号民事局第三課長通知が参考になります。

すなわち、表題部の所有者欄に「A外〇名」と記載されている場合において、「A」のみを被告とする所有権確認訴訟に勝訴した者が、当該訴訟の判決書を申請書に添付して、所有権の保存登記の申請をしたときは、以下の4つの要件を満たす場合に限り、便宜上、当該判決書を不登法第100条第1項第2号にいう判決として取り扱っても差し支えないものとされています。

①記名共有地であること ②記名されている者の全員を被告とすること(例えば、「A及びB外10名」とされている場合は、A及びBを被告とする) ③原告の所有権を確認する判決であること ④判決理由中において、表題部所有者の登記にかかわらず、当該土地が原告の所有に属することが「証拠」に基づいて認定されていること(自白判決や欠席判決は除く)←ここが重要!!

実際、記名共有地について、都道府県が、隣接地所有者に時効取得により所有権を取得させ、売買契約により用地取得した事例がありますのでご紹介いたします(用地ジャーナル2011年10月号参照)。

【事案の概要】
登記記録の表題部の所有者欄に「Aら55名」との記載しかない土地であり、かつ閉鎖登記簿に共同人名票も存在しないため、表題部所有者の特定ができず、取得時効を原因とする所有権確認の訴えを提起するなどして、用地取得した事案である。
【対象地の状況】
①隣接地は神社が所有しており、対象地の固定資産税は神社が支払っている。
②対象地を神社の責任役員(総代)が第三者に賃貸しており、その賃料は同神社の銀行口座に入金されている。
【解決手順】
①所有者特定方法の検討
②不在者財産管理人の選任
③所有権確認等請求に係る訴えの提起
④判決確定(提訴から10か月経過)
⑤神社が所有権保存登記後、当該土地の売買契約、借地人と権利消滅補償契約の締結の実施

境界紛争でお困りの方へ

境界紛争と一口に言いましても、具体的な紛争類型は一様ではありません。

そもそも筆界(公法上の境界)に関する争いなのか、所有権界(私法上の境界)に関する争いなのかについてすら当事者間ではほとんど意識されることなく紛争化しているケースも少なくありません。

また、隣地所有者に立会協議に応じてもらえない場合にいかなる対応をすべきかについても唯一の正解があるわけではありません。

そのため、まずは何が問題となっているのかを正確に把握することが初動対応としては最も重要であり、その上で、以下の紛争解決手続のうち、いかなる手続を選択するかを検討することになります。

境界紛争でお困りの方は、まずは弁護士法人栗田勇法律事務所にご相談ください。

手続選択-各種手続の特徴・留意点

第1 筆界特定制度

趣旨:筆界(公法上の境界)を特定する(筆界を形成するのではなく、筆界特定登記官の筆界に対する認識を示すもの)。
機関:法務局
特徴:①当事者が提出した資料以外にも、職権で資料収集等や調査を行ったり、相手方や第三者の土地にも立ち入って調査をすることができる。収集した資料をもとに、専門家である筆界調査委員(土地家屋調査士等)の意見を踏まえた上で、筆界特定登記官が筆界を示す。
②相手方の協力がなくても手続が進められる。
③相手方の協力がなくても地積更正登記や分筆登記ができる。
④一般的に筆界確定訴訟よりも費用負担が少ない。
⑤訴訟よりも早期に判断されることが多い。
留意点:①行政処分ではないことから、筆界特定手続きの結果には確定効がないため、示された筆界について不服があれば筆界確定訴訟を提起することができ、当該訴訟において別の筆界が示されることがあり得る(逆に、筆界確定訴訟において判決が確定している場合、その後に筆界特定手続を行うことはできない。)(*1)。
②職権で資料を取り寄せ、専門家が判断を行うので、個々の弁護士・土地家屋調査士が把握していない、入手できないような資料が取り寄せられて判断されることもある。そのため、想定していなかった筆界を示される可能性が、訴訟よりも高い。
③筆界特定登記官が筆界の認識を示すものであり、この結果だけでは越境物の撤去等はできず境界標を設置することもできないので、当事者間で合意できない場合には、訴訟を提起することが必要となる(*2)。
(*1)とはいえ、筆界特定線は、筆界特定登記官が、広範な資料を収集・検討し、筆界調査委員の測量や鑑定的な意見を徴し、さらに関係当事者が現地において立ち会い、意見書や証拠資料を提出する機会も与えた上でなされた高度に専門的な判断であるから、裁判所がこれを覆すのは相当困難であり、筆界確定訴訟においては、筆界特定と異なる判断がなされることは多くありません(筆界特定に対する裁判所の一般的な評価につき東京地判平成21年6月12日、東京地判平成23年2月22日参照)。
(*2)境界標については、裁判例(東京地判昭和39年3月17日、東京地判平成23年7月15日)上、勝手に設置することができないとされているため、隣地所有者に対し、費用折半で境界標を設置することを請求するほかありません(民法223条、224条)。
具体的には、筆界確定訴訟及び境界標設置請求訴訟を提起することになります。
民法223条「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。」
民法224条「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。」

第2 筆界確定訴訟

趣旨:筆界(公法上の境界)を確定する(筆界を形成する)。
機関:裁判所 ・特徴:①相手方の協力がなくても手続が進められる。
②判決が確定すれば、一方当事者が納得していなくても、その内容に従って登記手続を行える。
③筆界を確定できるのは判決のみである。
留意点:①当事者が提出した資料のみを前提に判断されることが多く、土地家屋調査士等の専門家が関わらないケースもある。
②時間がかかることが多い。
③判決書に添付される図面に不備があると登記ができない場合があるため、事前に登記受理可能(な程度に特定ができている)かどうかを当事者が法務局に相談しておくことが必要である。
筆界については和解で解決することができない。筆界確定訴訟内で和解をする場合は「所有権」に関する和解である(*1,2)。
(*1)時効取得等が主張できる場合などは、所有権確認訴訟+所有権移転登記請求訴訟も予備的に申し立てるのかを検討する必要がある。 実際には、純粋に筆界だけが争点となる訴訟は少なく、同時に原告が所有権確認や妨害排除請求・土地明渡請求等の所有権に関する請求を併合する場合もありますし、越境物がある場合に被告側が抗弁として係争地を時効取得したとし、撤去や明渡しに応じる義務がないと主張することも少なくありません。また、被告側が、時効取得に基づく所有権移転手続請求の反訴を提起することもあります。
(*2)既述のとおり、筆界については和解の対象にはなり得ません。実務においては、筆界特定が先行している場合においては、例えば、「原告と被告は、対象土地を〇〇、関係土地を〇〇とする〇〇地方法務局〇〇年第〇〇号筆界特定の結果を争わない。」という条項を加えたり、筆界特定線を前提として、「原告と被告は、別紙物件目録記載1の土地と同記載2の土地の筆界が、別紙図面の〇と〇を結ぶ直線であることについて共通の認識を有することを相互に確認する。」という条項を入れる等して対応しています。このような記載方法をとれば、原告と被告が、直接、筆界それ自体について和解をしたことにはならないため、許容されています。

第3 所有権確認訴訟+所有権移転登記請求訴訟

趣旨:所有権の範囲(私法上の境界)を確認し、それを登記記録に反映させる。
機関:裁判所
特徴:①相手方の協力がなくても手続が進められる。 ②筆界に関する当方主張が通らない場合でも、所有権確認訴訟+所有権移転登記請求訴訟で勝訴が確定し、その後に必要な手続を踏めば、当該土地部分について、当方単独で、当方名義にすることができる。
留意点:①所有権確認訴訟をしただけでは、相手方の協力がなければ登記はできない。
②所有権確認訴訟+所有権移転登記請求訴訟が確定した場合でも、それだけでは、単独では登記ができない場合がある。そのため、事前に法務局に必要な手続を確認したり、判決書や和解調書に添付する図面について登記が可能かどうかを法務局に事前に相談することが必要である。事案によっては、当該訴訟以外に、紛争対象の土地と隣接する土地についての筆界特定等の手続が必要になる場合もあるなど、必要な手続は様々であり、時間的・経済的コストがかなりかかることもある。
③訴訟の中で、和解をしたり調停に付されるなどして協議を行い解決することもあり得る。

第4 調査士会ADR

趣旨筆界、所有権界の両方が取り扱えるほか、様々な事案(越境物の撤去や境界標設置等)について対応できる。
機関:全国に設置された土地家屋調査士会ADR
特徴:①筆界や所有権界のほか、それらに付随する事項に関しても対象にできるなど、柔軟に対応できる。
②お互いの納得のもとでの合意による解決を目指すため、判決等による解決と比較して、登記等の手続がスムーズである上、解決後に感情的な対立が起きにくい。
③筆界を合意で形成することはできないが、筆界の位置に関する当事者双方の認識が一致したことを確認し、登記に活用することもできる。
④訴訟等と比較して、早期に、低額な費用で解決することができることが多い。
留意点:①土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争以外では利用できない。
②相手方の協力がないと手続を進められない。

土地境界紛争処理のための取得時効-重要参考判例紹介-

第1 隣接地の取得時効と当事者適格

1 最判昭和58年10月18日

【要旨】 隣接する土地の所有者間の境界確定訴訟において、境界の一部に接続する部分につき所有者の時効取得を認められた場合に、境界の確定を求める必要性及びその当事者適格が問題となった事案において、時効取得が認められた土地は、公簿上、以前甲地所有者が所有者と表示されている土地の一部であって、時効取得の成立する部分がいかなる範囲でいずれの土地に属するかは、両土地の境界がどこにあるかが明確にされることにより定まる関係にあり、本件時効取得地の所有権移転登記手続のためにも両土地の境界が明確にされていることが必要であるから、両土地の各所有者にとって、両土地の境界のうち取得時効が認められた部分のほか、それ以外の部分についても、境界の確定をする必要があり、両者は本件境界確定の訴えにつき当事者適格を有する

2 最判昭和59年2月16日

【要旨】 土地を前主より買い受けて所有権を取得したという者が、この土地上に建物等を所有してこれを占有している者に対し、本件係争地の所有権確認、係争地の明渡しを求めるとともに、所有地の境界の確定を求めた事案において、公簿上相隣接する二筆の土地の中間に第三者所有の土地が介在する場合に右二筆の土地の所有名義人間における境界確定の訴えは、当事者適格を欠き不適法として許されない

3 最判平成7年3月7日

【要旨】 公簿上特定の地番により表示される甲乙両地が相隣接する場合に、甲地の境界の全部に隣接する部分を乙地の所有者が時効取得した場合においても、甲乙両地の各所有者は、境界に争いのある隣接土地の所有者同士という関係にあることに変わりはなく、その当事者適格を定めるに当たっては、何人をしてその名において訴訟を追行させ、また何人に対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決すべきであるから、相隣接する土地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、境界確定の訴えの当事者適格を失わない

4 最判平成7年7月18日

【要旨】 甲地の所有者が相隣接する乙地所有者に対し甲乙両地の境界確定の訴えを提起し、乙地所有者が抗弁として甲地の全部を時効取得したことを主張した事案において、境界の確定を求める訴えは、公簿上特定の地番によって表示される甲乙両地が相隣接する場合において、その境界が事実上不明なため争いがあるときに、裁判によって新たにその境界を定めることを求める訴えであって、相隣接する甲乙両地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、その当事者となるのであるから、甲地全部が乙地所有者により時効取得された結果、甲地所有者は甲地全部につき所有権を喪失したというのであるから、甲地所有者は境界確定を求める訴えについての原告適格を失ったというべきであって、右訴えは不適法な訴えとして却下を免れない

5 最判平成11年2月26日

【要旨】 甲地のうち、乙地との境界の全部に接続する部分を乙地所有者Aが、残部分をBがそれぞれ譲り受けた場合において、甲乙両地の境界について争いがあり、これを確定することによって初めてA及びBがそれぞれ取得した土地の範囲の特定が可能になるという事実関係の下においては、A及びBは、甲乙両地の境界確定の訴えの当事者適格を有する

6 最判平成11年11月9日

【要旨】 境界の確定を求める訴えは、隣接する土地の一部又は双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴え、又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解される。したがって、共有者が右の訴えを提起するには、本来、その全員が原告となって訴えを提起すべきものであるということができる。しかし、共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である

第2 時効の効果等

1 最判昭和38年12月13日

【要旨】 他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けて、その時から右立木のみにつき所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間占有した者は、植付の時に遡って時効により右立木の所有権を取得する

2 最判昭和42年7月21日

【要旨】 取得時効は、当該物件を永続して占有するという事実状態を、一定の場合に、権利関係にまで高めようとする制度であるから、権利なくして占有をした者のほか、所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法第162条の適用がある

3 最判昭和45年12月18日

【要旨】 一筆の従前の土地甲地の特定の一部分である乙部分を所有する意思をもって、乙部分に位置する甲地の仮換地の特定の一部分である丙部分の占有を開始し、後に、乙部分が分筆され乙地となり、これに対応して仮換地も分割による変更指定がなされ、丙部分が乙地に対応する仮換地として指定された場合に、仮換地の指定後に、従前の土地を所有する意思をもって当該仮換地の占有を始めた者は、所有の意思をもって、平穏公然に仮換地を占有した期間が、右の分割による変更指定の前後を通じ換地処分の公告の日までに民法第162条所定の要件を満たし、右期間の満了が換地処分の公告前であるときは、時効によって右従前の土地乙地の所有権を取得する

4 最判昭和56年6月4日

【要旨】 一筆の土地または一括された数筆の土地に対応して指定された一区画の仮換地の一部を所有の意思をもって一定期間継続して占有した者は、従前の土地中右占有部分に対応する部分が特定されていないときでも、従前地につき、仮換地に対する右施入に係る土地部分の割合に応じた共有持分権を時効取得する。さらに、右占有部分につき、共有持分権者の一人が現に排他的な使用収益権限を取得している場合と同様の使用収益権限を取得し、占有者が時効取得する所有権ないし共有持分権は、占有を継続している仮換地に対応する従前の土地のそれであるから、仮換地に対応する従前の土地が甲土地であるのに占有者においてこれを乙土地と誤信して占有していた場合でも、時効取得するのは甲土地の所有者ないし共有持分権である。

第3 所有の意思

1 最判昭和35年9月2日

【要旨】 民法第160条は、相続財産の管理人の選任前、相続財産たる土地を、所有の意思をもって、平穏、公然、善意無過失で10年間占有した場合にもその適用があると解すべきであり、相続財産管理人の選任前に時効期間が満了した場合にも民法第160条が適用されて、時効の完成が選任後6か月猶予される。

2 最判昭和41年10月7日

【要旨】 15歳くらいに達した者は、特段の事情のない限り、不動産について、所有権の取得時効の要件である所有の意思を伴う占有をすることができる。

3 最判昭和43年12月17日

【要旨】 過去に土地の賃料を支払ったことがあり、また、右土地の売却を申し入れて拒絶され、延滞賃料の支払催告を受けたことがある場合に、右売却申入の時点までは所有の意思をもって右土地を占有していたと認めることができない

4 最判昭和45年6月18日

【要旨】 占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によって外形的客観的に定められるべきものであるから、農地の賃貸借が、農地調整法第5条所定の認可を受けなかったため効力が生じない場合でも、賃貸借により取得した占有は、他主占有というべきである

5 最判昭和45年10月29日

【要旨】 占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によって客観的に定められるべきものであり、土地の所有権を譲り受けることを内容とする交換契約に基づいてその引渡しを受けた者が、右交換契約によって所有権を取得しえなかったとしても、その占有は所有の意思をもってする占有であるといわなければならない。

6 最判昭和48年1月26日

【要旨】 土地の交換に際して、甲が、真実は借地権を有するに過ぎない土地を、所有権を有しこれを交換物件として提供する旨述べて乙を欺罔し、乙からその土地の提供を受けて占有を取得した場合、詐欺に基づく錯誤により契約が無効となり、その原因を自ら作り出した甲は、右土地を短期時効によって取得することはできない

7 最判昭和51年12月2日

【要旨】 長期にわたり農地の管理人のように振舞ってきた甲に対し小作料を支払い農地を小作してきた乙が、甲から右農地を買い受け農地法所定の許可を得て登記を経由した場合、実際は甲が代理権限を有していなかった時でも、乙は農地の移転登記の時に新権原により所有の意思をもって右農地の占有を始めたものということができる

8 最判昭和58年3月24日

【要旨】 民法第186条第1項の規定は、占有者は所有の意思で占有するものと推定しており、占有者の占有が自主占有に当たらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が所有の意思のない占有にあたることについての立証責任を負うのであるが、右の所有の意思は、占有者の内心の意思によってではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものである

9 最判平成6年9月13日

【要旨】 農地の小作人がいわゆる農地解放後に最初に地代を支払うべき時期にその支払いをせず、これ以降、所有者は小作人が地代等を一切支払わずに右農地を自由に耕作し占有することを容認していたなどの事実関係の下においては、小作人は、遅くとも右時期に所有者に対して右農地につき所有の意思のあることを表示したものというべきである

10 最判平成8年11月12日

【要旨】 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。

第4 自主占有

1 最判昭和44年12月18日

【要旨】 不動産の所有者が第三者に対しその不動産を売却した場合においても、その買主が売主から右不動産の引渡を受けて、みずから所有の意思をもって占有を取得し、その占有開始の時から民法第162条所定の期間を占有したときには、買主は売主に対する関係でも、時効による所有権の取得を主張することができる

2 最判昭和47年9月8日

【要旨】 共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心をもたず、異議も述べなかったような特別の事情のものにおいては、前記相続人はその相続の時から相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである

3 最判昭和52年3月3日

【要旨】 農地を賃借していた者が所有者から右農地を買受けその代金を支払ったときは、当時施行の農地調整法第4条によって農地の所有権移転の効力発生要件とされていた都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続がとられていなかったとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約を締結し代金を支払った時に民法第185条にいう新権原により所有の意思をもって右農地の占有を始めたものと認められる

4 最判昭和54年7月31日

【要旨】 民法第186条第1項により、占有者は所有の意思で占有するものと推定されるのであるから、占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は、右占有が他主占有にあたることについての立証責任を負うというべきであり、占有が自主占有であるかどうかは占有開始原因たる事実によって外形的客観的に定められるものであって、賃貸借によって開始された占有は他主占有とみられるのであるから、取得時効の効果を主張する者がその取得原因となる占有が賃貸借によって開始された旨を主張する場合において、相手方が右主張を援用したときは、取得時効の原因となる占有が他主占有であることについて自白があったものというべきである。

5 最判昭和56年1月27日

【要旨】 他人の物の売買であるため直ちに所有権を取得するものでないことを買主が知っていても、占有における所有の意思の有無は、占有取得原因たる事実によって外形的客観的に定められるべきであるから、買主において所有者から土地の使用権の設定を受けるなど特段の事情のない限り、買主の占有は所有の意思をもってする占有と解するのが相当であり、売買の目的物が他人所有であることを買主が知っていたことは占有の始め悪意であることを意味するにすぎない。

6 最判昭和60年3月28日

【要旨】 売買契約に基づいて開始される買主の占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が付せられている場合であっても、民法第162条にいう所有の意思をもってする占有であるというを妨げず、かつ解除条件が成就して売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもってする占有でなくなるというものではない

第5 他主占有・代理占有

1 最判昭和54年7月31日

【要旨】 民法第186条第1項によって占有者は所有の意思で占有するものと推定されるのであるから、民法第162条による時効取得の成立を争う者は、占有者の占有が他主占有であることについての立証責任を争うことになり、時効取得を主張する者においてその占有が賃貸借によって開始されたと主張する場合には、右占有開始はとりもなおさず、他主占有であることを主張しているのであるから、右主張は相手方が立証責任を負う他主占有の主張に対する自白にあたる

2 最判平成元年9月19日

【要旨】 米軍に接収され、軍用地として使用されている土地につき、賃貸借契約に基づき軍用地料を受領し、公租公課を負担してきた者は、その土地につき直接に占有したことがなくても、間接占有のみに基づく時効取得が認められる

3 最判平成7年12月15日

【要旨】 所有の意思は、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的にさだめられるべきものであるから、占有者の内心の意思のいかんを問わず、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されて初めて、その所有の意思を否定することができる

第6 他主占有から自主占有への転換

1 最判昭和46年11月30日

【要旨】 相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始して、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法第185条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきである

第7 占有の承継

1 最判昭和37年5月18日

【要旨】 民法第187条第1項は、相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではなく、その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。

2 最判昭和53年3月6日

【要旨】 10年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする民法第162条第2項の規定は、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有があわせて主張される場合についてもまた適用されるものであり、この場合にはその主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点においてこれを判断すれば足りる

3 最判平成元年12月22日

【要旨】 従前から歴代住職の個人名義で所有権移転登記が経由されてきた寺院の不動産につき、同寺院が宗教法人として法人格を取得した以後も引続き占有を継続している場合には、民法第187条第1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を、法人格を取得した以後当該法人が引続いて占有している場合にも適用されるものと解すべきであるから、同寺院は、民法第187条第1項により、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点として選択することができる

第8 時効の期間・時効の開始時期・起算点等

1 最判昭和35年7月27日

【要旨】 取得時効完成の時期を定めるにあたっては、取得時効の基礎たる事実が法律に定めた時効期間以上に継続した場合においても、必ず時効の基礎たる事実の開始した時を起算点として時効完成の時期を決定すべきものであって、取得時効を援用する者において任意にその起算点を選択し、時効完成の時期を或いは早め或いは遅らせることはできない

2 最判昭和46年11月5日

【要旨】 不動産が二重に売買された場合において、買主甲がその引渡を受けたが、登記欠缺のため、その所有権の取得をもって、後に所有権取得登記を経由した買主乙に対抗することができないときは、民法第162条に定める甲の所有権の取得時効は、その占有を取得した時から起算すべきものである

3 最判昭和50年4月11日

【要旨】 農地を買い受けた者が、農地法第3条所定の許可を条件とする所有権移転登記手続等を求めた場合において、 売主に対して有する知事に対する許可申請協力請求権は、売買契約に基づく債権的請求権であり、民法第167条第1項の債権に当たり、売買契約成立の日から10年の経過により時効によって消滅する

4 最判昭和52年3月3日

【要旨】 農地を賃借していた者が所有者から右農地を買い受けその代金を支払ったときは、当時施行の農地調整法第4条によって農地の所有権移転の効力発生要件とされていた都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続がとられていなかったとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約を締結し代金を支払った時に民法第185条にいう新権原により所有の意思をもって右農地の占有を始めたものと認められる

5 最判昭和54年9月7日

【要旨】 土地改良法に基づく交換分合により農用地の所有権の得喪が生じる場合には、特定の所有者が取得すべき土地と失うべき土地とは別異のものであるが、同法が、両土地の同等性を保障しており(同法第102条)、両土地を所有権その他の権利関係について同一のものに準じて取り扱っていること(同法第106条)に鑑みれば、農用地の交換分合の前後を通じ両土地について自主占有が継続しているときは、取得時効の成否に関しては両土地の占有期間を通算することができるものと解するのが相当である

6 最判昭和55年2月29日

【要旨】 他人の農地の売買の場合における買主の売主に対する農地法第3条所定の許可申請協力請求権の消滅時効は、売主が他人から当該農地の所有権を取得したときから進行する

7 最判平成15年10月31日

【要旨】 土地所有権を時効取得し、登記をした者が、取得時効完成後に前主により当該土地上に設定された抵当権が登記された後に、時効取得を原因とする所有権移転登記を経由した場合には、時効取得者は時効の援用によりさかのぼって確定的に土地所有権を原始取得したのであるから、起算点を後の時点にずらして再度、取得時効の完成を主張、援用することはできない

第9 占有の善意・無過失・平穏・公然等(民法第186条)

1 最判昭和35年9月2日

【要旨】 民法第160条は、相続財産の管理人の選任前、相続財産たる土地を、所有の意思をもって、平穏、公然、善意無過失で10年間占有した場合にもその適用がある

2 最判昭和41年4月15日

【要旨】 民法第162条第2項にいう平穏の占有とは、占有者がその占有を取得し、または保持することについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有を指称するものであり、不動産所有者その他占有の不法を主張する者から異議をうけ、不動産の返還、占有者名義の所有権移転登記の抹消手続方の請求があっても、これがため、その占有が平穏でなくなるものではない

3 最判昭和43年3月1日

【要旨】 相続人が、登記簿に基づいて実地に調査すれば相続により取得した土地の範囲が甲地を含まないことを容易に知ることが困難でなかったにもかかわらず、この調査をしなかったために、甲地が相続した土地に含まれ、自己の所有に属すると信じて占有を始めたときは、特段の事情のない限り、相続人は右占有の初めにおいて無過失ではないと解するのが相当である。

4 最判昭和43年12月24日

【要旨】 民法第162条第2項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信ずるにつき過失のないことをいい、占有者において、占有の目的不動産に抵当権が設定されていることを知り、または、不注意により知らなかった場合でも、ここにいう善意・無過失の占有者ということを妨げないから、抵当不動産の受贈者が所有権移転登記を経ないまま、自己に所有権があるものと信じて占有した場合には、右抵当権の存在を知り、または不注意により知らなかったときでも、善意・無過失であるということができる

5 最判昭和46年3月9日

【要旨】 農業委員会作成の図面または法務局備付の図面を閲覧し、それらに基づいて実地に調査をすれば本件土地が自己の買受地に含まれないことを比較的容易に了知し得たものであるのに、右図面等を閲覧したこともなく、また自己の買い受けた土地を実測したこともないので、右土地を占有するに当たって自己の所有と信じたことには過失がなかったとはいえない

6 最判昭和48年1月26日

【要旨】 土地の交換契約に際して、甲は真実は借地権を有するに過ぎない土地を、所有権を有しこれを交換物件として提供する旨述べて乙を欺罔し、乙からその土地の提供を受けて占有を取得した場合、詐欺に基づく錯誤により契約が無効となり、その原因を自らつくり出した甲は、したがって、本件土地を所有の意思をもって善意・無過失で占有を開始したと認めえない場合のあり得べきことはいうまでもなく、右土地を短期時効によって取得することはできない

7 最判昭和50年4月22日

【要旨】 自己の賃借する土地の一部として第三者の土地の一部を占有していた者が、賃借地の払下を受けるにあたり、本件係争部分を右払下げを受けた土地の一部であると信じたとしても、その払下土地の境界を隣接地所有者や公図等について確認する等の調査をしないでそう信じたとすれば過失がなかったとはいえない

8 最判昭和51年12月2日

【要旨】 長期にわたり農地の管理人のように振舞ってきた甲に対し小作料を支払い農地を小作してきた乙が、甲から右農地を買受け農地法所定の許可を得て登記を経由した場合、実際は甲が代理権限を有していなかった時でも、乙は農地の移転登記の時に新権原により所有の意思をもって右農地の占有をはじめたものと言うことができ、かつ占有取得につき過失がなかったというべきである

9 最判昭和52年3月31日

【要旨】 土地を買受けその占有を始めるに先立ち、前主が、6年余にわたって同土地の所有者としてこれを占有し、その間、隣地の所有者との間に境界に関する紛争もないままに経過していたのであって、このような状況の下で同土地を買い受けその自主占有を取得したものである以上、たとえ右買受けに際し、登記簿等につき調査することがなかったとしても、自主占有を開始するにあたって過失はなかったものといえる

10 最判昭和56年1月27日

【要旨】 他人の物の売買であるため直ちに所有権を取得するものでないことを買主が知っていても、占有における所有の意思の有無は、占有取得原因たる事実によって外形的客観的に定められるべきであるから、買主において所有者から土地の使用権の設定を受けるなど特段の事情のない限り、買主の占有は所有の意思をもってする占有と解するのが相当であり、売買の目的物が他人所有であることを買主が知っていたことは占有の始め悪意であることを意味するにすぎない

11 最判昭和59年5月25日

【要旨】 農地の譲受人が譲渡を目的とする法律行為をしただけで当該譲渡に必要な農地調整法第4条第1項の知事の許可を受けなかった場合、通常の注意義務を尽くすときには知事の許可がない限り当該農地の所有権を取得することができないことを知りえたものというべきであるから、譲渡についてされた知事の許可に瑕疵があって無効であるが同瑕疵があることにつき善意であった等の特段の事情のない限り、農地の占有を始めるに当ってこれを自己の所有と信じても過失がなかったとはいえない

第10 占有の状態・排他的支配の状態

最判昭和46年3月30日

【要旨】 原判決は、(イ)X県Y市大字2182番の2山林の前々主A(一代目)が大正8年頃本件係争地に、これを自己所有の右山林の一部であると信じて、杉苗多数を植えつけ、その後その刈払い等の手入れを続けて右植林の育成に努めてきたと認定し、一方において、(ロ)右植林後間もなく、B3が、同所182番の3山林の当時の所有者B2に頼まれて、右Aが植え残した本件係争地の東南隅に杉苗若干を植えつけたこと、B4ほか一名が大正末年または昭和初年頃同所182番の3の所有者である上告人先代B1(第一審被告)の依頼を受けて前記杉苗の成長した林の刈払いをしたこと、Cが昭和初年頃右B1の承諾を得て本件係争地内から桑葉を採取したことをも認定したうえ、特段の理由を示すことなく、右(イ)(ロ)の事実の間には矛盾がないとして、右Aが昭和5年末まで本件係争地の単独占有を継続したことを認め、これを前提として、右Aの本件係争地に対する所有権の時効取得を認めたのである。しかし、一定範囲の土地の占有を継続したというためには、その部分につき、客観的に明確な程度に排他的な支配状態を続けなければならないのであるから、右各認定事実のもとでは、占有の範囲についても、その態様についても、直ちにAの単独占有が継続したとすることに首肯しがたいものがあり、この点に関し原判決の説示するところには、理由不備の違法があるといわなければならない。

第11 時効の援用の意義

1 最判昭和44年12月18日

【要旨】 不動産の所有者が第三者に対しその不動産を売却した場合においても、その買主が売主から右不動産の引渡を受けて、みずから所有の意思をもって占有を取得し、その占有開始の時から民法第162条所定の期間を占有したときには、買主は売主に対する関係でも、時効による所有権の取得を主張することができる

2 最判昭和46年11月25日

【要旨】 物件を永続して占有するという事実状態を権利関係にまで高めようとする取得時効制度の趣旨に鑑みれば、取得時効の目的物件が何人の所有に属していたかを確定する必要は、必ずしもないというべきであるから、売買契約が効力を発生しなかったとする主張について判断することなく、直ちに取得時効について判断したとしても正当である

第12 時効の援用権者

1 最判昭和44年7月15日

【要旨】 民法第145条は、時効の援用権者は当事者である旨を規定しているところ、建物賃借人は土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない

2 最判昭和48年12月14日

【要旨】 民法一四五条の規定により消滅時効を援用しうる者は、権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されると解すべきであるところ(最高裁判所昭和42年10月27日第二小法廷判決・民集21巻8号2110頁参照)、抵当権が設定され、かつその登記の存する不動産の譲渡を受けた第三者は、当該抵当権の被担保債権が消滅すれば抵当権の消滅を主張しうる関孫にあるから、抵当債権の消滅により直接利益を受ける者にあたると解するのが相当であり、これと見解を異にする大審院明治43年1月25日判決・民録16輯1巻22頁の判例は変更すべきものである。

3 最判平成11年6月24日

【要旨】 被相続人がした贈与が遺留分減殺の対象としての要件を満たす場合には、遺留分権利者の減殺請求により、贈与は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者が取得した権利は右の限度で当然に右遺留分権利者に帰属するに至るものであり、受贈者が、右贈与に基づいて目的物の占有を取得し、民法第162条所定の期間、平穏かつ公然にこれを継続し、取得時効を援用したとしても、それによって、遺留分権利者への権利の帰属が妨げられるものではないと解するのが相当である。 ただし、民法は、遺留分減殺によって法的安定が害されることに対し一定の配慮をしながら(第1030条前段、第1035条、第1042条等)、遺留分減殺の対象としての要件を満たす贈与については、それが減殺請求の何年前にされたものであるかを問わず、減殺の対象となるものとしていること、前記のような占有を継続した受贈者が贈与の目的物を時効取得し、減殺請求によっても受贈者が取得した権利が遺留分権利者に帰属することがないとするならば、遺留分を侵害する贈与がされてから被相続人が死亡するまでに時効期間が経過した場合には、遺留分権利者は、取得時効を中断する法的手段のないまま、遺留分に相当する権利を取得できない結果となることなどにかんがみると、遺留分減殺の対象としての要件を満たす贈与の受贈者は、減殺請求がされれば、贈与から減殺請求までに時効期間が経過したとしても、自己が取得した権利が遺留分を侵害する限度で遺留分権利者に帰属することを容認すべきであるとするのが、民法の趣旨であると解されるからである。

4 最判平成11年10月21日

【要旨】 民法第145条所定の当事者として消滅時効を援用し得る者は、権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されると解すべきである(最高裁昭和48年12月14日第二小法廷判決・民集27巻11号1586頁参照)。後順位抵当権者は、目的不動産の価格から先順位抵当権によって担保される債権額を控除した価額についてのみ優先して弁済を受ける地位を有するものである。もっとも、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、これによって被担保債権に対する配当額が増加することがあり得るが、この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益にすぎないというべきである。そうすると、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではなく、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができないものと解するのが相当である

第13 時効の援用権の喪失

1 最判昭和51年5月25日

【要旨】 家督相続をした長男が、家庭裁判所における調停により、母に対しその老後の生活保障と妹らの扶養及び婚姻費用等に充てる目的で農地を贈与して引渡を終わり母が20数年これを耕作し、妹らの扶養及び婚姻等の諸費用を負担したなど判示の事実関係のもとにおいて、母から農地法第3条の許可申請に協力を求められた右長男がその許可申請協力請求権につき消滅時効を援用することは、信義則に反し、権利の濫用として許されない

2 最判昭和59年9月20日

【要旨】 本件仮処分決定は、Aらと上告人Jとの関係において、代理権のない者による本件土地の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利とする処分禁止の効力を有しないものといわざるをえないが、被告人らの取得時効の完成時以降は、時効取得に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利とする処分禁止の効力を有するものと解するのが相当である。そうすると、被上告人Aらは、右時効完成後に上告人Hから本件土地の売渡を受け登記を経由した上告人Jに対して本件仮処分決定の効力を主張することができ、したがつて、上告人Jは、被上告人Aらに対し右売渡による本件土地の所有権取得の効力を対抗することができないものといわなければならない。

第14 時効の利益の放棄

1 最判昭和35年6月23日

【要旨】 債権者の振り出した約束手形につき、債務者が消滅時効完成後に内入弁済をした事案において、時効利益の放棄があったとするためには、債務者において時効完成の事実を知っていたことを要するところ、債務者が弁済期後にした債務の内入弁済は、時効完成の事実を知ってこれをしたものと推定すべきであり、債務者において弁済をするに当たり時効完成の事実を知らなかったということを主張かつ立証しない限りは、時効の利益を放棄したものと認められる

2 最判昭和41年4月20日

【要旨】 弁済期から9年あまりが経過した時点での公正証書に基づく強制執行に対して、商事時効を援用できるかが争われた事案において、時効完成後に債務の承認をした場合、商人である債務者が消滅時効完成後に債務を承認した事実から、右承認が時効完成を知ってされたものと推定するのは経験則に反して許されないと解すべきである。また、債務者が消滅時効完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、時効完成の事実を知らなかったときでも、その後その時効を援用することは許されないと解すべきである

第15 取得時効の中断・停止

1 最判昭和35年9月2日

【要旨】 民法第160条は、相続財産の管理人の選任前、相続財産たる土地を、所有の意思をもって、平穏、公然、善意無過失で10年間占有した場合にもその適用があると解すべきであり、相続財産管理人の選任前に時効期間が満了した場合にも民法第160条が適用されて、時効の完成が選任後6か月猶予される

2 最判昭和38年1月18日

【要旨】 係争地域が自己の所有に属することの主張は前後変わることなく、ただ単に請求の趣旨を境界確定から所有権確認に交替的に変更したに過ぎない場合は、裁判所の判断を求めることを断念して旧訴を取り下げたものとみるべきではないから、訴の終了を意図する通常の訴の取下げとはその本質を異にし、境界確定の訴提起によって生じた時効中断の効力には影響がない

3 最判昭和43年11月13日

【要旨】 所有権に基づく登記手続請求の訴訟において、被告が自己に所有権があることを主張して請求棄却の判決を求め、その主張が判決によって認められた場合には、右所有権の主張は、裁判上の請求に準ずるものとして、民法第147条第1号の規定により原告のための取得時効を中断する効力を生ずる

4 最判昭和43年12月24日

【要旨】 抵当権者からの競売の申立に基づき、競売開始決定の登記がなされて差押の効力が生じても、不動産につき所有権取得登記を経由しておらず、前記競売手続が占有者を目的物件の所有者としてなされたものでない以上、そのことが抵当不動産の占有者に通知されない限り、これをもって右占有者の取得時効についての中断事由とすることはできない

5 最判昭和44年12月18日

【要旨】 甲が乙および丙を被告として提起した共有物分割請求訴訟において、乙が、請求原因事実を認め、これによって自らの共有持分がある旨の主張をすることは、その主張が認められた場合においては、裁判上の請求の準ずるものとして、民法第147条第1項の規定により、丙のための取得時効を中断する効力を生じる

6 最判昭和50年11月28日

【要旨】 二重に訴が係属した後に旧訴が取り下げられても、それが訴の提起による権利主張をやめ、かつ権利につき判決による公権的判断を受ける機会を放棄したものでもないと認められる場合には、旧訴提起による時効中断の効力は消滅しない

7 最判平成元年3月28日

【要旨】 所有者を異にする相隣接地の一方の所有者甲が、境界を越えて隣接地の一部を自己の所有地として占有し、その占有部分につき時効により所有権を取得したと主張している場合において、右隣接地の所有者乙が甲に対して右時効完成前に境界確定訴訟を提起していたときは、右訴えの提起により、右占有部分に関する所有権の取得時効は中断するものと解されるが、土地所有権に基づいて乙が甲に対して右占有部分の明渡を求める請求が右境界確定訴訟と併合審理されており、判決において、右占有部分についての乙の所有権が否定され、乙の甲に対する前記明渡請求が棄却されたときは、たとえ、これと同時に乙の主張するとおりに土地の境界が確定されたとしても、右占有部分については所有権に関する取得時効中断の効力は生じないものと解するのが相当である。

第16 時効完成と登記

1 最判昭和33年8月28日

【要旨】 時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後において旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない

2 最判昭和36年7月20日

【要旨】 時効による権利の取得の有無を考察するに当たっては、単に当事者間のみならず、第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないから、不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗し得ないが、第三者の右登記後に、占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくても時効取得をもって対抗し得るものと解するべきである

3 最判昭和41年11月22日

【要旨】 時効による不動産所有権取得の有無を考察するに当たっては、単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであるから、この関係においては、結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのであり、不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受け、その旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる

4 最判昭和42年7月21日

【要旨】 不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し時効完成後に移転登記を経由した者に対し、時効取得者は、登記なくして所有権を対抗することができる。被上告人は本件土地の占有により昭和33年3月21日に20年の取得時効完成したところ、上告人は、本件土地の前主から昭和33年2月本件土地を買い受けてその所有者となり、同年12月8日所有権取得登記を経由したというのである。されば、被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり、したがつて、上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから、被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり、このことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによつて消長を来さないものというべきである。

5 最判昭和56年11月24日

【要旨】 売買予約上の買主の地位は、第三者の目的不動産に対する取得時効完成により消滅するものであるから、取得時効の完成前に原所有者との間で不動産につき売買予約を締結し、所有権移転請求権保全の仮登記を経由した甲から、取得時効完成後に乙が右売買予約上の買主たる地位を譲り受け、右仮登記につき移転の附記登記を経由した場合には、甲が有していた買主たる地位がそのまま乙の地位となり、乙のため仮登記により保全されていた右買主たる地位は丙につき取得時効が完成したことにより消滅したものと解すべきであるから、買主である乙は右時効の当事者であって、民法第177条にいわゆる第三者に該当するものではなく、丙に対し、時効による所有権の取得登記なくして対抗できる

第17 取得時効の目的物1(所有権以外の権利の取得時効)

1 最判昭和38年12月13日

【要旨】 他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けて、その時から右立木のみにつき所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間占有した者は、植付の時に遡って時効により右立木の所有権を取得する。

2 最判昭和43年10月8日

【要旨】 土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、民法第163条にしたがって土地賃借権の時効取得が可能である。

3 最判昭和52年9月29日

【要旨】 建物賃借人に過ぎない者が、土地所有権者より建物敷地の管理を任されており他に賃貸する権限も付与されていると称して、敷地の空地部分を賃貸し、それを信じて土地を賃借した者が、地上に建物を建築して所有・居住し、土地の占有を平穏公然に継続し、賃料も建物賃借人およびその相続人に支払ってきた事情のある場合、土地の継続的な用益が賃借に基づくものであることが客観的に表現されていると認めるのが相当であり、民法第163条所定期間の経過により賃借権を時効取得することができる。

4 最判昭和53年12月14日

【要旨】 土地賃借権の無断譲受人が、土地の引渡しを受けながら、賃貸人に賃料を支払つたことがなく、また、賃貸人に賃借権譲渡の承諾を求めたが拒絶され、かえつて譲渡人との賃貸借契約は既に解除済みであるとして土地の明渡を求められ、その後にいたつて賃料の弁済供託を開始したという事実関係のもとにおいて、譲受人が賃借意思に基づいて土地の使用を継続したものということはできず、賃借権の時効取得を認めることはできない

5 最判昭和62年6月5日

【要旨】 甲所有の土地を買い受けてその所有権を取得したと称する乙から右土地を賃借した丙が、右賃貸借契約に基づいて平穏公然に目的土地の占有を継続し、乙に対し賃料を支払っているなど判示の事情にもとにおいては、丙は、民法第163条の時効期間の経過により、甲に対して右土地の賃借権を時効取得することができる

第18 取得時効の目的物2(法定外公共物)

1 最判昭和42年6月9日

【要旨】 道路敷として寄附された土地を、国がその供用開始を行い、以来所有の意思をもって10年間占有管理した場合には、その所有権を時効取得したものというべきである。

2 最判昭和44年5月22日

【要旨】 自作農創設特別措置法に基づいて政府から売渡を受け、その無効であることを知らず、右売渡によってその所有権を取得したものと信じて以後その占有を継続していた土地が、旧都市計画法第3条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地であっても、外見上公園の形態を具備しておらず、したがって現に公共用財産としての使命を果たしていない限り、民法第162条に基づく取得時効の成立を妨げない

3 最判昭和51年12月24日

【要旨】 公図上水路として表示されている国有地が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態・機能を全く喪失し、その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、右公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、これに対する取得時効の成立を妨げない

4 最判昭和51年12月24日

【要旨】 公共用財産である道路が建物敷地の一部として順次占有を継続され、現在に至るまで道路として利用された形跡が全くなく、その必要もなくなっている等の事情にあるときは、長年の間、事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産とし維持すべき理由がなくなった場合に当たり、黙示的に公用が廃止されたものとして、これに対する取得時効の成立を妨げない

5 最判昭和55年2月29日

【要旨】 他人の農地の売買の場合における買主の売主に対する農地法第3条所定の許可申請協力請求権の消滅時効は、売主が他人から当該農地の所有権を取得したときから進行する

第19 農地と時効

1 最判昭和50年4月11日

【要旨】 農地を買い受けた者が、農地法第3条所定の許可を条件とする所有権移転登記手続等を求めた場合において、売主に対して有する知事に対する許可申請協力請求権は、売買契約に基づく債権的請求権であり、民法第167条第1項の債権に当たり、売買契約成立の日から10年の経過により時効によって消滅する

2 最判昭和50年9月25日

【要旨】 農地法第3条による都道府県知事等の許可の対象となるのは、農地等につき新たに所有権を移転し又は使用収益を目的とする権利を設定若しくは移転する行為に限られ、時効による所有権の取得はいわゆる原始取得であって新たに所有権を移転する行為ではないから、右許可を受けなければならない行為に当たらない。

3 最判昭和52年3月3日

【要旨】 農地を賃借していた者が所有者から右農地を買受けその代金を支払ったときは、当時施行の農地調整法第4条によって農地の所有権移転の効力発生要件とされていた都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続が取られていなかったとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約を締結し代金を支払った時に民法第185条にいう新権原により所有の意思をもって右農地の占有を始めたものと認められる

4 最判昭和61年3月17日

【要旨】 農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の時効による消滅の効果は、10年の時効期間の経過と共に確定的に生ずるものではなく、売主が右請求権についての時効を援用したときに初めて確定的に生ずるものというべきであるから、右時効の援用がされるまでの間に当該農地が非農地化したときには、その時点において、右農地の売買契約は当然に効力を生じ、買主にその所有権が移転するものと解すべきであり、その後に売主が右県知事に対する許可申請協力請求権の消滅時効を援用してもその効力を生ずるに由ないものである。

5 最判平成6年9月8日

【要旨】 地方公共団体が、使用目的を定めないで農地を買い受ける契約をした後、右農地を農地法5条1項4号、農地法施行規則7条6号所定の用途に供することを確定したときは、右売買契約は、その時点において農地法所定の許可を経ないで効力を生ずるため、本件土地を中学校敷地として使用することを確定した後に、売主により本件許可申請協力請求権の消滅時効の援用がされたのであれば、本件売買は、右使用目的が確定した時点において当然に効力を生じ、被上告人は本件土地の所有権を喪失するに至ったというべきであって、本件許可申請協力請求権の時効消滅は問題とする余地がないこととなる。

6 最判平成6年9月13日

【要旨】 農地の小作人がいわゆる農地解放後に最初に地代に支払うべき時期にその支払いをせず、これ以降、所有者は小作人が地代等を一切支払わずに右農地を自由に耕作し占有することを容認していたなどの事実関係の下においては、小作人は、遅くとも右時期に所有者に対して右農地につき所有の意思のあることを表示したものというべきである。

7 最判平成13年10月26日

【要旨】 転用目的の農地の売買につき農地法5条所定の許可を得るための手続が執られていないとしても、特段の事情のない限り、代金を支払い農地の引渡しを受けた時に、所有の意思をもって農地の占有を始めたものと解するのが相当であり、これを本件についてみると、上告人は、本件売買契約を締結した直後に本件農地の引渡しを受け、代金を完済して、自らこれを管理し、その後は被上告人に管理を委託し、又は賃貸していたのであるから、本件許可を得るための手続が執られなかったとしても、上告人は、所有の意思をもって本件農地を占有したものというべきである。

8 最判平成16年7月13日

【要旨】 他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、民法163条の規定により、土地賃借権を時効により取得することができるものと解すべきである。他方、農地法第3条は、農地について所有権を移転し、又は賃借権等の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならないこと(第1項)、この許可を受けないでした行為はその効力を生じないこと(第4項)などを定めている。同条が設けられた趣旨は、同法の目的(第1項)からみて望ましくない不耕作目的の農地の取得等の権利の移転又は設定を規制し、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ろうとするものである。そうすると、耕作するなどして農地を継続的に占有している者につき、土地の賃借権の時効取得を認めるための上記の要件が満たされた場合において、その者の継続的な占有を保護すべきものとして賃借権の時効取得を認めることは、同法第3条による上記規制の趣旨に反するものではないというべきであるから、同条第1項所定の賃借権の移転又は設定には、時効により賃借権を取得する場合は含まれないと解すべきである。

第20 地役権の時効取得

1 最判昭和30年12月26日

【要旨】 民法第283条による通行地役権の時効取得については、いわゆる「継続」の要件として、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によってなされることを要するものと解すべきである。

2 最判昭和33年2月14日

【要旨】 空地に既に通路が設けられており、その当時から相当の根拠にもとづいてこれを一般の通路であると信じ所有地から公路に出入するため10年以上通行して来たものであって、その間その他何人からも異議がなかったという事情の下においても、通行地役権の時効取得に関する継続の要件としては、承役地たるべき他人の土地の上に通路を開設し、その開設は要役地所有者によってなされることを要するものと解すべきである。

実績