病院・クリニック・介護施設向け顧問弁護士の活用法

医療現場において無用なトラブルを防ぐ方法とは?

医療現場においては、日々、対内的にも対外的にもさまざまな問題が起こり得ます。

医療法務と言いますと、すぐに「医療過誤事件」が想像されるところかと思いますが、決してそれだけではありません。

日常業務において起こり得るケースとしては、診療拒否と応召義務の問題医師の説明義務の範囲患者や部外者等の不当なクレーム対応患者の未払治療費の回収個人情報の取扱方法等、実に多岐にわたります。

また、看護師等をはじめとする従業員との労務トラブルパワハラ、セクハラ、能力不足、勤務態度不良等)も起こり得ます。

言うまでもなく、これら多岐にわたる問題について、医師や事務局が適切に対応することは、時間的にも能力的にも無理があります。

さらに申し上げるならば、ただでさえ人出不足の昨今、本業に加えて、上記諸問題についてすべて自前で対処するとなれば、担当者の労働時間、精神的負荷はますます増えることになります。

今の時代に即した「働き方改革」とは、すなわち「自社の本業(得意分野)以外はすべてその分野の専門家に外注(アウトソーシング)する」です。

どのように対処したらよいのかわからずに右往左往するなんて、はっきり言って時間と労力の無駄遣いです。

悩んだらすぐに顧問弁護士に相談をする

まさに医療と同じだと思いませんか?

ネット情報を鵜呑みして、素人判断でなんとなく対処した結果、問題がかえって大きくなってしまうのは、決して病気に限りません。

適切に予防するとともに、発症後は主治医に相談する

法的トラブルも全く同じです。

弁護士法人栗田勇法律事務所では、現在、数多くの医療機関及び介護施設と顧問契約を締結しております。

また、当事務所では、顧問先会社様の役員及び従業員の皆様を対象としたWebセミナー等を多数開催しており、医療機関向けのセミナー・研修会も定期的に開催しております。

過去に実施しましたセミナーのテーマの一部をご紹介いたします(過去のセミナーテーマはこちらをご覧ください。)。

医療従事者が知っておくべき『応招義務』の考え方と患者トラブルの傾向と対策
『産業医契約書の手引き』(日本医師会)から読み解く!産業医が労使紛争に巻き込まれないために注意すべきポイント
医療法人杏祐会元看護師ほか事件広島高裁判決から読み解く!医療機関における看護学校修学資金等の貸付契約と貸付金返還請求の留意点
長崎市立病院事件長崎地裁判決から読み解く!医師の当直業務・勉強会等の労働時間性の考え方-厚労省通達を踏まえた実務的対応方法を検討する-
事例で学ぶ!クリニックにおける患者トラブル対処法~こんなとき、どう対応すべきか~
事例で学ぶ!クリニックにおける個人情報・プライバシー保護の対応策~こんなとき、どう対応すべきか~

ただでさえ多忙を極める多くの医療機関や介護施設において、職員の皆様が本業に専念できることを願って止みません。

医師の応召義務の考え方と顧問弁護士の活用法

医師の先生方がやむなく診療を拒否せざるを得ないとご判断された場合に、必ず検討しなければならないのが「応召義務」(「応招義務」と記載することもあります。)です。

ご承知のとおり、医師法第19条1項では「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と規定されています(歯科医師法にも同様の規定があります。)。

医師の先生方は、常に、この「正当な事由」の曖昧さ、不明確さに頭を悩まされることになります。

これまで長きにわたり、この「応召義務」の意義について議論がされてきましたが、厚生労働省は、2019年、現在の医療提供体制の変化や医師の労働条件などの問題から、以前に通知されていた応召義務の解釈を見直し、いかなる場合に診療の求めに応じないことが正当化されるのかについて、「応招義務をはじめとした診療治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(医政発1225第4号)を発出しました。

当該通知では、「基本的な考え方」として、次の3点が挙げられています。

1 診療の求めに対する医師個人の義務(応招義務)と医療機関の責務

●医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項に規定する応招義務は、医師又は歯科医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師又は歯科医師の患者に対する私法上の義務ではないこと。
●応招義務は、医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項において、医師又は歯科医師が個人として負担する義務として規定されていること
(医師又は歯科医師が勤務医として医療機関に勤務する場合でも、応招義務を負うのは、個人としての医師又は歯科医師であること)。
●他方、組織として医療機関が医師・歯科医師を雇用し患者からの診療の求めに対応する場合については、昭和24年通知にあるように、医師又は歯科医師個人の応招義務とは別に、医療機関としても、患者からの診療の求めに応じて、必要にして十分な治療を与えることが求められ、正当な理由なく診療を拒んではならないこと。

2 労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等について

●労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等については、使用者と勤務医の労働関係法令上の問題であり、医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項に規定する応招義務の問題ではないこと。
(勤務医が、医療機関の使用者から労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等を受けた場合に、結果として労働基準法等に違反することとなることを理由に医療機関に対して診療等の労務提供を拒否したとしても、医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項に規定する応招義務違反にはあたらない。)

3 診療の求めに応じないことが正当化される場合の考え方

●医療機関の対応としてどのような場合に患者を診療しないことが正当化されるか否か、また、医師・歯科医師個人の対応としてどのような場合に患者を診療しないことが応招義務に反するか否かについて、最も重要な考慮要素は、患者について緊急対応が必要であるか否か(病状の深刻度)であること。(*1)
●このほか、医療機関相互の機能分化・連携や医療の高度化・専門化等による医療提供体制の変化や勤務医の勤務環境への配慮の観点から、次に掲げる事項も重要な考慮要素であること。
・診療を求められたのが、診療時間(医療機関として診療を提供することが予定されている時間)、勤務時間(医師・歯科医師が医療機関において勤務医として診療を提供することが予定されている時間)内であるか、それとも診療時間外・勤務時間外であるか
患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係(*2)
(*1)①緊急対応が必要な場合(病状の深刻な救急患者等)
ア 診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内である場合
医療機関・医師・歯科医師の専門性・診察能力、当該状況下での医療提供の可能性・設備状況、他の医療機関等による医療提供の可能性(医療の代替可能性)を総合的に勘案しつつ、事実上診療が不可能といえる場合にのみ、診療しないことが正当化される。
イ 診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合
応急的に必要な処置をとることが望ましいが、原則、公法上・私法上の責任に問われることはない(※)。
※ 必要な処置をとった場合においても、医療設備が不十分なことが想定されるため、求められる対応の程度は低い(例えば、心肺蘇生法等の応急処置の実施等)。
※ 診療所等の医療機関へ直接患者が来院した場合、必要な処置を行った上で、救急対応の可能な病院等の医療機関に対応を依頼するのが望ましい。
② 緊急対応が不要な場合(病状の安定している患者等)
ア 診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内である場合
原則として、患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要がある。
ただし、緊急対応の必要がある場合に比べて、正当化される場合は、医療機関・医師・歯科医師の専門性・診察能力、当該状況下での医療提供の可能性・設備状況、他の医療機関等による医療提供の可能性(医療の代替可能性)のほか、患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係等も考慮して緩やかに解釈される。
イ 診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合
即座に対応する必要はなく、診療しないことは正当化される。ただし、時間内の受診依頼、他の診察可能な医療機関の紹介等の対応をとることが望ましい。
(*2)患者を診療しないことが正当化される事例の整理←ここ重要!!
患者の迷惑行為
診療・療養等において生じた又は生じている迷惑行為の態様に照らし、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合(※)には、新たな診療を行わないことが正当化される。
診療内容そのものと関係ないクレーム等を繰り返し続ける等。
医療費不払い
以前に医療費の不払いがあったとしても、そのことのみをもって診療しないことは正当化されない。
しかし、支払能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合等には、診療しないことが正当化される。具体的には、保険未加入等医療費の支払い能力が不確定であることのみをもって診療しないことは正当化されないが、医学的な治療を要さない自由診療において支払い能力を有さない患者を診療しないこと等は正当化される。
また、特段の理由なく保険診療において自己負担分の未払いが重なっている場合には、悪意のある未払いであることが推定される場合もある。
入院患者の退院や他の医療機関の紹介・転院等
医学的に入院の継続が必要ない場合には、通院治療等で対応すれば足りるため、退院させることは正当化される。
医療機関相互の機能分化・連携を踏まえ、地域全体で患者ごとに適正な医療を提供する観点から、病状に応じて大学病院等の高度な医療機関から地域の医療機関を紹介、転院を依頼・実施すること等も原則として正当化される。
差別的な取扱い
患者の年齢、性別、人種・国籍、宗教等のみを理由に診療しないことは正当化されない。
ただし、言語が通じない、宗教上の理由等により結果として診療行為そのものが著しく困難であるといった事情が認められる場合にはこの限りではない。
このほか、特定の感染症へのり患等合理性の認められない理由のみに基づき診療しないことは正当化されない。
ただし、1類・2類感染症等、制度上、特定の医療機関で対応すべきとされている感染症にり患している又はその疑いのある患者等についてはこの限りではない。
訪日外国人観光客をはじめとした外国人患者への対応
外国人患者についても、診療しないことの正当化事由は、日本人患者の場合と同様に判断するのが原則である。
外国人患者については、文化の違い(宗教的な問題で肌を見せられない等)、言語の違い(意思疎通の問題)、(特に外国人観光客について)本国に帰国することで医療を受けることが可能であること等、日本人患者とは異なる点があるが、これらの点のみをもって診療しないことは正当化されない。
ただし、文化や言語の違い等により、結果として診療行為そのものが著しく困難であるといった事情が認められる場合にはこの限りではない。

上記のとおり、当該通知により、以前と比べれば「応召義務」の意義が明確になったのは事実です。

しかしながら、医療現場においては、なお、「応召義務」に違反するか否かについて解釈の余地が残されており、その判断は困難であるのが実情です。

医師が診療を拒否した場合には、医師側で「正当な事由」の存在を立証しなければならないため、将来の紛争に備え、いかなる証拠を残しておくべきかという視点が極めて重要になります。

医師が診療拒否を選択せざるを得ないと判断される場合には、事前に必ず顧問弁護士に相談し、当該判断の妥当性を証拠の存否・証拠価値の評価とともに検討することをおすすめいたします

地方厚生局による保険医療機関等への個別指導・監査に対する対応

個別指導」は、新規指定を対象にするもの(新規指導・新規個別指導)と既指定を対象とするものに分けられます。

新規指導は、新規指定後概ね半年から1年以内に実施することとされています。

既指定の医療機関に対する個別指導の選定理由は以下の4つに分けられます。

情報提供:被保険者(患者)・審査支払機関等から診療内容・診療報酬の請求に関する情報提供があり、地方厚生局が必要と認めた医療機関(情報提供の場合は優先的に個別指導が行われます。)
再指導:前回の個別指導・新規指導の結果が再指導になった医療機関
高点数:集団的個別指導の翌年度も高点数である医療機関
その他:監査の結果、戒告・注意となった医療機関や正当な理由なく集団的個別指導を拒否した医療機関
*実際にどのような理由で選定されたのかは、医療機関側には明らかにされません。
*個別指導実施率は4%と言われています。

個別指導の対象となった場合、実施日の概ね1ヶ月前に医療機関に宛てて実施通知が送られてきます。

実施通知には実施日・時間・場所等の他、当日持参を求められる書類等(持参物)が記載されます。持参物の中には指導対象として選定された患者のカルテが含まれますが、対象の患者の通知については新規指導と既指定の個別指導とで以下のように異なります。

・新規指定:患者10人分のリストが実施日の1週間前に送付される。
・既指定:患者20人分のリストが実施日の1週間前に、10人分が実施日の前日正午までに送付される。

指導当日に持参するカルテは原則「初診時から」とされています。

個別指導に呼ばれた場合には、まずは実施通知に記載されている持参物を準備しチェックする必要があります。指定されている書類等を持参しなかったり、著しい不備があったりすると、指導の中断(後日改めて指導を行う)ということにもなりかねませんので注意が必要です。

*なお、保険医や保険医療機関には健康保険法の規定により厚生労働大臣の指導を受ける義務が定められています(健康保険法73条1項)が、指導はあくまで行政手続法に基づく「行政指導」です。行政指導は事実行為であり、相手方に対する直接の強制力を有するものでもありません。行政手続法32条(行政指導の一般原則)でも、「行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。」と規定されているとおりです。
しかしながら、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室作成の「医療指導監査業務等実施要領(指導編)」(平成30年度9月版)では、「①事前に通知した資料を持参しているか確認を行う。②持参していない場合、取りに行かせるか又は従業者に持参させる等の臨機応変な対応を行う」(67頁)とし、「依頼した資料を持参せず指導の目的が遣し得ないと判断した場合又は指導中に診療内容等に疑義が発生し、指導時間内に保険医療機関等から十分な説明が得られなかった場合等、予定した時間内に指導が終了できない場合は 立会者及び保険医療機関等に理由を説明し指導を中断する」(69頁)とされています。

指導の場で重点的に見られるのは、カルテの記載です。

典型例としては、管理料などを算定している場合に、通知にある「管理内容の要点を記載する」を満たす記載が無いと「算定要件を満たしていない」などとして診療報酬の「自主返還」を求められる場合もあります。

したがって、患者の主訴や指導内容、検査の結果評価などを日頃からしっかりカルテに記載することが重要です。「個別指導の際、カルテが唯一の物証である」ということを強く認識することが大切です。

指導結果は、個別指導が行われてから1ヶ月後に通知され、①概ね妥当、②経過観察、③再指導(患者実地調査の可能性あり。)、④要監査(指導中止、即監査へ移行する場合あり)のいずれかとなります。

再指導率は年々増加しており、約40%(新規指導では20%)となっています。

個別指導はあくまでも行政指導であり、教育的観点で行われるべきものですが、残念ながら指導の場で「失礼なことを言われた」「まるで犯罪者扱いのように感じた」といった声も聞かれます。

また、医療機関への個別指導については相談できる窓口が極めて少なく、孤立感や強い不安に苛まれる当事者も多いようです。

弁護士法人栗田勇法律事務所では、地方厚生局による保険医療機関等への個別指導に対する事前の助言及び帯同を行っております

是非、お気軽にご相談ください。

医薬品製造・販売会社様対象の顧問契約・内部通報社外窓口・社内研修等のご案内

薬機法が求める法令遵守体制の整備はできていますか?

福井県の製薬会社が製造した皮膚病などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入していた問題で、福井県は、令和3年2月9日、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づき、同社に対し116日間という過去最長の業務停止命令と業務改善命令を行いました。

当該事案においては、当該医薬品を含めた複数の医薬品において、承認内容と異なる方法での製造、製造実態を隠蔽するための行政提出用帳簿(いわゆる二重帳簿)の作成、品質試験結果のねつ造等の不正行為が認められ、組織ぐるみで薬機法をはじめとする関係法令に違反していた事実が判明しています。

当該事案の発生が契機となり、「医薬品の製造業者におけるGMP省令違反等を踏まえた無通告立入検査の徹底強化等について」と題する令和3年2月9日付け薬生監麻発0209第1号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知が発令されました。

当該通知において、以下のとおり、医薬品の製造販売業者及び製造業者に対し、法令遵守体制の確認及び整備の対応が求められています

「医薬品の製造販売業者及び製造業者は、医薬品の使用による保険衛生上の危害を発生・拡大させることのないよう、医薬品取扱事業者として、高い倫理観をもち、関係法令を遵守して業務を行う責務を有している。当該事案が生じた原因については、役職員において医薬品の製造販売業者及び製造業者として当然に有すべき遵法意識が欠如していたこと、医薬品製造に係る品質確保のための体制整備や教育訓練が十分になされていないこと等が見られたこと等を踏まえ、医薬品の製造販売業者及び製造業者に対して、本年8月1日に施行される医薬品医療機器等法の一部改正に先立ち、薬事に関する業務に責任を有する役員の責任の下、社内における法令遵守体制の確認及び整備の対応を早急に行うよう指導すること。」

では、ここでいう法令遵守体制の整備とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

この点、「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン」では以下のとおり説明されています。

「(1)製造販売業者等の業務の遂行が法令に適合することを確保するための体制
① 役職員が遵守すべき規範の策定
 製造販売業者等の業務が法令を遵守して適正に行われるためには、製造販売業者等の役職員が遵守すべき規範を、社内規程において明確に定める必要がある。まず、適正に業務を遂行するための意思決定の仕組みを定める必要がある。これには、意思決定を行う権限を有する者及び当該権限の範囲、意思決定に必要な判断基準、並びに意思決定に至る社内手続等を明確にすることが含まれる。
 次に、意思決定に従い各役職員が適正に業務を遂行するための仕組みを定める必要がある。これには、指揮命令権限を有する者、当該権限の範囲及び指揮命令の方法、並びに業務の手順等を明確にすることが含まれる。これらの意思決定や業務遂行の仕組みについては、業務の監督の結果や法令の改正等に応じて、随時見直しが行われなければならない。
② 役職員に対する教育訓練及び評価
 役職員が法令を遵守して業務を行うことを確保するため、法令等及びこれを踏まえて策定された社内規程の内容を役職員に周知し、その遵守を徹底する必要がある。そのためには、役職員に、計画的・継続的に行われる研修及び業務の監督の結果や法令の改正等を踏まえて行われる研修等を受講させることや、法令等や社内規程の内容や適用等について役職員が相談できる部署・窓口を設置すること等が考えられる。また、役職員が法令を遵守して業務を行うことを動機づけるため、役職員による法令等及び社内規程の理解やその遵守状況を製造販売業者等として確認し評価することも重要である。
③ 業務記録の作成、管理及び保存
 役職員による意思決定及び業務遂行の内容が社内において適切に報告され、また、意思決定及び業務遂行が適正に行われたかどうかを事後的に確認することができるようにするため、その内容が適時かつ正確に記録される体制とする必要がある。そのためには、業務記録の作成、管理及び保存の方法等の文書管理に関する社内規程を定め、その適切な運用を行う必要がある。また、事後的に記録の改変等ができないシステムとする等、適切な情報セキュリティ対策を行うことも重要である。
(2)役職員の業務の監督に係る体制
 製造販売業者等の業務の適正を確保するためには、役職員が法令等及び社内規程を遵守して意思決定及び業務遂行を行っているかどうかを確認し、必要に応じて改善措置を講じるための監督に関する体制が確立し、機能する必要がある。そのためには、責任役員が、役職員による意思決定や業務遂行の状況を適切に把握し、適時に必要な改善措置を講じることが求められるため、役職員の業務をモニタリングする体制の構築や、役職員の業務の状況について責任役員に対する必要な報告が行われることが重要となる。
 こうした体制としては、業務を行う部門から独立した内部監査部門により、法令遵守上のリスクを勘案して策定した内部監査計画に基づく内部監査を行い、法令遵守上の問題点について責任役員への報告を行う体制とすることや、内部通報の手続や通報者の保護等を明確にした実効性のある内部通報制度を構築すること等が考えられる。また、監査役等による情報収集等が十分に行われる体制とし、監査の実効性を確保することも重要である。
 加えて、第4の2のとおり、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する法令遵守上の問題点を最も実効的に知り得る者である総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者(以下「総括製造販売責任者等」という。)による業務の監督及び意見申述が適切に行われる体制とすることも、業務の実効的な監督を行うために重要である。
(3)その他の体制
 製造販売業者等全体としての法令等の遵守(コンプライアンス)を担当する役員(コンプライアンス担当役員)を指名することは、全社的な法令遵守についての積極的な取組みを推進し、法令遵守を重視する姿勢を役職員に示す等の観点から効果的である。
 また、製造販売業者等の部署ごとの特性を踏まえた法令遵守について中心的な役割を果たす者として、各部署にコンプライアンス担当者を置くことが望ましい。
 加えて、製造販売業者等の規模に応じ、法令遵守に関する全社的な取組みが必要と判断する場合は、コンプライアンス担当役員の指揮のもと、法令遵守についての取組みを主導する担当部署としてのコンプライアンス統括部署を設置することも効果的である。
 製造販売業者等が社外取締役を選任している場合は、社外取締役に製造販売業者の法令遵守体制についての理解を促すほか、法令遵守に関する問題点について従業者や各部署から社外取締役に対する報告が行われる体制とする等、その監督機能を活用することが重要である。」

このようにガイドラインを確認することにより、法令遵守体制の整備として具体的に何をどの程度行えばよいのかが一定程度理解することができます。

もっとも、ここで注意しなければいけないのは、「このような体制を構築すれば十分」というテンプレートは存在しないということです。

つまり、大切なのは、各種規程をつくるといった形式を整えることではなく、いかに不正行為を撲滅するかということを具体的に検討し実際に運用することなのです。

このことは、以下のとおり、「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)」を見ても、「これだけやればよい」などというわかりやすい形式的なゴールは存在しないことがよくわかります。

「Q1-3「本規定及び本ガイドラインにおいても、具体的にどのような法令遵守体制を構築すればよいかは明確ではなく、もっと具体的な基準を教えて欲しい。」
A1-3「法令遵守体制について、『このような体制を構築すれば十分』というテンプレートは存在しません。逆にいえば、提示されたテンプレートに当てはまる体制を取り入れたからといって、製造販売業者等ひいては責任役員が、自社の法令遵守体制をどのように構築すべきかを検討し、必要な措置を講じるという責任を免れるものではありません。各製造販売業者等が、薬事に関する法令を遵守して業務を行うために、どのような社内体制を構築すべきかについては、各製造販売業者等の業務内容、事業規模、役職員の状況、社内組織の状況等の様々な個別の事情により異なるものです各製造販売業者等は、自社において法令等の違反が生じるリスクを評価し、そのような違反が生じないためにどのような対策を行うべきかを検討し、不断の改善を行うことが重要です。」
Q2-1「本ガイドライン第2に示されている法令遵守体制について、会社法に基づく内部統制システムその他の既に社内にある法令遵守に関する体制で十分であると自社において判断できる場合は、特段の対応は不要という理解で問題ないか。」
A2-1「今回新たに薬機法上規定された法令遵守体制整備に関する事項については、必ずしも、新たな社内規程の作成や、新たな業務監督体制の構築等の措置を講じることを求めるものではありません。すなわち、製造販売業者等において、薬事に関する法令だけでなく、会社法その他の法令等を踏まえ、既に構築している法令遵守体制を活用していただくこと自体に問題はありません。もっとも、薬事に関する法令を遵守して業務を行うことを確保するために、既に構築している体制において十分である否かを、製造販売業者等ひいては責任役員において、不断に検討し、不十分な点がある場合には、新たな体制の構築や既存の体制の改善等の措置を講ずることが重要です。」

弁護士法人栗田勇法律事務所が提供する法令遵守体制整備に関するサービス

上記のとおり、薬機法が求める法令遵守体制の整備にはいくつもの項目が含まれており、対応に苦慮されている企業も少なくないことと思います。

弁護士法人栗田勇法律事務所では、医薬品製造・販売会社様を対象として、以下のサービスを提供しております。

顧問契約締結による日常業務に関する継続的なご相談対応(くわしくはこちらのページをご覧ください。)
内部通報制度における社外窓口(くわしくはこちらのページをご覧ください。)
③役職員に対する定期的な社内研修(くわしくはこちらのページをご覧ください。)
社外取締役、社外監査役の就任

徹底強化された無通告立入検査に対応し得るだけの万全の法令遵守体制の整備・構築についてお手伝いをいたします。

ご興味・ご関心のある医薬品製造・販売会社様は弁護士法人栗田勇法律事務所にご相談ください。

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