「本件は,被上告人の株主である上告人らが,被上告人に対し,平成26年5月26日に開催された被上告人の臨時株主総会における上告人らを取締役から解任する旨の議案を否決する株主総会決議(以下「本件否決決議」という。)について,会社法831条1項1号に基づき,その取消しを請求する事案である。
本件否決決議の取消しを請求する本件訴えが適法であるか否かが争われている。
所論は,本件否決決議が取り消されれば,別途上告人らに対して提起されている会社法854条所定の役員の解任の訴えが不適法として却下されることとなるから,本件訴えは適法であるというのである。
会社法は,会社の組織に関する訴えについての諸規定を置き(同法828条以下),瑕疵のある株主総会等の決議についても,その決議の日から3箇月以内に限って訴えをもって取消しを請求できる旨規定して法律関係の早期安定を図り(同法831条),併せて,当該訴えにおける被告,認容判決の効力が及ぶ者の範囲,判決の効力等も規定している(同法834条から839条まで)。
このような規定は,株主総会等の決議によって,新たな法律関係が生ずることを前提とするものである。
しかるところ,一般に,ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし,当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから,ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である。
このことは,当該議案が役員を解任する旨のものであった場合でも異なるものではない。
以上によれば,本件否決決議の取消しを請求する本件訴えは不適法であって,これを却下した原判決は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。」