解雇139(カール・ハンセン&サンジャパン事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

今日は、身体の障害で「業務に耐えられない」ことを理由の解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

カール・ハンセン&サンジャパン事件(東京地裁平成25年10月4日・労判1085号50頁)

【事案の概要】

Y社は、家具・室内装飾品の製造、輸出入および販売を目的とし、主としてデンマーク製の家具の輸入および販売を行っている会社である。

Xは、Y社の従業員であったが、平成22年、ギラン・バレー症候群および無顆粒球症の診断を受けた。

Y社は、Xに対し、就業規則に定める解雇理由である「身体の障害により、業務に耐えられないと認められたとき」またはそれに「準ずるやむを得ない事情があるとき」に該当するものであることを理由に、解雇した。

Xは、本件解雇の有効性を争い、提訴した。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、・・・ギラン・バレー症候群及び無顆粒球症に罹患し、・・・平成23年3月頃までは起立不能及び上肢機能全廃・・・などと診断され、徐々に回復していた様子は窺われるものの、ずれも就労不能である旨診断されていた・・・。
以上の事実に加え、Xの業務の内容に照らせば、本件解雇予告当時のXは、制限勤務であってもY社において就労することが不可能であったと認められ、この事実は「身体の障害により、業務に耐えられない」という本件就業規則29条1項2号に当たり、本件解雇予告には、客観的に合理的な理由があるというべきである。

2 また、Xは、ギラン・バレー症候群及び無顆粒球症の治療のために入院してから本件解雇予告までの約1年7か月の間、就労することができない状態にあり、その間、Y社のXに対する、3か月分の給与を支払うことで退職して欲しい旨の打診に対し、Xが、失業保険の受給の関係で欠勤期間を平成23年11月以降まで延長して欲しい旨の要望をし、Y社がこれに応えて同年11月以降まで解雇を見合わせていた等の事情が認められる。
そうすると、本件解雇予告につき、社会通念上相当と認められない事情があるとは認められない。

従業員の症状に加えて、会社としては、可能な範囲での解雇回避や経済的支援をしていることが評価されています。

休職期間満了後の復職の可否の問題とも関連してきますが、この問題は、主治医の診断書や意見書のみで判断するのは早計であり、より多角的な視点で総合判断することが求められます。

それゆえ会社の判断の適否は、その時点では明確にならず、その後の訴訟を通じて明らかになるわけです。

訴訟リスク、敗訴リスクを考慮に入れつつ、労働者の就労の可否を判断する必要があります。

言うのは簡単ですが、とても難しい問題です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。