Monthly Archives: 6月 2014

解雇142(東京都教育委員会事件)

おはようございます。

さて、今日は、校長に対する傷害行為を理由とする懲戒免職処分の取消に関する裁判例を見てみましょう。

東京都教育委員会事件(東京地裁平成26年2月26日・労経速2206号20頁)

【事案の概要】

本件は、東京都立甲高等学校の主幹教諭であったXが、平成22年8月27日、甲高校の校舎内で、同校校長との間でトラブルを起こし、同校校長に対する傷害行為に及んだところ、そのことを理由に、東京都教育委員会から平成23年1月20日付けで地方公務員法29条1項1号及び3号に基づく懲戒免職処分を受けたことから、本件処分の違法性を主張して、その取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件事件におけるXの傷害行為が、その性質・内容に照らして、地公法33条において禁止の対象とされる当該職の信用を傷つけ、職員の職全体の不名誉となる行為に該当し、したがって地公法29条1項1号所定の地公法違反に該当するほか、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行として同項3号に該当することは明らかである。

2 ところで、地方公務員につき、地公法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を総合考慮した上で判断されるものであり、その判断は、懲戒権者の裁量に任されているものと解される。したがって、当該懲戒処分については、上記裁量権の行使として社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、これを濫用したと認められる場合に限り、違法であると判断すべきである(最判昭和52年12月20日)。

3 そこで、本件処分における裁量権の逸脱・濫用の有無を検討するに、本件事件におけるXの非違行為は、現職の教育公務員として、暴力の否定を含む社会の基本的、常識的な価値観について生徒に教育し、その模範となるべき立場にあったXが、教育現場である勤務先の公立学校内において、上司である校長に対して暴行を加え、傷害を負わせたというものであり、その態様も、2時間程度の間に、手拳による顔面殴打、パイプいすによる頭部等の殴打及び首絞めといった粗暴かつ危険な行為を執拗に繰り返したもので、傷害結果も、・・・加療約2か月間という比較的程度の重いものであるところ、D校長が、Xに対し、自らの生命身体を守り、学校内秩序を維持するために許容される限度を超えた違法な有形力の行使に及んだ事実はない。また、その経緯、動機をみるに、理科の実習助手の処遇をめぐる対応や勤務評価、本件申請書に係る対応等について蓄積していたD校長及びE副校長に対する不満を背景に、両名に対して一方的に因縁を付け、挑発的な言動に及んだ末になされた暴行であり、その際、D校長及びE副校長が、Xの暴行を誘発する言動を行ったとの事実は認められず、上記暴行に対する責任の一端がD校長にある旨のXの主張が失当であることは明らかである。
・・・これらの事情によれば、Xが、本件処分以前の約20年10か月間、東京都公立学校の教員として勤務を継続してきたこと、本件処分以外に懲戒処分歴がないこと、Xの処分軽減を求める多数の署名がなされた嘆願書が都人委に提出されていることなどを勘案しても、Xの傷害行為の悪質性、重大性に照らして、Xを免職とする判断が重きに失するとはいい難く、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、これを濫用した違法があるものと認めることはできない。

公務員に対する懲戒処分については、本裁判例のように、裁量権の逸脱・濫用があったかどうかが判断されます。

行政事件でよく見かける判断基準です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介330 1分間顧客サービス(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←先日、新しくメンバーとなったスタッフの歓迎会を「焼肉・ホルモン 六番町」で行いました。

分厚いタン中を塩とレモンでいただきました。

よくある薄いタン塩とは別次元のうまさでした。

おみごとでした。

今日は、午前中は、債権回収の裁判が1件、裁判の打合せが1件入っています。

午後は、建物明渡しの裁判が1件、顧問先会社でのセミナーが1件入っています。

今回のセミナーのテーマは、「ケーススタディで学ぶ派遣会社が押さえておきたい最新労務事情」です。

日頃疑問に思うようなテーマについてケーススタディで勉強していきます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
1分間顧客サービス―熱狂的ファンをつくる3つの秘訣

ケン・ブランチャードの「1分間」シリーズです。

今から20年近く前の本です。

「熱狂的ファンをつくる3つの秘訣」というサブタイトルからもわかるとおり、顧客を熱狂的なファンにするための秘訣が書かれています。

このシリーズは、とてもわかりやすくていいですね。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一つか二つのことに成功すれば、総合的なビジョンをつくりあげることができる。だが、一度に多くのことを変えるのは、不可能ではないにしても、難しい」(120頁)

初めは、効果をあげようと思う分野をかぎることだ。第一に、それで一貫性が保てる。第二に、顧客サービスが最終的に目指すものすべてを一度に導入するよりも、一つの極上の仕事をしようとするほうがずっとうまくいく。一度にすべてのことはできない。そういうやり方は無理なんだ」(119頁)

現状を変えようと思ったとき、あれもこれもいたるところを変えたくなるものです。

でも、それを同時進行で一気にやろうとしても、たいていはうまくいきません。

すべてが中途半端に終わるのがオチです。

物事を変えるにも、やり方や順序があります。

1つずつ変えていく。

変えやすいところから着手する。

変えた部分を定着させる。 定着するまで継続する。

これをひたすら繰り返す。

以上。

賃金78(東名運輸事件)

おはようございます。

さて、今日はテレビ局の下ロケバス運転手による割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

東名運輸事件(東京地裁平成25年10月1日・労判1087号56頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で稼働していたXが、平成20年6月から22年12月にかけての時間外労働等に対する割増賃金および付加金の各支払いと遅延損害金を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、583万7256円を支払え。

Y社はXに対し、400万円の付加金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、ロケバス業務に従事する従業員に関し、運行協定書が規定する事項については運行協定書が優先し、就業規則の適用が排除される旨を主張するから、運行協定書が就業規則の一部変更として有効であるか否かが問題となる。
就業規則の変更によって労働条件を変更するには、当該変更が合理的であり、かつ周知されている必要があるところ(労働契約法10条参照)、運行協定書は、その規定に特段不合理な点は認められないが、本件全証拠を総合しても、運行協定書の内容が事業場の労働者の知り得る状態におかれていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、運行協定書は、就業規則一般に必要な周知性を満たしているとはいえないから、その余の点について判断するまでもなく、XとY社との間の労働契約の内容と認めることはできず、単なる業務心得又は運用指針に止まるものというべきである

2 使用者には、労働者の労働時間を適正に把握する義務が課されていると解されること、Y社は、業務毎に作成される運転日報によって労働時間を記録、管理していたことに鑑みれば、本件においては、記載内容が不合理なものでない限り、運転日報に記載された時刻を基準に出勤の有無及び労働時間を推定することが相当である(ただし、この推定は事実上のものであるから、後述の運行表等、他により客観的かつ合理的な証拠が存在する場合には、当該証拠により出勤の有無及び労働時間を認定することが相当である。)。

3 本来の輸送業務の他に、天候、出演者の体調、撮影の進行具合、買出しの必要等のために、撮影中の待機時間に突発的に運転業務を依頼される場合があること、予定外の依頼であっても、Xとして対応可能であれば応じざるを得ないこと、Y社も、待機時間中の依頼も支障のない限り手伝うようにという指示をしていたこと、等の事実を認めることができる
上記事実に鑑みれば、Xは、撮影中の待機時間についても、原則として労働契約上の役務の提供が義務付けられていたというべきである。

4 住宅手当及び通勤手当は、請求期間を通じて一定の金額が支払われていること、Xの住宅又は通勤に要する実費と支給額との関連を認めるに足りる証拠がないことから、実質的に、住宅事情や通勤費用にかかわらず支給されているものとみるべきであり、除外賃金に当たるということはできない。

5 携帯電話料は、ロケバス業務における携帯電話の使用頻度が相当高いものと推認されること…等にかんがみれば、従業員の私物を業務に利用することに伴う実費を負担するため、一種の経費精算として支給されているものとみるのが相当である。したがって、携帯電話料を算定基礎賃金に算入することは相当ではない。

トラックやタクシーのドライバーをはじめとする各種運転手が残業代等の請求をする場合、手待ち時間の問題がよく登場します。

ほとんどのケースで、労基法上の労働時間に該当すると判断するのではないでしょうか。

会社として、どのような対策を講ずるべきか、是非、顧問弁護士に相談してみてください。

 

本の紹介329 UNThink(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

アンシンク UNThink 眠れる創造力を生かす、考えない働き方

タイトルは、「考えない」という意味ですね。 ブルース・リーを思い出します。

サブタイトルは、「Rediscover your creative genius」となっています。

日本語でのサブタイトルは、「眠れる想像力を生かす、考えない働き方」です。

著者は、グラフィティ・アーティストの方で、2012年にTEDで講演をしたそうです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

群衆に従う人間は、群衆より遠くに行くことはないだろう。ひとりで歩く人は、以前誰も行ったことのない場所に自分がいることに気づく可能性が高い・・・あなたの人生にはふたつの選択肢がある。本流に飲み込まれていくか、まったくそこを離れた存在になるかだ。独自な人間になるためには、あなたはほかの人と同じことをやっていてはいけない。人と異なる人間になるためには、あなた以外の誰もなりえない人物になる努力をしなくてはならない。」(238頁)

大勢の人が右の道を選ぶとき、あなたは左の道を選ぶことはできますか?

なかなか難しいですよね。

日頃から、物事の判断基準として「みんなはどうしているのか」という物差しを使っている人は、いざというときにも右の道を行くことになります。

でも、みんなが右に行くから、右が正しいかなんてわかりませんよね。

ただ、なんとなく、みんながそっちを選ぶなら、よくわからないからみんなが進むほうへ行っておけばいいでしょ、って感じじゃないでしょうか。

この場合、結果として、正しいかどうかはさておき、集団の中に埋もれてしまうことは明らかです。

「みんなはどうしているのか」ではなく、「とにかく自分で判断する」という習慣がある人は、周りの人がどう動こうと、自分が選んだ道を進むことができます。

解雇141(ロイズ・ジャパン事件)

おはようございます。

さて、今日は「やむを得ない業務上の都合」を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ロイズ・ジャパン事件(東京地裁平成25年9月11日・労判1087号63頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社による整理解雇は無効であるとともに、不法行為をも構成すると主張して、Y社に対し、地位確認ならびに解雇後の賃金および不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料)の各支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇は、労働者の私傷病や非違行為など労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇であるから、その効力は、人員削減の必要性の有無及び程度、解雇回避努力の有無及び程度、被解雇者の選定の合理性の有無及び程度、解雇手続の相当性の有無及び程度等を総合考慮して、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるか否かによって判断することが相当である(労働契約法16条)。

2 …本件解雇当時、Y社において人員削減をする必要性があったことを認めることができる。もっとも、…一件記録を精査検討しても、この350万ポンドの削減を単年度で実現しなければY社が倒産し又は高度の経営危機に瀕することを認めるに足りないから、人員削減の必要性の程度としては、Y社が主張するような極めて高度な必要性があったものと認めることはできない

3 Y社は、平成24年1月31日に同年3月末日で失われる5つの職務を特定して発表し、本件5職務に現に従事していた5名の従業員に対し退職勧奨を行ったものの、その余の15名の従業員に対しては希望退職募集を行っていないこと、本件解雇においてXが被解雇者として人選されたのは、本件5職務に現に従事していたことによることが認められるところ、希望退職募集を行わなかった15名が従事していた職務について、人員削減の対象として特定された上記5名では代替することができないものと認めるに足りる証拠はないし、人員削減を行わざるを得ない旨の告知を受けただけで割増退職金等の退職条件の提示がない段階で自主退職を名乗り出た者がいなかったとしても、直ちに希望退職募集を実施してもこれに応じる者がいなかったなどということはできないから、解雇回避措置として希望退職募集を行うことが客観的に期待できなかった事情は認められないし、たとえ削減対象とする職務として本件5職務を選定したことに客観的合理性があったとしても、本件5職務に現に従事していたことを基準として、Xを被解雇者として人選したことに合理性があるものとは認められない

人員削減の高度の必要性が認められない場合には、かわりに高度の解雇回避努力が求められることになります。

これが総合考慮というものです。

希望退職募集などのとりうる方法を整理解雇の前にとっておくことは非常に重要なことです。

結果ではなく、プロセスが大切なのです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介328 「幸せをお金で買う」5つの授業(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!
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←休日の早朝は、海までのジョギングから始まります。

その後、ジムで体を鍛えまくります。

強い精神は強い肉体に宿ると確信しています。

継続は力なり。

今日は、午前中は、沼津の裁判所で債権回収の裁判が1件、新規相談が1件入っています。

午後は、新規相談が1件、交渉事件が1件、裁判の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY

著者は、カナダのブリティッシュコロンビア大学の心理学准教授の方と、ハーバード・ビジネススクールのマーケティング学准教授の方です。

「幸せはお金では買えない」は本当なのか?ということについて、いろんな角度から検証しています。

タイトルは、非常にキャッチーですが、中身は、とても真面目であり、参考になります。

お金と時間に関する考え方が変わりますよ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

時間に追われていると感じている人々は、その瞬間を生きるのが難しくなります。・・・夕食の献立や返事を出していないメールについて考えるよりは、いまの瞬間に集中することが、幸福にとっては大事です。実際、いまやっていることが快適であろうと不快であろうと、それに集中しているときが一番幸せなのです。世界中の裕福な人々は、仕事などの前日にプレッシャーを感じたと答える傾向が高くなっています。物質的な豊かさによってあまり多くの幸福がもたらされないのは、豊かになるために自由な時間が減ってしまうことも1つの要因になっているのかもしれません。」(106~107頁)

「経済的に裕福な人たちは幸せに決まっている」と思いがちですが、そんなことはない、という話です。

経済的な裕福さと幸福度は、ある一定の年収までは比例するが、一定の年収を超えると比例の関係になくなることはよく知られています。

年収1000万円の人と年収1億円の人で、後者のほうが10倍幸福度が高いかといえば、そんなことはないでしょう。

結局のところ、経済的な豊かさだけが幸福度を測る尺度ではない、ということです。

私は、経済的な豊かさ以外に、「承認欲求の充足感」という尺度を持っています。

「承認欲求」というのは、人から認められたい、と思うことです。

多くの人は、人に認められたい、という欲求を持っています。

みなさんも、上司やお客様、同僚などに自分の仕事が認められたときって、うれしくなりませんか?

それです、それ。

仕事以外の活動でも同じことです。

「こんな私でも、社会や人の役に立っている」という実感こそが、幸福感につながるのだと信じています。

賃金77(株式会社MID事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、保険代理店の元営業マンによる未払歩合報酬等請求に関する裁判例を見てみましょう。

株式会社MID事件(大阪地裁平成25年10月25日・労判1087号44頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、保険代理業等を営む株式会社であるY社に対し、Y社の間で基本給月額10蔓延および歩合報酬を支払う内容の社員契約を締結していたところ、上記社員契約は労働契約に該当し、Xは、Y社から解雇された旨主張して、①上記社員契約に基づき、未払の基本給合計200万円並びに遅延損害金、②上記社員契約に基づき、未払の歩合報酬合計62万2454円及び遅延損害金、③解雇予告手当10万円及び遅延損害金、④上記解雇予告手当と同額の10万円の付加金及び遅延損害金、⑤上記解雇が違法であることを理由とする不法行為に基づき、慰謝料50万円及び遅延損害金を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社はXに対し、19万0882円+遅延損害金を支払え

2 解雇予告手当10万円+付加金10万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、本件社員契約において、Y社との間で、基本給10万円の支払いについて合意していたと主張する。しかしながら、①本件契約書には、基本給の支払に関する記載は何ら存在せず、むしろ報酬はフルコミッションである旨明記されており、そのことをXも認識していたこと(なお、フルコミッションが、完全歩合制を意味することは公知の事実である。)、②Xは、本件社員契約を締結してから本件解約までの約1年7か月以上の長期間にわたり、Y社から基本給10万円の支払を受けていないにもかかわらず、弁護士や労働基準監督署等を通じてY社に対して基本給の支払いを請求することはしなかったこと、③Xは、行政書士に依頼して、本件解約前の平成23年8月29日に、未払手数料等の支払を求める通知書をY社に送付しているが、同通知書には基本給10万円の支払いを求める旨の記載は一切存在しないこと、④Xは、本件解約後の平成23年9月2日付けで、Y社に対して解雇予告手当請求書を送付しているが、同請求書には基本給10万円の支払いを求める旨の記載は一切存在せず、その後、Xが多数回にわたってY社代表者に送信した電子メールにおいても、未払手数料及ぶ解雇予告手当のみを請求しており、基本給の支払請求は一切されていないことが認められる。
以上の各事実によれば、…XとY社の間に基本給10万円を支払う旨の合意が存在したとは認められない。

2 …そうすると、本件解約以前の3か月間にXに支払われた賃金は上記最低賃金に達しないことになるから、その部分について本件社員契約は無効となり、30日分の平均賃金についても、上記最低賃金に基づき算定すべきことになる。

3 解雇権の濫用に該当する解雇であっても、これが当然に不法行為を構成するとは解されないところ、Xは、本件解約以前から本件社員契約を解除する意思を有していただけでなく、本件解約後も本件解約の有効性について何ら争っていなかったことが認められるから、Y社が本件解約をしたことが違法性を有し、Xに対する不法行為を構成するとまではいえない。

外資系生保会社などに多いフルコミッション制ですが、完全歩合とはいえ、最低賃金を下回ることは許されません。

また、本件では、基本給として10万円を支払う旨の合意があったかが争点となっています。

裁判所がよくやる認定のしかたですので、参考にしてください。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介327 読書は『アウトプット』が99%(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、事務所の近くにある「やっぺい」に行ってきました。 安くておいしいお店です。

写真は、「まぐろのすきみ」と「生さくらえび」です。

さくらえびの漁も終わりですね。

また、秋までお待ちしてまーす。

今日は、午前中は、三島の裁判所で債権回収の裁判が1件、浜松の裁判所で債権回収の裁判が1件入っています。

午後は、慰謝料請求の裁判が2件、労働事件の裁判で証人尋問が1件、新規相談が1件入っています。

夜は、社労士の先生方を対象とした勉強会です。

今回のテーマは、「ケーススタディで学ぶ実践的労務トラブル対処法~賃金編~」です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
読書は「アウトプット」が99%: その1冊にもっと「付加価値」をつける読み方 (知的生きかた文庫)

もうタイトルで、この本のいいたいことは99%言ってしまっていますね(笑)

読書自体は、インプットの作業ですが、インプットした内容をアウトプットしなければ意味ないよ、ということです。 99%おっしゃるとおりです。

どれだけ本を読んでも、アウトプットしなければ単なる物知り博士になるだけです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

時間を有効活用するためには、優先順位を付けることが必須なのです。会社帰りの飲み会もたまにはいいと思いますが、頻繁に参加するのは時間のムダではないかと思います。上司の小言を聞いたり、仕事のグチや会社の内輪話をしても得られるものはありません。・・・会社のために時間を費やすのではなく、その時間を読書にあててほしいと思います。その時間が、将来の自分をつくり上げてくれるはずです。」(179頁)

何か非凡な結果を出そうと思えば、日頃の生活のうち、数パーセントをその準備にあてなければなりません。

人と同じ生活をしておきながら、人と違う成果を望むのは、虫がいい話です。

毎日、出社前に、お昼休みに、仕事帰りに、30分ずつ目標に向けて準備をする。

それをただひたすら、もくもくと、誰に何て言われようと、続ける。

自分で決めた約束を守る。

それが自信につながるのだと思います。

同一労働同一賃金1(N社事件)

おはようございます。

さて、今日は、パートタイム労働法8条違反が不法行為を構成するとされた裁判例を見てみましょう。

N社事件(大分地裁平成25年12月10日・労経速2202号3頁)

【事案の概要】

本件は、使用者であるY社との間で期間の定めのある労働契約を反復して更新していた労働者であるXが、Y社が契約期間満了前の更新の申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、Y社は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされたと主張して(労働契約法19条)、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、更新拒絶期間中の月額賃金、更新拒絶期間中の賞与、更新拒絶による慰謝料を請求するとともに、Y社がXに対して短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)8条1項に違反する差別的取扱いをしていると主張して、同項に基づき、正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、Y社の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、同項に違反する差別的取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求している事案である。なお、Xは、正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求の理由として、準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束がY社との間で成立したことも主張しており、また、パートタイム労働法8条1項の要件を充足する場合には、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した労働契約法20条も充足すると主張する。

【裁判所の判断】

1 更新拒絶は無効→賃金支払

2 慰謝料として50万円を支払え

【判例のポイント】

1 ・・・Y社が更新拒絶の理由として挙げる「本件訴訟において様々な点において事実と異なる主張をしていること」、「裁判と無関係の第三者であるY社の従業員を多数裁判に巻き込んでいること」は、いずれも事実として認めることができない。Y社におけるXの職務は、石油製品という危険物の輸送であるが、職務の遂行についてXに過誤があったことは認められず、本件訴訟におけるX及びY社の主張立証の内容、訴訟活動の態様に照らして、X・Y社間で本件訴訟が係属していることにより、Y社におけるXその他の従業員による職務遂行の安全が害されるとは認められない。
また、Xが交通事故のニュースを見て、Y社大分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得ないような発言をしたとの点についても、Xの話は、安全性に対する認識の欠如を示すもの又はY社との信頼関係を破壊するものであったとは認められず、更新拒絶を裏付ける客観的に合理的な理由の存在を裏付けるものであるとは認められない。
したがって、Y社がXによる有期労働契約の更新の申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。

2 ・・・以上によれば、正社員と準社員であるXの間で、賞与額が大幅に異なる点、週休日の日数が異なる点、退職金の支給の有無が異なる点は、通常の労働者と同視すべき短時間労働者について、短時間労働者であることを理由として賃金の決定その他の処遇について差別的取扱いをしたものとして、パートタイム労働法8条1項に違反するものと認められる。

3 Xは、パートタイム労働法8条1項に基づいて、XがY社の正規労働者と同一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を請求する。
しかし、上記の確認の対象である権利義務の内容は明らかではない上、パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり、同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解されるから、上記の地位確認の請求はいずれも理由がないものと解される。

4 パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ、Xは、Y社に対し、その損害賠償を請求することができる。

本裁判例では、パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは、ただちに不法行為を構成すると判断しているように読めますが、同法は、公法的性格を有するものであり、同法違反がただちに不法行為を構成するかは解釈の余地があります。

フランチャイズ契約について独禁法が適用される場合等でも同じことが言えますね。

また、パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いがあったとしても、それだけで、正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認までは認められないとの判断は参考になります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介326 「ご指名社員」の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
「ご指名社員」の仕事術: 「気がきく」「ギブ型」戦略で”声がかかる人”になる

著者は、東大在学中にサイバーエージェントにてインターネットビジネスの黎明期に携わった後、TBSに入社して、現在、会社員をしながら、執筆・講演活動を行っている方です。

お声がかかる人になるためには、どのようなスキルが必要なのか、どのような差別化をしていけばいいのかが書かれています。

視点がおもしろいですよね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

インターネットの登場によって、パソコンが販売価格順、性能順、評価順などに並べられ、No.1商品だけが指名され、購入されていくことは理解いただけたかと思いますが、私は同じことが『人の世界』にも起きてくると思っています。私たちは『amazonに並べられた商品』のように、オープンな市場で比較検討される。そして、No.1に指名が集中するということです。」(22頁)

もう既にこの現象が起こっていますよね。

競争の中で商売をするのであれば、1位が圧倒的なシェアを獲得することになります。

「2位じゃだめなんですか?」

はい。だめです(笑) 2位以下を選択する理由を探すのはかなり難しいです。

インターネットが普及する前は、比較できない環境にあったため、どれが1位なのかわからなかったわけです。

でも、今は、簡単に比較できますよね。

差別化ができていない商品の場合、結局は、値段の勝負になってくるわけです。

マイケル・ポーターさんは、「最高を目指す競争は、一見正しいように思えるが、実は自己破壊的な競争方法である」と言っています。

競争の中で圧倒的な1位を目指していくのか、それともそもそも競争に巻き込まれない戦略をとるのか。

まずは入口の段階で、どちらのドアを開けるかを考えなければなりません。