賃金80(X薬局事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、事実審の口頭弁論終結時までに使用者が未払割増賃金の支払を完了した場合と裁判所が付加金の支払を命ずることの可否に関する最高裁判決を見てみましょう。

X薬局事件(最高裁平成26年3月6日・判タ1400号97頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、本訴として、Xを相手に、Y社に対する未払賃金債務が173万1919円を超えて存在しないことの確認を求め、Xが、反訴として、Y社を相手に、未払賃金の支払等を求めるとともに、労基法37条所定の割増賃金の未払金に係る同法114条の付加金の支払いを求める事案である。

第1審は、Xの反訴に係る未払割増賃金請求につき、173万1919円及び遅延損害金とともに、付加金86万5960円及び遅延損害金を認める判決をした。

Y社は、控訴した上で、控訴審の口頭弁論終結前に、Xに対し、未払割増賃金全額(遅延損害金を含む)を支払、Xはこれを受領した。これを受けて、Xは、上記割増賃金請求に係る訴えを取り下げ、Y社はこれに同意した。

原審は、以上の事実関係の下で、付加金請求につき、上記の限度でこれを認容すべきものとした。

【裁判所の判断】

付加金に関する部分を破棄し、同部分につきY社敗訴部分を取り消す。
→付加金に関するXの請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 労働基準法114条の付加金の支払義務は、使用者が未払割増賃金等を支払わない場合に当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所が付加金の支払を命ずることによって初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に同法37条の違反があっても、裁判所がその支払を命ずるまで(訴訟手続上は事実審の口頭弁論終結時まで)に使用者が未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したときには、もはや、裁判所は付加金の支払いを命ずることができなくなると解すべきである(最判昭和35年3月11日、最判昭和51年7月9日参照)。

2 本件においては、原審の口頭弁論終結時の時点で、Y社がXに対し未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したものであるから、もはや、裁判所は、Y社に対し、上記未払割増賃金に係る付加金の支払を命ずることができないというべきである。

上記判例のポイント1を知らなかった使用者側のみなさんは、是非、覚えておきましょう。

一審で敗訴し、付加金の支払を命じられた場合には、控訴し、控訴審の口頭弁論終結時までに未払賃金を全額支払えば、付加金の支払は免れられます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。