【遺産相続⑩】相続人がいるかいないかはっきりしないのですが・・・

私は、以前、お金を貸していたAさんが急死しました。Aさんは、身寄りのない人だったと聞いていますが、Aさんには、親から受け継いだ不動産などを多数所有していたようです。私としては、なんとか貸したお金を回収したいのですがどうすればよいですか?

1 まずは、被相続人であるAさんが生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍等を取り寄せて、相続人がいるのかいないのか確認する必要があります。
もし相続人がいるのであれば、その相続人が相続放棄をしない限り、その者に対して貸金返還請求をすればよいです。
相続人がいないか、あるいは、いても相続人全員が相続放棄している場合には、相続人不存在になります。
相続人不存在の状況に対応するため、法律は、相続財産管理制度を設けています。
2 相続財産管理制度とは、相続人不存在の場合に、相続財産を相続財産法人という特別の財産法人に擬制し、利害関係人又は検察官の請求により家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、相続財産の中から債務に対する弁済を行ったうえで、場合によっては特別縁故者の請求による財産分与を行い、残余を国庫に帰属させるというものです(特別縁故者の相続財産分与については、【遺産相続⑪】をご参照ください)。
相続財産管理人となった者(通常は、弁護士が選任されます。)は、相続財産の財産目録を調製して相続財産を管理することになります。
相続財産管理人の選任の公告があった後、2か月以内に相続人が現れなかった場合、管理人は遅滞なく一切の相続債権者及び受遺者に対して一定の期間を定めて(2か月以上)、その期間内に請求の申出をするよう公告し、知れた債権者らには個別に通知し、清算手続に着手します。
そして、管理人は公告期間経過後、期間内に申し出た債権者に対してまず弁済し、次に受遺者に対して弁済していきます。
ただし、相続財産のうち資産よりも負債が多い場合は、債権者額の割合に応じた配当弁済となり、受遺者には配当されません。
この弁済の原資は、管理人が財産を競売により換価して作ります。
ご質問のケースでは、あなたは被相続人の債権者は利害関係人に当たりますから、相続財産管理人の選任請求ができます。その上で、請求申出の公告期間内に債権の届出をして弁済を受けることになります。
3 なお、相続人が存在しているが行方不明である場合は、相続人の存在が明らかであり、「相続人のあることが明らかでない場合」には当たりません。
よって、このような場合には、不在者財産管理と失踪宣告の制度により処理されることになります。