【労務管理㉓】自己破産した従業員を解雇できる?

私は、運送業を営んでいますが、先日、私の会社の従業員でトラックの運転手をしている者が多重債務に陥り、自己破産をしました。このような場合、従業員を解雇できますか?

ご質問のケースでは、自己破産をした従業員を解雇することはできないと考えます。
自己破産をしたことは、あくまでも従業員のプライベートな問題であり、会社に業務上の支障を与えるとか、会社の名誉信用を毀損する性質のものではないからです。
ご質問のケースと同様に、しばしば従業員の私生活上の非行について懲戒の対象となるかが争われることがあります。
例えば、業務外での飲酒運転、痴漢行為による逮捕が懲戒処分や解雇の対象となるかが問題となります。
この点について、裁判所は、従業員の私生活上の非行が、会社の事業活動に直接関連を有するものおよび会社の名誉信用や社会的評価の毀損をもたらすものについては、懲戒の対象となると判断しています。
ご質問のケースでは、会社が運送業であること、自己破産をした従業員がトラック運転手であることを考えると、それだけを理由に解雇したり、懲戒処分をすることはできないと考えます。
これに対し、例えば、自己破産した従業員が金融機関に勤務している場合など、特に信用が重視される業務の場合には、会社の信用が著しく毀損され、また、職務遂行において不適格として解雇も相当である場合もあります(東洋信託銀行事件・東京地裁平成10年9月14日判決)。