セクハラ・パワハラ21 介護職員に対するマタハラ等の存否と妊婦への健康配慮義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、介護職員に対するマタハラ等の存否と妊婦への健康配慮義務等に関する裁判例を見てみましょう。

ツクイほか事件(福岡地裁小倉支部平成28年4月19日・労判1140号39頁)

【事案の概要】

本件は、介護サービスを営むY社との間で雇用契約を締結し、Y社の営業所において介護職員として就労していたXが、(1)同営業所の所長であったAは、職場の管理者として、妊婦であったXの健康に配慮し、良好な職場環境を整備する義務を負っていたが、Xから他の軽易な業務への転換を求められたにもかかわらず転換せず、また、時間給であったXの勤務時間を一方的に短縮したり、Xを無視するなどのマタニティハラスメント及びパワーハラスメントをして上記義務を怠り、良好な職場で働くXの権利を侵害し、Y社は、従業員であったAの指導を怠ったなどと主張して、Aに対しては、不法行為に基づき、Y社に対しては、使用者責任に基づき、さらに、Y社に対しては、労働契約上の就業環境整備義務に反したと主張して、債務不履行に基づき、連帯して慰謝料500万円の損害賠償金+遅延損害金の支払いを求め、また、(2)Xの賃金は平成25年9月までは時給990円、同年10月以降は時給1020円であったが、Y社がXの賃金を時給800円及び時給720円で計算し、時給990円及び時給1020円で計算した賃金を支払わなかったなどとして、Y社に対し、雇用契約に基づき、平成24年8月から平成25年12月までの間の未払賃金3万2814円+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社らは、Xに対し、連帯して35万円+遅延損害金を支払え

Xのその余の請求をいずれも棄却する

【判例のポイント】

1 Aは、・・・必ずしも肯定的ではないXに対する評価を前提としても、やや感情的な態度と相まって、妊娠をした者(X)に対する業務軽減の内容を定めようとする機会において、業務態度等における問題点を指摘し、これを改める意識があるかを強く問う姿勢に終始しており、受け手(X)に対し、妊娠していることを理由にすることなく、従前以上に勤務に奨励するよう求めているとの印象、ひいては、妊娠していることについての業務軽減等の要望をすることは許されないとの認識を与えかねないもので、相当性を欠き、また、速やかにXのできる業務とできない業務を区分して、その業務の軽減を図るとの目的からしても、配慮不足の点を否定することはできず、全体として社会通念上許容される範囲を超えているものであって、使用者側の立場にある者として妊産婦労働者(X)の人格権を害するものといわざるを得ない

2 Y社は、Xの使用者として、雇用契約に付随する義務として妊娠したXの健康に配慮する義務を負っていたが、Aから本件営業所の従業員が妊娠したとの報告を受けながら、その後、Aから具体的な措置を講じたか否かについて報告を受けるなどして、さらにAを指導することや他の者をして具体的な業務の軽減を指示することなくいたことからすれば、Xから妊娠したとの申し出があった平成26年8月以降適切な対応をすることのないまま、再度Xからの申し出を受けた同年12月になってようやく業務軽減等の措置を執ったことからすれば、それ以降、Y社において、関係部署に事情を周知させて対応を求め、あるいは1日の勤務時間及び配置を決定するなど、Xの状況に配慮した対応をしたことを考慮しても、その従前の対応は、上記就業環境整備義務に違反したものということができる。

3 Xが署名押印した平成22年3月から平成26年3月までの5通の雇用契約書兼労働条件通知書には、本件業務別時給に対し異議や疑問を述べたとの事情は窺われず、従業員の記載した業務日誌に基づき各業務の労務管理が行われ、Xの月ごとの勤務表にも業務別の労働時間が記載されていたことに照らすと、Xが本件業務別時給を認識していなかったとか、理解していなかったと推認することはできず、X及びYは本件業務別時給を合意したものと認められるし、業務によって時給が異なることが直ちに不合理ともいえず、Xの上記主張を採用することはできない。 

原告はマタハラ・パワハラを理由に500万円の請求をしましたが、最終的に認められたのは上記のとおりわずか35万円です。

労働事件の慰謝料の相場はとっても低いのです・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。