Monthly Archives: 11月 2016

本の紹介615 1日1分元気になる法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
1日1分 元気になる法則

タイトルだけを見ますと、落ち込んだ人が読む本のようにも思えますが、決してそうではありません。

人生や仕事に対する考え方に影響を与える本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すごい人を見て『才能だな』と言う人は、あきらめている。
『努力だな』と言う人は、挑戦している。」(120頁)

あきらめている人というのは、能力や環境のせいにして、『やらない理由』を探すものです。でも、何かを成し遂げる人というのは、共通して、『できる理由』を探し続けています。」(121頁)

上の2つの文章に共通するのは、自分ができない理由を自分にはどうしようもできないものに求めるという発想です。

才能、能力、環境のせいにした瞬間、もはやできない理由は自分のせいではないという理由付けに走っているため、改善の動機が生まれることはありません。

どこまで行っても、できない理由は自分の努力不足だと認識するほかありません。

事実、多くの場合、そうなのですから。

賃金118(愛永事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、違約金として一方的に控除された減額賃金分支払等請求に関する裁判例を見てみましょう。

愛永事件(横浜地裁平成28年7月15日・労判ジャーナル55号7頁)

【事案の概要】

本件は、平成25年8月から平成26年3月末日までY社に雇用され、軽貨物運送の運転手として勤務し、Y者の元運転手であり同年4月1日からAの名称で軽貨物運送事業を行う個人事業主でありY社から軽貨物運送業務を請け負っていたBに同日から雇用され、同年9月まで雇用されていた元従業員Xが、Y社及びBに対し、それぞれ未払賃金等の支払並びに慰謝料の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し6万円を支払え

慰謝料として10万円を認容

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの賃金から業務中の誤配送等に対する違約金を控除して支払っているところ、賃金は、原則としてその全額を支払わなければならず(労働基準法24条1項)、本件では、法令に別段の定めがあるとも、過半数労働組合(それがない場合は過半数代表者)との書面による協定があるとも認められず、例外的に一部控除が認められる場合にもあたらないから、使用者であるY社が、労働者であるXの債務不履行ないし不法行為に基づく損賠賠償請求権を自働債権、Xの賃金債権を受働債権として一方的に相殺することは許されず、また、一方的な相殺ではなく、元従業員の同意を得てした相殺であることを認めるに足る証拠もなく、Y社がXの賃金から違約金を控除して支払うことは許されないから、Y社にはXに対し6万円の賃金の未払があると認められる。

2 Y社の代表取締役であるZ及びBの個人事業者であるCはXに対し、車両事故の損害額のうち30万円を一括払いするように命令し、Xが「それでは生活ができないので分割払いにしてください」と懇願したにもかかわらず、一切耳を傾けず、「一括払いでなければ駄目だ。親、友人から金を借りてきてでも支払え」とさらに強く迫り、さらに、Xの債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権、Xの賃金債権を受働債権として一方的に相殺しているから、Xはこれにより精神的苦痛を被ったと認められ、・・・慰謝料の額は10万円を認めるのが相当である。

上記判例のポイント1で賃金全額払いの原則について再確認しましょう。

それにしても労働事件における慰謝料の金額の低さが目立ちますね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介614 人間を磨く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」 (光文社新書)

サブタイトルは、「人間関係が好転する『こころの技法』」です。

人間関係の捉え方を学ぶにはとてもいい本です。

すべては捉え方、解釈の問題であることを再認識できます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生におけるその相手との出会いの『意味』を深く考えるとき、一つの視点を心に抱くことによって、しばしば、その『意味』が明瞭に浮かび上がってくる。それは、人生における、人との出会いは、すべて、自分という人間の成長のために、与えられた出会いではないか。その視点である。」(193頁)

「その視点である。」

私は、著者がいう「視点」は、他の本でいう「解釈」の意味で理解しています。

出来事に意味はない。あるのは解釈だけである。

この発想は知っているのと知らないのとでは、日常生活で直面する試練に対する向き合い方が大きく異なります。

出会いも同じだと思います。

出会い自体に意味などありません。

あるのは、その出会いにどのような意味を与えるか、という個々人の解釈だけです。

労働者性17 ホストの労基法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ホストの労働者性が争われた裁判例を見てみましょう。

甲観光事件(東京地裁平成27年3月25日・労経速2289号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社経営のホストクラブに勤務していたXが、Y社と雇用契約を締結していたとして、Y社に対し、未払賃金請求及び旅行積立金の返還請求をする事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ホストの収入は、報酬並びに指名料及びヘルプの手当で構成されるが、いずれも売上に応じて決定されるものであり、勤務時間との関連性は薄い。また、出勤時間はあるが客の都合が優先され、時間的拘束が強いとはいえない。
ホストは接客に必要な衣装等を自腹で準備している。また、ホストと従業員である内勤とは異なる扱いをしている。ミーティングは月1回行われているが、報告が主たるものである

2 以上によれば、ホストはY社から指揮命令を受ける関係にあるとはいえない。ホストは、Y社とは独立して自らの才覚・力量で客を獲得しつつ接客して収入を挙げるものであり、Y社との一定のルールに従って、本件店舗を利用して接客し、その対価を本件店舗から受け取るにすぎない。そうすると、ホストは自営業者と認めるのが相当である

3 したがって、XY社間に雇用契約締結の事実は認められない。XY社間の契約関係は、Y社主張の賃貸借契約類似の非典型契約であると考えられる。Xの場合は、客からの指名が受けられないことから、十分な収入を挙げられなかったものであるが、ホストの業務内容からすれば、ある意味やむを得ないところである

だそうですよ。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介613 運を味方にする(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
運を味方にする カジノで一晩10億勝つ人の法則

著者は、ラスベガスのカジノで10年以上のキャリアを持つカジノディーラーの方です。

カジノディーラーの立場から運が強い人とそうでない人はどこが違うのか説明してくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

たとえスニーカーであっても、靴の状態を見れば、その人が勝つ人かどうかわかります。よく手入れがされていて、とくにスニーカーの白い靴底がきれいな人は、勝って帰ることが多いようです。これは、ディーラー仲間の多くが口にするところです。つまり、こういう話だと思います。
靴底にまで神経が行き届いている人は、賭け方が丁寧です。・・・逆に、靴が汚い人は賭け方が荒いことが多いようです。・・・汚いままの靴を平然とはいているような人は大雑把な性格の人が多いようです。何ごとに対しても適当な人はギャンブルに向いていないと思います。」(112~113頁)

なるほど。 そういうことか。

私たちも日頃、「この人、どういう人なのだろう」と推測する際、些細なしぐさ、声の大きさ、話し方、顔の表情、歩き方、服装などを観察します。

人は見た目が9割と言われていますが、ここでいう「見た目」とは、容姿だけを意味するものではありません。

著者は、「靴の状態」を挙げています。

靴が汚い人が全員賭け方が荒いとは限りませんが、ディーラーからそのように思われていることは事実です。

仕事でも同じことが言えます。

実際、その人がどういう人なのかはわかりませんが、「見た目」からその人を推測されていることを意識することが大切だと思います。

解雇216(ケー・アイ・エス事件)

おはようございます。

今日は、解雇が労基法19条違反に該当するかが争われた事案を見てみましょう。

ケー・アイ・エス事件(東京地裁平成28年6月15日・労判ジャーナル55号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員が、腰痛を発症し、これを悪化させて就労不能な状態となって会社を休職していたところ、上記腰痛は重量物を持ち上げる作業が原因で発症したものであり、退職措置は労基法19条に違反し無効であるとして、雇用契約上の地位の確認を求めるとともに、元従業員が腰痛を発症・悪化させたのはY社の腰痛予防のための必要な措置を講じなかった安全配慮義務違反によるとして、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償金等の支払い等と、Y社の従業院であるAがXに上記作業を強要して腰痛を発症、悪化させたことが不法行為を構成するとして、Aに対し、Y社と連帯して損害賠償金等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Aに対する請求は棄却

退職措置は労基法19条に違反し無効→地位確認認容

Y社はXに対し、損害の8割相当額について賠償責任を認めた

【判例のポイント】

1 ・・・結論において、元従業員の現在の腰痛の症状、就労不能な状態となっていることについて、業務起因性を否定することはできないこと等から、会社が元従業員を退職扱いにしたことは、業務上の負傷等による療養のために休業する期間中の解雇に相当し、労基法19条に違反する無効な措置であるから、元従業員は、会社に対し、依然として、雇用契約上の権利を有する

2 Aは、元従業員の直属の上司ではないし、殺菌工程を直接管理していたわけではなく、そこに従事する従業員の労働安全衛生に関する責任者の立場にあったとも認められないことからすると、作業への復帰という腰痛発生の契機に関与しているとはいえ、腰痛発症の結果を具体的に予見し、これを回避すべき義務を負っていたとはいい難いこと等から、Aにあっては不法行為責任を認めることはできない

3 そもそも元従業員に生じた腰痛に関しては画像上の他覚的な所見があるわけではなく、元従業員固有の器質的要因や社会的、精神的、心理的要因が影響している可能性は小さなものではないこと等から、元従業員の腰痛によって生じた全ての損害について会社に責任を負わせることは衡平の観点からして躊躇を覚えるところであるから、会社の債務不履行、不法行為上の責任については、過失相殺の法理を類推適用して、損害の8割相当額について賠償の責めを負わせるのが相当である。

労災のときは、休職期間満了を理由とする退職処分をする場合には、労基法の解雇制限が問題となりますので、注意しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介612 志は高く目線は低く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
志は高く 目線は低く

弁護士の久保利先生の本です。

久保利先生が司法試験合格後、司法修習前に行った旅について書かれています。

世界を見た久保利先生が感じたことが書かれており、刺激を受けます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世界はどこも競争にさらされていて、アフリカが将来主役になる時代もやってくるだろう。あんなに滅茶苦茶だったインドだって、わたしが訪れてから50年経って主役になる時代が来ているのかもしれない。2015年の今、その兆しも見える。日本も今は先後からの復興を果たしたなんて言っているけれど、もう70年が経った。ウカウカしていると他の国に置いてきぼりをくらうかもしれない。・・・努力をやめた途端に日本は世界からあっという間に見放されて、世界から相手にされなくなってしまうだろう。そんな気がした。」(165頁)

仕事でもなんでもそうですが、他人と競うということをあまり意識しない環境に自分がいると、だんだん闘争心が失われていく気がします。

一度失われた闘争心を取り戻すのはとても大変なことです。

一度、動物園での生活に慣れたライオンは、闘争心を取り戻せるのでしょうか?

闘争心を持ち続けるためには、厳しい環境に自分を置き続けるほかないのではないかと思います。

従業員に対する損害賠償請求2 不当提訴には該当しないが弁護士費用相当額の損害金の支払を命じた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、元取締役の労働契約の存在に基づく未払賃金等支払請求と会社の元取締役に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

ヨーマツ事件(東京地裁平成28年6月17日・労判ジャーナル55号12頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元取締役であったXが本訴として、Y社に対し、労働契約に基づく賃金請求として、平成24年10月30日賃金分を最後に給与支払がないとして、同年11月支給分から平成26年10月支給分までの賃金合計1152万円等の支払を求め、Y社が反訴として、Xに対し、Xによる本訴提起が不法行為になるとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、弁護士費用相当の損害金115万2000円等の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xの本訴請求は棄却

XはY社に対し、115万2000円を支払え

【判例のポイント】

1 元取締役であるXは、自らが設立し代表取締役を務める他社の業務を遂行する傍らにおいて、Y社においても執務していたが、Y社の定める従業員が遵守すべき服務規則の適用を受けることもなく、Y社から就労時間及び就労場所の拘束を受けていたとは認められず、その執務の内容自体からは、従業員としての労務提供であったとまで認めるには足りない
また、Xは、平成元年以降、会社の取締役を解任された平成24年までの間、間断なく会社ないし会社代表者から本件金銭提供を受けているが、資金の提供状況に照らして、その金額がいかなる労働条件の下に計算されたものであるのかを確定することもできないのであり、そのことは、本件金銭提供が会社代表者個人からの贈与であったとしても変わるものではなく、そして、労働契約書、労働条件通知書がなく、雇用保険に加入していないこと、Xが会社の従業員であることを主張し始めたのが本件労働審判申立てからであることも併せ考慮すると、Xの主張する労働契約の存在を認定することができないから、労働契約の存在を前提とする本訴請求は、未払賃金の有無及び金額についての判断をするまでもなく理由がない。

2 Y社は、Xが会社の名目的な取締役であって、従業員ではないことを知りながら、あえて本件労働審判申立てをし、これが棄却されるや異議申立てを行ったことが、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであり、Xの会社に対する不法行為を構成すると主張するが、本件本訴の提起がY社が主張する目的を持って行われたものであることまでは、認めるに足りる証拠はない
他方で、Y社が、本件本訴に対して応訴のために、本件訴訟代理人となっている弁護士に委任したことは明らかであるところ、事案の性質に鑑み、その弁護士費用のうち、Xの不法行為と相当因果関係のある損害は、本訴請求額の10%に当たる115万2000円と算定するのが相当である

なんと反訴として請求した弁護士費用相当額(本訴請求額の10%)が認められています。

本訴提起自体は濫訴ではないとしつつ、「事案の性質に鑑み」弁護士費用相当額を損害として認定しています。

訴訟提起の是非については、常に顧問弁護士に相談しながら判断しましょう。

本の紹介611 人生が変わる最高の教科書「論語」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人生が変わる最高の教科書 論語

小宮さんの「論語」に関する本です。

2500年前の書物が現代においても全く古く感じないというのは本当にすごいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『吾れ嘗て終日食らわず、終夜寝ねず、以て思う。益なし。学ぶに如かざるなり』(衛霊公第15の31)
~わたしは前に一日じゅう食事もせず、一晩じゅう寝もしないで考えたことがあるが、むだであった。学ぶことには及ばないね。
・・・『バカの考え休むに似たり』と言いますが、基本や原理原則を学んでいないことをいくら考えても、正しい結論は出にくいものです。」(26~27頁)

決して、考えることを否定しているわけではありません。

基本や原理原則を学ばずにいきなり考えたってたいした結論には至らないということです。

まずはしっかり基本を学び、考えるための材料をたくさん仕入れるのです。

情報量を増やすことは正確な判断をする上で必要不可欠です。

時間を惜しむことなく情報収集をすることは、極めて重要な準備行為です。

セクハラ・パワハラ21 介護職員に対するマタハラ等の存否と妊婦への健康配慮義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、介護職員に対するマタハラ等の存否と妊婦への健康配慮義務等に関する裁判例を見てみましょう。

ツクイほか事件(福岡地裁小倉支部平成28年4月19日・労判1140号39頁)

【事案の概要】

本件は、介護サービスを営むY社との間で雇用契約を締結し、Y社の営業所において介護職員として就労していたXが、(1)同営業所の所長であったAは、職場の管理者として、妊婦であったXの健康に配慮し、良好な職場環境を整備する義務を負っていたが、Xから他の軽易な業務への転換を求められたにもかかわらず転換せず、また、時間給であったXの勤務時間を一方的に短縮したり、Xを無視するなどのマタニティハラスメント及びパワーハラスメントをして上記義務を怠り、良好な職場で働くXの権利を侵害し、Y社は、従業員であったAの指導を怠ったなどと主張して、Aに対しては、不法行為に基づき、Y社に対しては、使用者責任に基づき、さらに、Y社に対しては、労働契約上の就業環境整備義務に反したと主張して、債務不履行に基づき、連帯して慰謝料500万円の損害賠償金+遅延損害金の支払いを求め、また、(2)Xの賃金は平成25年9月までは時給990円、同年10月以降は時給1020円であったが、Y社がXの賃金を時給800円及び時給720円で計算し、時給990円及び時給1020円で計算した賃金を支払わなかったなどとして、Y社に対し、雇用契約に基づき、平成24年8月から平成25年12月までの間の未払賃金3万2814円+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社らは、Xに対し、連帯して35万円+遅延損害金を支払え

Xのその余の請求をいずれも棄却する

【判例のポイント】

1 Aは、・・・必ずしも肯定的ではないXに対する評価を前提としても、やや感情的な態度と相まって、妊娠をした者(X)に対する業務軽減の内容を定めようとする機会において、業務態度等における問題点を指摘し、これを改める意識があるかを強く問う姿勢に終始しており、受け手(X)に対し、妊娠していることを理由にすることなく、従前以上に勤務に奨励するよう求めているとの印象、ひいては、妊娠していることについての業務軽減等の要望をすることは許されないとの認識を与えかねないもので、相当性を欠き、また、速やかにXのできる業務とできない業務を区分して、その業務の軽減を図るとの目的からしても、配慮不足の点を否定することはできず、全体として社会通念上許容される範囲を超えているものであって、使用者側の立場にある者として妊産婦労働者(X)の人格権を害するものといわざるを得ない

2 Y社は、Xの使用者として、雇用契約に付随する義務として妊娠したXの健康に配慮する義務を負っていたが、Aから本件営業所の従業員が妊娠したとの報告を受けながら、その後、Aから具体的な措置を講じたか否かについて報告を受けるなどして、さらにAを指導することや他の者をして具体的な業務の軽減を指示することなくいたことからすれば、Xから妊娠したとの申し出があった平成26年8月以降適切な対応をすることのないまま、再度Xからの申し出を受けた同年12月になってようやく業務軽減等の措置を執ったことからすれば、それ以降、Y社において、関係部署に事情を周知させて対応を求め、あるいは1日の勤務時間及び配置を決定するなど、Xの状況に配慮した対応をしたことを考慮しても、その従前の対応は、上記就業環境整備義務に違反したものということができる。

3 Xが署名押印した平成22年3月から平成26年3月までの5通の雇用契約書兼労働条件通知書には、本件業務別時給に対し異議や疑問を述べたとの事情は窺われず、従業員の記載した業務日誌に基づき各業務の労務管理が行われ、Xの月ごとの勤務表にも業務別の労働時間が記載されていたことに照らすと、Xが本件業務別時給を認識していなかったとか、理解していなかったと推認することはできず、X及びYは本件業務別時給を合意したものと認められるし、業務によって時給が異なることが直ちに不合理ともいえず、Xの上記主張を採用することはできない。 

原告はマタハラ・パワハラを理由に500万円の請求をしましたが、最終的に認められたのは上記のとおりわずか35万円です。

労働事件の慰謝料の相場はとっても低いのです・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。