Daily Archives: 2010年12月29日

労災25(日本マクドナルド事件)

写真こんにちは。

早朝ウォーキングから戻りました

今日は、いつもとは違うルートで、5時間ほど山登りをしてきました

今日は、午後に2件打合せがあるだけです。

あとは、事務所で、書面を作成します

夜は、顧問先の社長と税理士のK先生と今年最後の忘年会です

今日も一日がんばります!!

日本マクドナルド事件(東京地裁平成22年1月18日・判時2093号152頁)

【事案の概要】

Y社は、日本全国に約3600店舗を設置し、労働者約10万人を使用して、ハンバーガー・レストラン・チェーンの経営を行っている会社である。

Xは、大学卒業後、X社に入社し、店舗の店長代理として、店舗運営の実務等の業務に従事していた。

Xは、勤務時に、急性心機能不全を発症し、死亡した。

Xの本件疾病発症前6か月における時間外労働時間は、本件疾病発症前2か月~6か月の平均時間外労働時間は、64時間40分~73時間45分であり、全て45時間を超えている。

【裁判所の判断】

川崎南労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労災保険制度が、労働基準法上の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすれば、相当因果関係を認めるためには、当該死亡等の結果が、当該業務に内在する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要である。

2 Xは、本件疾病により心臓突然死したものであり、Xの死因は、突発性心室細動による急性心機能不全であると認められること、基礎疾患は特定できないが、全くの健常人に心室細動が起こることは考え難く、突発性心室細動には、心筋イオンチャネル異常等何らかの潜在的な異常の関与が存在すると考えられていることから、Xには、何らかの基礎疾患があった可能性が高いというべきである。上記認定事実の上畑意見は、長時間で、ストレスの大きい労働は、自律神経の過度な緊張を来し、疲労蓄積や過労状態の発症に強く関連し、心室細動等心臓刺激伝達系の異常を引き起こす可能性が大きいと捉えている。また、上記認定事実の石川意見によっても、死因の特定ができずその発症には外的リスクファクターより、内的異常の関与が大きいとはいうものの、長時間でストレスの大きい労働と本件疾病発症との関連性を否定するわけではない
以上によれば、本件疾病の発症が、Y社におけるXの業務に内在する危険が現実化したものと評価できるのであれば、本件疾病と業務の条件関係を肯定することができると解すべきである

3 Y社における業務のシフトは、不規則な勤務であって、その性質上、深夜勤務を含む業務形態であり、しかも、Xをはじめとする正社員は、所定労働時間を超えて勤務することがほとんどで、勤務実績どおりに時間外労働を申告しておらず、いわばサービス残業を行うことが常態化していた勤務態勢であったことを指摘しなければならない。この業務態様は、単に交替制の深夜勤務というだけでなく、業務の不規則性や実際の労働時間の長さに、心理的にも長い拘束時間を従業員に意識させるものであり、心血管疾患に対するリスクを増大させる要因となるものである

4 自宅にも持ち帰っていたパソコン上の作業のうち、本件システムの更新に関する業務は、本件システムはXが開発したものであること、上司の指示によるものの、直接の上司である店長との関係では、本件店舗で作業することが憚られる環境にあり、しかも、後には休日の出勤を禁止されたことからすれば、そのメンテナンス作業は、X自身の責任を感じさせられる作業であって、精神的な緊張を強いられるものであるといわなければならない。

5 Xには、従前の健康診断で、脳・心臓疾患の原因となる異常は認められず、解剖所見でも特記すべき異常が認められないものであり、Y社の業務により、負荷の強い業務に強い時間にわたって晒され、さらに直前の業務の負荷が増大することにより、自律神経の過度な緊張を来し、疲労蓄積や過労状態の発症に強く関連し、心室細動等心臓刺激伝導系の異常を引き起こした可能性が極めて高いということができる。
そうすると、Xには、何らかの基礎疾患が存在していた可能性はあるものの、上記のメカニズムにより、業務上の過重負荷によりその自然の経過を超えて増悪して本件疾病が発症したということができる。すると、本件疾病の発症は、Y社におけるXの業務に内在する危険が現実化したものと評価でき、業務と本件疾病との間には相当因果関係があることを認めることができるのである。

日本マクドナルド事件といえば、名ばかり管理職の問題が有名ですが、本件は、過労死事件です。

本件では、自宅でのパソコン作業等にも業務遂行性が認められました。

また、被災者の死因が医学的に特定できなかったにもかかわらず、不規則な仕事、深夜勤務、サービス残業の常態化等が認められるとして、結果として業務起因性が肯定されています。

従業員にこのような働かせ方をさせている会社は、従業員の健康状態にご注意ください。

「様子がおかしいな」、「最近、残業が続いているな」と思ったら、適切に対応してください。