Daily Archives: 2010年12月20日

有期労働契約13(学校法人立教女学院事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

学校法人立教女学院事件(東京地裁平成20年12月25日・労判981号63頁)

【事案の概要】

Y学校は、短大、高校、中学校、小学校、等を運営する学校法人である。

Xは、派遣会社Aとの間で、派遣先をY短大、派遣期間3か月とする雇用契約を締結し、約3年間、短大総務課において業務に従事した。

その後Xは、Y短大で、1年の雇用期間の定めのある嘱託雇用契約を締結することにより嘱託職員として直接雇用され、その後2度にわたり同様の雇用契約を締結し、就労していた。

その後、Y短大は、Xを雇止めした。

Xは、本件雇止めは無効であると主張した。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 嘱託雇用契約が2回の契約更新をもって反復継続されたものと評価することはできず、更新手続が形骸化していたともいえないから、本件嘱託雇用契約が実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態いなっていたとはいえない。

2 本件嘱託雇用契約は、職員の妊娠など臨時の重要に対応した一時的なものではなく、もともと更新が予定されていたものであること、Xが嘱託職員として担当すべき業務は、短大総務課の恒常的な事務であったこと、1回目の更新である平成17年6月1日から18年5月31日までの嘱託雇用契約書には、契約更新に関して、1年ごとの契約更新とし、その後の更新については、契約期間満了時の業務量および従事している業務の進捗状況、Xの勤務成績・態度により判断すると明示され、その更新は専らXが担当する業務量の推移とXの勤務態度とによって判断することが合意されていたことのほか、2回目の更新である平成18年6月1日から19年5月31日までの本件雇用契約の締結に当たっての事務局長等の言動やこれに先立つ平成18年4月19日の嘱託説明会での説明、更新された嘱託雇用契約書の記載からすると、Xには、本件雇用契約が締結された時点において、本件雇用契約がなお数回にわたって継続されることに対する合理的な期待利益があるといわねばならず、本件雇止めについては、解雇権濫用法理の適用がある

3 嘱託職員の雇用継続期間の上限を3年とする方針を理由に当該嘱託職員を雇止めにするためには、当該方針があることを前提として嘱託雇用関係に入った職員に対しては格別、当該方針が採用された時点ですでにこれを超える継続雇用に対する合理的な期待利益を有していた職員に対しては、当該方針を的確に認識させ、その納得を得る必要があるところ、Xは、当該方針が採用され、その説明を受けた時点ですでにこれを超える継続雇用に対する合理的な期待利益を有し、かつ、当該方針に納得いていなかったのであるから、このようなXに対して、当該方針を一方的に適用して雇止めとすることは、Xの継続雇用に対する期待利益をいたずらに侵害するものであって許されず、また、本件雇止め当時、Y学校全体または短大総務課の業務の適切かつ円滑な遂行上、Xを雇止めしてまでその担当業務を本務職員に担当させなければならない必要があったとは認められず、そうすると、本件雇止めは、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないから、無効である。

本件のポイントは、Y学校の人事委員会で出された、嘱託社員の契約期間の上限を3年とする方針を適用してなされた雇止めが、人事委員会の方針が出される以前に、すでに継続雇用に対する合理的な期待権を有するXに対しても有効といえるか、という点です。

裁判所は、Xの期待権を保護しました。

もう少しやり方を変えれば、結論が変わったかもしれません。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。