Daily Archives: 2010年12月11日

有期労働契約11(豊中市・とよなか男女共同参画推進財団事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例について見てみましょう。

豊中市・とよなか男女共同参画推進財団事件(大阪高裁平成22年3月30日・労判1006号20頁)

【事案の概要】

Y財団は、とよなか男女共同参画推進センター条例に基づき設立された「とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ」の運営を、豊中市から委託されている。

Xは、平成12年、Y財団に「すてっぷ」の館長として、期間1年として雇用され、平成15年4月に3度目の雇用期間の更新を受けたものの、以後は、組織変更後の館長に採用されることなく、平成16年3月、雇用が終了した(雇止め)。

これに対し、Xは、本件雇止めは、Xが男女共同参画社会の実現について活発に活動を続けていたことから、反動勢力(いわゆるバックラッシュ勢力)の不当な攻撃の対象となり、Y財団がそれらの勢力に屈して、Xを疎外して「すてっぷ」の組織変更を行うなどしたためであり、本件雇止めおよび新館長についての不採用は違法であるとして、Y財団らに対して、雇用契約における債務不履行または共同不法行為による損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

本件雇止めまたは本件不採用は、雇用契約上の債務不履行または不法行為には該当しない。

【判例のポイント】

1 「すてっぷ」の館長職の雇用関係は、地方公共団体の職務を行う特別職の非常勤の公務員の地位に準ずるものと扱われるべきであり、民事上の雇用関係の法理が適用されるよりも、市の特別職の職員の任免についての法理が準用されると解するのが相当である。したがって、「すてっぷ」館長としてのXの雇用について、期限を定めたからといって、これを違法ということはできず、また、雇用期間経過後の更新についても解雇の法理は適用されないから、期限付き雇用が数回更新されても期限付きでない雇用に転化するものではなく、信義則から更新の権利義務が生じることもなく、更新拒絶(雇止め)については原則として雇用者の自由であり、特段の合理的理由を必要とするものでもないというべきである

2 このように、XとY財団との雇用が公法的な意味合いをもつ法律関係に準ずるものと解すべきであることのほか、本件組織変更が行われる前後の「すてっぷ」の館長職が、常勤・非常勤、雇用期間の定めの有無、業務の内容などにおいて、実質上、同一の職務であるとはいいがたいことに鑑みると、Xが本件雇止めの後、当然に新館長に雇用されなかったことが、パートタイム労働法の趣旨に反することなどにより、違法であるということはできず、また、新館長の雇用は、「すてっぷ」の存立の目的からして、Y財団の政策的又は政治的裁量・責任のもとに行われるべきことから、その選任は選任権者の自由な裁量によるものであり、本件組織変更の前に非常勤館長として3度、3年余にわたり雇用期間が更新されてきたXが、当然に新館長に就任する権利を有していたとしてもそのこと自体について法的な権利を認めることはできない。したがって、本件雇止め又は本件不採用については、雇用契約上の債務不履行又は不法行為に該当するものということはできない

本件は、任期付任用公務員に対する更新拒絶が問題となっています。

民間企業の有期契約労働者に対する期間満了に伴う更新拒絶については、これまで見てきた裁判例からも明らかなように、解雇権濫用法理の類推適用の可能性があります。

これに対して、任期付任用公務員に対する更新拒絶については、こうした雇止め制限法理を通じた救済が認められていません。

最近、任用の更新拒絶が不法行為に該当するとして損害賠償請求による救済が認められるケースも出てきていますが、逆に言えば、そこまでの救済しか認められていません。

公務員は、権利救済の点では、民間労働者と比較して、圧倒的に弱い立場におかれています。

流れが変わるまで、裁判を起こしていくしかないでしょうね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。