Daily Archives: 2010年12月31日

労災26(山田製作所事件)

写真(2)おはようございます

早朝ウォーキングから戻りました。

今日で今年も終わりですね

あっという間に一年が過ぎていきました。

慌ただしい毎日の中で、これからの目標を設定し、かつ、社会貢献の方法を模索してきました

明日からまた新しい一年が始まります。

今は、力を蓄える時期です。

近い将来、爆発させます

今日は、仕事の合間に、神社に行ってこようと思います

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

山田製作所事件(福岡高裁平成19年10月25日・労判955号59頁)

【事案の概要】

Y社は、オートバイの部品を含め自動車部品、農業用機械部品等の製造・販売を目的とする会社である。

Xは、Y社に入社し、Y社熊本事業部で一般従業員として稼働してきた。

Xは、自宅において、自殺した(死亡当時24歳)。

Xは、職業生活における適応に困難を認められたことはなく、入社以来、本件自殺当日まで、「うつ病」ないし「うつ傾向」との診断を受けたこともなかった。

Xの相続人は、Xが自殺したのは、それ以前に連日、肉体的・心理的に過重な負荷のかかる長時間労働を余儀なくされたことによってうつ病に罹患したことが原因であり、Y社にはXに対する安全配慮義務に違反した過失があると主張して、Y社に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した。

Xの労働時間は、本件自殺から1か月前は110時間06分、同1か月前から2か月前は118時間06分、同2か月前から3か月前は84時間48分であった。また、上記期間内におけるXの連続勤務は最高13日間であり、深夜10時を越えて勤務したのは12日間である。

【裁判所の判断】

Xの損害につき、総額約7430万円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Xの上記時間外労働・休日労働の時間数は、Y社の三六協定に定める1か月当たりの時間外労働時間の月45時間を著しく超過し、本件自殺から1か月前の期間及び同1か月から2か月間の期間は約2.6倍に至っている。同協定においては、上記の目安を超えて労使が協議の上延長することができる時間は1か月当たり61時間とされているが、Xの上記期間における時間外労働・休日労働時間はかかる61時間も大きく超えるものである。
平均残業時間が60時間以上となるとライフイベントの合計点数は極めて高く(ストレス度が強くなる。)なるとされ、さらに長時間労働は、心身の余力や予備力を低下させ、ストレス対処能力を大幅に低下させ、その結果、ちょっとしたストレスフルな出来事に対してもパニックに陥りやすい状態が作られるとの専門的知見を勘案すれば、このような顕著な時間外・休日労働は、それ自体で過酷な肉体的・心理的負荷を与えるものであったといえる

2 Xは、本件自殺3か月前から過重な長時間労働に従事したことによる肉体的・心理的負荷に、1か月余り前には、発注先からの新たな品質管理基準への対応が会社として迫られる中、リーダーへ昇格するなどの心理的負荷等が更に加わるという正に過重労働の最中に、他に特段の動機がうかがわれない状況で、本件自殺に及んでいるものであり、その経過からして、本件自殺と業務との間に因果関係がある。

3 Y社は、Xを過重な長時間労働の環境に置き、これに加え、Xがリーダーへ昇格したことなど心理的負担の増加要因が発生していたにもかかわらず、Xの実際の業務の負担量や職場環境などに何らの配慮をすることなく、その状態を漫然と放置していたのであって、かかるY社の行為は、不法行為における過失(注意義務違反)をも構成する

4 Xの変調が表面化してから自殺へ至るまでの経過は急進的であり、X本人や家族にとっても専門医の診療を受けるなどの行動を取ることは容易でなかったといえる。他方、Xの就労状況からすれば、同人からの訴えを待つまでもなく、使用者であるY社が当然に労働時間の抑制その他適切な措置を取るべきであったといえるから、この点で、Xの側に過失を認めることはできない。
また、本件自殺の原因について家族関係などの個人的な要因を認めることはできず、Xの性格などに上記損害額を減額すべき要因を認めることはできない。したがって、本件において、過失相殺を認めることは相当でない

このケースでも、高額の損害賠償が認められています。

本件では、直属上司の叱責等が心理的負荷の一要因とされています。

指導の必要性との関係から、線引きが難しいところですが、合理性のない単なる厳しい指導の範疇を超えたものについては、いわゆるパワハラと評価され、心理的負荷の一要因と判断されてしまいます。

この点については、部下を持つ会社幹部、上司のみなさんが意識しなければいけないところです。

また、上記判例のポイント4は、労働者側としては参考になりますね。

いつも申し上げていることですが、会社としては、従業員の労働時間が長くなっている場合、様子がおかしいと感じた場合には、早急に対応をとらなければ、大変なことになります。

重要なのは、いざというときに、適切な対応をとることができる組織作りです。

どのような組織作りを目指すべきかについては、顧問弁護士や顧問社労士に聞いてみて下さい。

必ず方法はあります!!