有期労働契約64(トミテック事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、図書館副館長の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

トミテック事件(東京地裁平成27年3月12日・労判1131号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、Y社による同契約の更新拒絶は、信義則に照らし許されず、違法、無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成24年4月1日から平成25年7月15日までの15か月半の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件労働契約は、期間の定めのある労働契約であり、当初の契約期間は平成23年3月31日までであったが、同期間の満了時に更新され、契約期間が平成24年3月31日までになったものと認められるところ、Xにおいて、上記の新たな契約期間の満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められ、かつ、本件更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときには、平成24年3月31日の経過による期間満了後のXとY社との間の法律関係は、本件労働契約が更新されたのと同様の法律関係になるものと解するのが相当である。

2 Y社において、館長、副館長を含むb図書館の全ての職員について、期間の定めのある労働契約を締結したのは、雇用の前提となる同図書館の管理運営業務が、委託期間を5年とする時限的な業務であり、委託期間満了後の雇用維持を保障することができないことを主たる理由とするものと解することができ、その理由には合理性を認めることができるが、他方において、委託期間中は、司書となる資格を有する従業員を常時一定数配置しておく具体的必要性があり、期間の途中で従業員の数を減らすことが予定されていたとか、従業員の数を減らす必要が生じたなどの事情は認められず、むしろ、Y社は、図書館業務の効率的運営や職場環境の整備といった観点から、従業員を継続して雇用するとの方針をとっていたことが認められるから、Xにおいて、いまだ委託期間の中途である平成24年3月31日の経過による雇用期間の満了時に、本件労働契約が更新されるものと期待することには、合理的な理由があったというべきである。

3 C館長は、Xについて、「職員としての立場を自覚した行動が十分とれていない。」、「報告が少ない。」とか、「館長への報告や連絡が極めて少ない。」、「職員としての自覚が十分でない。」などといった記載のある書面を作成し、Y社に提出したことが認められる。
しかしながら、上記各書面の記載は、いずれも抽象的な表現にとどまり、そのような評価の根拠となった具体的事実の指摘はない。また、上記書面には「現在、棚替え、BDS、など多忙で、休日も自宅で仕事をしている状態で、きちっとした評価をするに相当する時間がとれません。」との記載があるから、上記各書面は、C館長が自発的に作成したものではなく、被告がC館長に作成を指示したものであると認められるところ、被告において、定期的な勤務評定が実施されているにもかかわらず、あえて上記書面の作成を指示した経緯及び目的は明らかでない。そうすると、上記各書面の記載をそのまま信用することはできないというべきである。
そして、以上のほかに、原告について、被告が主張するような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があったことを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件更新拒絶は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないというべきであるから、原告と被告との間には、本件労働契約が更新されたのと同様の法律関係が存在することになる。

従業員の能力不足や勤務態度不良を理由に解雇や雇止めをする場合、具体的な事実を記載した書面を証拠として提出する必要があります。

抽象的な理由だけで解雇・雇止めをしても、裁判所は認めてくれません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。