労災15(大庄ほか事件)

おはようございます。

なんか、最近、ブログの閲覧者が急増しています

なんでだろう・・・?  ま、いいか。

今日は、午前中は、建物明渡の件で、現地調査へ行きます

午後は、掛川市役所で法律相談をし、夜は先輩弁護士2人と税理士のK先生とともにお食事会です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

大庄ほか事件(京都地裁平成22年5月25日・労判1011号35頁)

【事案の概要】

Y社は、大衆割烹店を全国展開している会社である。

Xは、大学卒業後、Y社に入社し、大衆割烹店で調理関係の業務に従事していたが、入社約4か月後に急性左心機能不全により死亡した(死亡当時24歳)。

Xの父母が、Xの死亡原因はY社での長時間労働にあると主張して、Y社に対しては不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、また、Y社の取締役であるZら4名に対しては不法行為または会社法429条1項に基づき、損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

Xの死亡による損害につき、逸失利益4866万余円、慰謝料2300万円、葬祭料150万円等が認められ、労災保険の葬祭料およびY社が支払った死亡弔慰金を損益相殺のうえ、Y社およびZら4名に対し、Xの父母への支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Xの労働時間は、死亡前の1か月間では、総労働時間約245時間、時間外労働時間約103時間、2か月目では、総労働時間約284時間、時間外労働時間約116時間、3か月目では、総労働時間約314時間、時間外労働時間数約141時間、4か月目では、総労働時間約261時間、時間外労働時間約88時間となっており、恒常的な長時間労働となっていた。

2 Xの労働時間は、前記のとおり、4か月にわたって毎月80時間を超える長時間の時間外労働となっており、Xが従事していた仕事は調理場での仕事であり、立ち仕事であったことから肉体的に負担が大きかったといえることからすれば、Xの直接の原因となった心疾患は、業務に起因するものと評価でき、Y社の安全配慮義務違反等とXの死亡との間に相当因果関係を肯認することができる

3 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意するする義務を負う。そして、この義務に反した場合は、債務不履行を構成するとともに不法行為を構成する。

4 Y社の給与体系では、基本給ともいうべき最低支給額中に80時間の時間外労働が前提として組み込まれており、また、三六協定においては1か月100時間・回数6回を限度とする時間外労働を許容する定めがなされ、1か月300時間を超える異常ともいえる長時間労働が常態化されていたのであり、にもかかわらず何ら対策を取っていなかったY社には、労働者の生命、健康を損なうことがないよう配慮すべき義務を怠った不法行為上の責任がある

5 会社法429条1項は、株式会社内の取締役の地位の重要性にかんがみ、取締役の職務懈怠によって当該株式会社が第三者に損害を与えた場合には、第三者を保護するために、法律上特別に取締役に課した責任であるところ、労使関係は企業経営について不可欠なものであり、取締役は、会社に対する善管注意義務として、会社の使用者としての立場から労働者の安全に配慮すべき義務を負い、それを懈怠して労働者に損害を与えた場合には同条項の責任を負うと解するのが相当である

6 Y社代表取締役であるZほか4名の取締役らは、労働者の生命・健康を損なうことがないような体制を構築すべき義務を負っているところ、労働時間が過重にならないよう適切な体制をとらなかっただけでなく、一見して不合理であることが明らかな体制をとっていたのであり、そのような体制に基づいて労働者が就労していることを十分に認識し得たのであるから、Zらには悪意または重大な過失による任務懈怠があったとして、会社法429条1項に基づく責任を負う

7 なお、Zらは、Y社の規模や体制等からして、直接、Xの労働時間を把握・管理する立場ではなく、日ごろの長時間労働から判断して休憩、休日を取らせるなど具体的な措置をとる義務があったとは認められないため、民法709条の不法行為上の責任を負うとはいえない。

この事案は、会社自体の責任のほかに、会社法429条1項を適用して、会社の上部組織の役員に対して損害賠償責任を認めた点で注目すべき判決です。

会社としては、従業員の労働時間管理があまりにも杜撰であると、会社の責任のほかに、取締役の責任を問われる可能性があります。

もう一度、労働時間をチェックしてみてください。

労災が起こった後では、ほとんどやりようがありません。

事前の準備が大切です