解雇20(ビー・エム・シー・ソフトウェア事件)

おはようございます。

さて、今日は整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ビー・エム・シー・ソフトウェア事件
(大阪地裁平成22年6月25日・労判1011号84頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータソフトウェアの開発、販売および保守業務等を業とする会社である。

アメリカ合衆国のA社は、Y社の100%の株主である。

Xは、Y社の従業員であり、Y社の関西営業所において、営業事務職員として勤務していた。

Y社は、Xに対し、「先般来の日本における業務縮小により、事業の運営上やむを得ない事情により従業員の減員が必要となったためという理由等を記載した解雇予告通知書を送付し、Xについて、解雇する旨の意思表示をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 いわゆる整理解雇の有効性については、人員削減の必要性が認められることを前提として、解雇回避のためにいかなる措置が講じられたか、対象者の人選に合理性があるか否か、当該労働者との協議あるいは当該労働者に対する説明の程度といった諸事情を総合的に勘案して判断するのが相当であると解される

2 まず、Y社に人員削減の必要性があったか否かという点についてみる。たとえ外資系グループ企業において就労しているとはいえ、わが国で就労している労働者は、原則として、わが国の労働市場において労働の機会を確保し、生活を維持していく必要があることにかんがみれば、わが国における外資系グループ企業が、親会社の意向を受けて整理解雇を行う場合であったとしても、わが国における企業の収益の状況等を問わず。本社からの人員削減の指示・意向のみをもって、人員削減の必要性があったと認めるのは相当とはいえない。したがって、たとえ外資系グループ企業であったとしても、人員削減の必要性があるか否かという点については、親会社の意向もさることながら、我が国と親会社との関係、親会社の収益状況、我が国企業の業務内容及び収益状況、今後の見通し等初犯の事情を勘案して判断するのが相当である

3 本件解雇時点において、(1)Y社には2億7800万円の利益が発生していること、(2)米国本社に関しても、特段利益が減少するなどの状況にあるとはいえないこと、(3)Xが就労していた関西営業所については、本件解雇が決定した後に事務所規模を縮小していること、(4)東京本社の営業部において新規募集をしていること、以上の点が認められ、このうち、特に、本件解雇時点におけるY社の利益額の点及び米国本社の経営状況にかんがみると、人員削減の必要性の有無が経営上の判断を伴うものであることを考慮してもなお、果たしてY社において人員削減の必要性があったといえるのか疑問があるといわざるを得ない。

4 次にY社の解雇回避努力の点についてみる。Xに対しては、雇用継続に向けたその他の措置についての提案はなされていないこと、Y社は本件解雇に先立って、希望退職者を募集していないこと、Xが勤務していた関西営業所の事業縮小(事務所移転)は、本件解雇後に行われたこと、賃金の減額等の人員削減以外の解雇回避措置がなされたことを認めるに足りる的確な証拠はないことの諸事情を勘案すると、本件解雇にあたって、Y社は解雇回避努力に努めたとは認め難い

外資系だろうと、特別扱いはしませんよ、という裁判例です。

判断内容は、オーソドックスそのものです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。